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元暴走族の50歳海将、異世界で非正規農夫に。最強スキル『酒保』の酒と煙草で、伝説の暗殺者やバケモノ達と一服する無双スローライフ  作者: 月神世一


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EP 5

越後屋、お主も悪よのう

ルナミス帝国領、国境沿いの宿場町。

その高台にそびえ立つ代官邸の奥座敷では、今宵も脂ぎった欲望と薄汚い哄笑が渦巻いていた。

「ゲヘヘヘ……。聞いて驚かないでくだせえ、ゾルバお代官様。ポポロ村の偽装弁当とシガーの売り上げ、今日も絶好調でさぁ」

豪奢な絨毯の上で、金貨の山をいやらしく撫で回しているのは、この町を牛耳る悪徳商人・ガルダである。

「シガーには辺り一帯に生えとる幻覚作用のある雑草を混ぜ、弁当の中身は廃棄予定のクズ肉と泥水でカサ増ししてあります。原価はタダ同然、それが飛ぶように売れるんでさぁ!」

「ほう。ガルダ、お主も悪よのう」

上座でワイングラスを揺らす小太りの男――ゾルバ代官が、三日月のように目を細めて卑劣な笑みを浮かべた。

「いえいえ、これも全てはゾルバお代官様の後ろ盾があってこそ。帝国軍の検問をスルーさせていただけるおかげでございます。ゲヘヘヘ」

「カッカッカ! 違いあるまい!」

絵に描いたような、三流の悪党どもの宴。

ゾルバはワインを喉に流し込み、豚のような鼻を鳴らした。

「だが、こんな小銭稼ぎはほんの序の口よ。本命は……ポポロ村の地下に眠る、ドワーフ(ドンガン地下帝国)への密輸ルートだ。あの村のアホな農民ども、地下牢での拷問で口は割ったか?」

「それが、思いのほか頑丈でしてねぇ。ですが、爪を剥ぎ、骨を数本砕いてやりましたから、明日にはペラペラと喋るでしょうよ」

「そうかそうか! ルナミス帝国軍が動く前に、あの利権はワシらが独占――」

ゾルバが哄笑を上げようとした、その瞬間だった。

「――ほう。随分と景気のええ話じゃのう」

部屋の隅、ランプの光が届かない深い暗闇の中から、ドスの効いた低い声が響いた。

ゾルバとガルダはビクッと肩を震わせ、声のした方へ視線を向けた。

「な、なんだ!? 誰かいるのか!」

「……安心しろ。お前らの一番欲しがってた『ポポロ村の責任者』が、わざわざ出向いてやったんじゃ」

暗闇から姿を現したのは、ネイビーブルーの作業着(タローマン製)に身を包んだ、白髪交じりの男だった。

その手には、ガルダ商会が隠していたはずの『裏帳簿』と、地下牢の『鍵の束』が握られている。

「なっ……! そ、それは我が商会の極秘帳簿!? なぜ貴様が!」

ガルダが悲鳴を上げる。

「裏の仕事シゴトなら、俺の右に出る奴はいないんでね」

真一の背後の天井裏から、音もなく龍魔呂が舞い降りた。

手には血濡れた暗殺用の短刀。すでに屋敷の内部の警備網は、この男によって完全に機能停止に追い込まれていた。

「お前らが地下で痛めつけていたシマの衆は、今しがた龍魔呂が外へ逃がした。……あとは、お前ら落とし前をつけさせるだけじゃ」

真一は裏帳簿をガルダの顔面に思い切り叩きつけると、ゆっくりと腰の『正宗』に手をかけた。

「き、貴様らごときが、帝国の代官であるワシに刃向かう気か! ええい、出会え! 出会えぇぇっ!! 用心棒ども、こいつらを細切れにしてしまえ!!」

ゾルバがパニックを起こして絶叫する。

その声を合図に、屋敷の周囲に配置されていた数十人の傭兵たちと、三体の屈強な『魔導ゴーレム』が、武器を構えて大広間へと雪崩れ込んできた。

「ハハハ! 愚か者め! たった二人で乗り込んでくるとはな! お前らも地下牢にぶち込んで、ドワーフのルートを――」

ゾルバが勝利を確信して笑い声を上げた、その時だった。

ドゴォォォォォォンッ!!!

大広間と庭を隔てていた分厚い樫の木の扉が、爆発したかのように粉々に吹き飛んだ。

「たった二人ィ? ……寝言は寝て言えよ、クソ代官!」

土煙の中から現れたのは、巨大な魔導ハンマーを肩に担ぎ、凶悪な笑みを浮かべる紅蓮の戦乙女・ダイヤ。

「うちの村の衆を泣かせた罪……その命をもって償っていただきますぅ♡」

そして、空中で月光を背に浴びながら、特注の安全靴からバチバチと雷光(闘気)を迸らせる月兎族の村長・キャルルだった。

「キャルル、ダイヤ。……派手にやれ。屋敷の弁償はニャングルにさせる」

真一が正宗の鯉口を左手の親指でカチリと切る。

ポポロ村が誇る最凶の武力部隊による、一方的かつ無慈悲な『討ち入り』が、今、猛烈な勢いで開始された。

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