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元暴走族の50歳海将、異世界で非正規農夫に。最強スキル『酒保』の酒と煙草で、伝説の暗殺者やバケモノ達と一服する無双スローライフ  作者: 月神世一


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EP 2

平和なサカガミPXと、機能美の作業着タローマン

ポポロ村のメインストリートに位置する『サカガミPX』。

開店前の静かな店内で、真一は姿見(鏡)の前に立ち、自身の出で立ちを確認していた。

昨日、村の総合職人御用達ショップ『タローマン』で購入した新しい作業着だ。

「……ほう。異世界の服飾技術も、なかなか馬鹿にできんな」

真一が袖を通しているのは、深いネイビーブルーのストレッチブルゾンと、同色のカーゴパンツ。

一見すると地球の「ワークマン」で売られているような実用性重視のガテン系作業着だが、随所に魔法世界のテクノロジー(タローマンのノウハウ)が惜しげもなく注ぎ込まれている。

生地には『防刃・防魔の糸』が織り込まれており、刃物や下級魔法程度なら難なく弾き返す。それでいて、驚くほど軽く、通気性も抜群だ。さらに、各部のポケットには『四次元収納アイテムボックス機能』が微弱ながら付与されており、見た目以上の収納力がある。

これで上下セットで金貨2枚というのだから、恐るべきコストパフォーマンスである。

「自衛隊の迷彩服も機能的だが、この動きやすさはクセになるな。……よし」

真一は、腰のベルトに愛刀『正宗』をカチリと差し込み、タローマン特製の『衝撃吸収・安全半長靴セーフティブーツ』の紐をきつく結んだ。

白髪交じりの短髪に、無精髭。そして機能美を極めた紺の作業着。

50歳という年齢が醸し出す大人の男の渋みと、「歴戦の猛者」のオーラが、ただの作業着姿を極上の戦闘服へと昇華させていた。

カラン、カラン。

「坂上さーん! おはようござい……ま……っ!」

ドアベルの音と共に店に入ってきたのは、特注の安全靴を履いた月兎族の村長・キャルルだった。

彼女は、鏡の前に立つ真一の姿を見た瞬間、ピタリと動きを止めた。

「どうした、キャルル。朝から変な声を出して」

「さ、坂上さん……そのお召し物、タローマンの新作ですか……? すっごく……すっごく……」

キャルルの瞳のハイライトがスッと消え、ヤンデレ特有の据わった目つきになる。

「渋くて、大人の色気があって……最高に素敵ですぅ……ッ! その魔法のポケットに、私ごと収納してどこかへ連れ去ってほしいくらいですぅぅ……ッ!」

「アホなことを言うな。いくら四次元ポケットでもウサギ一匹は入らん」

真一は苦笑しながら、キャルルの頭をポンと軽く叩いた。

キャルルは「ふへへ……坂上さんの手の匂い……」とだらしなく頬を緩ませている。この村長、有能なのだが距離感の詰め方が少々バグっている。

そこへ、店の奥から龍魔呂が、缶コーヒーを片手に欠伸をしながら姿を現した。

「朝から騒がしいな……。オッサン、その服、タローマンの『イージス・ディフェンダー・プロ』か。動きやすさと防御力を両立した名作だぜ。俺も暗殺業シゴトの時によく愛用してる」

「なるほど、本職(暗殺者)のお墨付きか。なら、農作業や店番にも十分すぎる性能だな」

真一が笑いながらコーヒーメーカーのスイッチを入れると、芳醇な香りが店内に漂い始めた。

「坂上さーん! お腹すきましたぁ! 今日の『PRO型』の端っこ、味見させてください!」

今度は、紅蓮のアーマーをガチャガチャと鳴らしながら、S級賞金稼ぎのダイヤが飛び込んできた。

最近は『PRO型』の魔導重箱のメンテナンスを請け負っている対価として、真一からまともなメシを食わせてもらっているため、かつてのゾンビのような顔色はすっかり良くなっている。

「端っこじゃない。ちゃんとした朝飯を作ってやる。……『酒保』特製の、鮭の塩焼きと豚汁定食だ」

「しゃけ! ぶたじる! わぁぁぁい! 坂上さん、一生ついていきますぅ!」

ダイヤが歓喜の涙を流しながらカウンターに張り付く。

「……ふむ。平和な朝だ」

真一は、タローマンの作業着の袖をまくり、まな板の上に極上の鮭の切り身を置いた。

村長がストーカー気味に張り付き、伝説の暗殺者が缶コーヒーをすすり、ポンコツ賞金稼ぎが朝飯を待っている。

三大国の将官たちが聞けば泡を吹いて卒倒しそうな面子だが、真一にとっては、これが今の「日常」だった。

(美味いメシを作って、この連中とくだらない話をする。……こんな日が、一日でも長く続けばいいさ)

真一は、魚焼きグリルの火を点けながら、静かに目を細めた。

ポポロ村の武装中立という名の平穏は、今日も完璧に保たれている。

――この数時間後。

ニャングルとリバロンが、血相を変えて店に駆け込んでくるまでは。

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