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元暴走族の50歳海将、異世界で非正規農夫に。最強スキル『酒保』の酒と煙草で、伝説の暗殺者やバケモノ達と一服する無双スローライフ  作者: 月神世一


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EP 5

完成、黄金のおでん弁当! 極貧戦乙女の号泣アゲイン

ポポロ村の共同炊事場に、極上の『香り』が立ち込めていた。

真一はエプロン姿で巨大な寸胴鍋の前に立ち、木べらでゆっくりと底をかき混ぜている。

鍋の中では、透き通った黄金色の出汁が静かに煮立っていた。

『酒保』から取り出した最高級の昆布と鰹節の合わせ出汁に、ポポロ村特産の『太陽芋酒』を加えてアルコールを飛ばし、まろやかなコクと深い旨味を引き出した特製スープだ。

「……よし。出汁は完璧だな」

真一はその黄金の海へ、丁寧に下ごしらえをした具材を次々と投下していく。

出汁をたっぷりと吸い込み、すでに飴色に透き通っている『月見大根』。

闘気で数日間煮込み続け、箸で切れるほどホロホロになった『ロックバイソンの牛すじ』。

そして、凶暴な魚型魔獣『ピラダイ』のすり身にマヨ・ハーブを練り込んだ、旨味爆弾とも言える『つみれ』。

仕上げに、ネギオから勝ち取った『極上ネギの芯』を細かく刻み、パラリと散らす。

「これで中身は完成だ。あとは、パッケージングだな」

真一は、ダイヤが鍛え上げた漆黒の『魔導重箱』をズラリと並べ、その中に具材と黄金の出汁をたっぷりと注ぎ込んだ。

そして『酒保』の化学薬品と真空パック機を併用し、常温で数年の保存を可能にする完全密閉処理を施す。

最後に、キャルルが精製した5万倍希釈の月光薬『戦術エナジードリンク』と、リバロンが用意したアロマおしぼりを、アクセサリー・パックとして側面にセットした。

「――完成だ」

真一がエプロンで手を拭いながら振り返ると、そこには村の首脳陣と、歩く災害ヒロインたちが、ヨダレを垂らしながら一列に並んでいた。

「さ、坂上さん……! もう、限界ですぅ! 匂いだけで胃袋が爆発しそうですよぉ!」

ダイヤが空っぽの胃を抱えて涙目で訴える。

「……試食会だな。よし、お前ら、一つずつ持て」

真一が合図をすると、ダイヤ、リーザ、キャルル、そしてリバロンとニャングルが、それぞれ漆黒の魔導重箱を受け取った。

「いいか。側面のスイッチを押せ。そこから30秒だ」

真一の言葉に従い、ダイヤが震える指でカチッとスイッチを押し込んだ。

重箱の表面は一切熱くならない。だが、内部に組み込まれた極小の火魔石と風魔石が、熱風循環コンベクションオーブンを起動させ、一瞬にして中身を沸騰温度にまで引き上げていく。

「……30秒。開けてみろ」

ダイヤが恐る恐る重箱の蓋を開けた瞬間――。

「――っっっ!!!!」

立ち昇る熱気と共に、黄金の出汁の香りが爆発的に広がった。

戦場の塹壕であれ、極寒の雪山であれ、たった30秒でこの『究極の癒やし(匂い)』が展開されるのだ。

ダイヤは震える手で箸を取り、飴色に染まった『月見大根』を口に運んだ。

「あ……ぁ……」

噛む必要すらなかった。

大根は舌の上でとろけ、太陽芋酒のコクと鰹節の旨味が凝縮された熱々の出汁が、空っぽの胃の腑に染み渡っていく。

続けて、ロックバイソンの牛すじを頬張る。極限まで煮込まれた肉の脂が甘く弾け、ピラダイのつみれの野性味あふれる旨味がそれを追う。

そして、スープに溶け込んだ『ネギオの極上芯』の効果が、ダイヤの脳内シナプスを強制接続し、強烈なクリア(賢者)モードへと引き上げた。

「私の……私の今までの『L缶生活』は……なんだったのぉぉぉぉぉっ!!!」

極貧のS級賞金稼ぎは、あまりの美味さと、これまで自分が食わされてきたハズレレーション(凍死缶)との絶望的な落差に、その場に崩れ落ちて号泣した。

涙と鼻水まみれになりながらも、箸を動かす手だけは止まらない。

「お、おいひぃぃぃ……! 生きててよかったぁぁぁ!」

「んんんん〜〜っ!! このパンの耳を、出汁に浸してぇ〜っ!!」

リーザもまた、マイ食パンの耳を黄金の出汁にヒタヒタに浸し、口に放り込んだ瞬間に白目を剥いて天に召されていた。

「これ……凄すぎますよ坂上さん! 体の芯から闘気が無限に湧いてくるのに、頭は氷のように冷静です! これを食べたら、もう他のご飯なんて食べられなくなっちゃいますぅ!」

キャルルも、ヤンデレ特有の据わった目をキラキラと輝かせておでんを頬張っている。

「……司令」

ニャングルが、重箱のおでんを味わいながら、ゴクリと息を飲んで真一を見上げた。

その目は、完全に『悪徳商人』のそれになっていた。

「コレ、マジでヤバいで。ルナミスの豚神アブラ飯なんか、ただの残飯や。コレを戦場で一口でも食ったら、三大国の兵士どもは完全にウチらの『味の奴隷』になりまっせ」

「ああ」

真一は、自身も重箱の出汁をすすりながら、満足げに頷いた。

さらに食後に『戦術エナジードリンク』を飲み干したダイヤたちが、先程までの疲労を完全に吹き飛ばし、ピンピンに跳ね回っているのを確認する。

「癒やしと覚醒。兵站に必要なすべてが、この一つの箱に詰まっている。……これが、ポポロ特製戦闘糧食『PROポポロ・レストラン・オペレーション型』だ」

兵士を機械の歯車として扱う三大国のレーション思想を、根本から叩き潰す究極の弁当。

「さあ、ニャングル。極上の商品は用意したぞ。……あとは、お前さんの仕事だ」

「任せときなはれ司令! 各国の駐留軍に、この『劇薬』をバラ撒いたるわ!!」

こうして、ポポロ村の最強兵站『PRO型』は完成した。

それは、武力でも魔法でもない、『胃袋による世界侵略』が幕を開けた歴史的瞬間だった。

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