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元暴走族の50歳海将、異世界で非正規農夫に。最強スキル『酒保』の酒と煙草で、伝説の暗殺者やバケモノ達と一服する無双スローライフ  作者: 月神世一


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EP 3

PRO型開発会議。ダイヤの魔改造重箱

カンッ! キンッ! ガァァァンッ!

ポポロ村の片隅にある鍛冶工房に、甲高い金属音が響き渡っていた。

炉の炎に照らされながら、額に汗を滲ませて巨大なハンマーを振るっているのは、紅蓮の戦乙女ダイヤ・マーキスである。

彼女の瞳は、普段の「極貧で腹を空かせたポンコツ賞金稼ぎ」のそれではなく、超一流の職人の輝きを放っていた。

ユニークスキル『ウェポンズマスター』。

あらゆる武器、兵器、そして鍛冶・調理道具の最適解を瞬時に引き出し、極めることができる彼女の真骨頂である。

「どうだ、ダイヤ。いけそうか?」

腕組みをしてその様子を見守っていた真一が声をかけると、ダイヤはハンマーを置き、真っ黒に煤けた顔でニカッと笑った。

「完璧です、坂上さん! ルナミス帝国の廃棄された『魔導戦車』の装甲板をベースに、セラミックと魔導金属を独自の配合で合金にしました。……できましたよ、絶対に壊れない『最強の弁当箱』が!」

ダイヤがトングで水風呂から引き上げたのは、漆黒に輝く、重厚かつスタイリッシュな『重箱』だった。

表面にはマットな魔導コーティングが施されており、光の反射や熱源探知(赤外線)を完全に遮断するステルス仕様になっている。

「見事だ。さすがはS級賞金稼ぎといったところか。……で、加熱システムの方はどうなった?」

真一が尋ねると、ダイヤはふんすと得意げに胸を張った。

「坂上さんから聞いた『火も水も使わずに温めるヒーター(FRH)』の概念を応用しました! この重箱の底面に、極小の『火魔石』と『風魔石』を組み合わせて回路を作ってあります」

ダイヤは重箱の側面にある小さなスイッチをカチッと押し込んだ。

「スイッチを入れると、内部で熱風が循環する『コンベクション(熱風循環)オーブン』と同じ状態になります。なんと、外側には一切熱も匂いも漏らさず、たった30秒で中身だけをアツアツの出来立て状態に温められますよ!」

「……ほう」

真一は感嘆の声を漏らした。

自衛隊の戦闘糧食でも、温めるには専用の加熱剤と水が必要であり、蒸気も出る。だが、ダイヤの作り上げたこの魔導重箱は、それらの欠点を完全に克服していた。隠密作戦中であっても、敵に気づかれることなく温かいメシが食えるのだ。

「素晴らしい。これぞ『兵站の革命』だ。容器ハードが完成したなら、次は中身のパッケージングだな」

真一は『酒保』のスキルを起動し、カウンターの上に「真空パック機」と特殊なレトルト素材のフィルムを取り出した。

「村で調理した食材を、このフィルムで真空パックにする。俺のスキルから出す化学薬品を使えば、常温で数年の保存が可能になる」

「おぉぉ……! これで私の『L缶ハズレ生活』も終わるんですね……っ!」

ダイヤが感動のあまり、よだれと涙を同時に流している。

「坂上さーん! 私も、お手伝いしますぅー!」

そこへ、可愛らしいエプロン姿の村長・キャルルが、小瓶を抱えて工房にやってきた。

中には、月の光を凝縮したような、神秘的な銀色に輝く液体が入っている。

「ポポロ村の聖なる泉の水に、陽薬草と私の月兎族の力をたっぷり注いだ『月光薬』の原液です! これを飲めば、千切れた腕でも一瞬で生えてくるし、三日は不眠不休で戦えるハイ・テンション状態になりますよ!」

「アホか! そんな劇薬を弁当のオマケにつけたら、食った兵士が全員狂戦士バーサーカーになって死ぬまで暴れ回るだろうが!」

真一はすかさずツッコミを入れた。

このヤンデレ気味の村長は、善意で「致死量の回復魔法」をぶち込んでくるから油断ならない。

「いいか、キャルル。戦闘糧食に必要なのは『癒やし』と『適度な覚醒』だ。その原液を、水で1万倍……いや、念のため5万倍に希釈しろ」

「えぇ〜、5万倍ですか? それじゃあ、ただの『疲労がポンッと消え去って闘気が全開になるだけの飲み物』になっちゃいますよ?」

「十分すぎるほどのチート効果だ。……よし、それを小瓶に詰めて『戦術エナジードリンク』として弁当のアクセサリー・パック(付属品)に加える」

真一の的確なプロデュースにより、ポポロ特製戦闘糧食『PRO型』の全体像が、恐るべき完成度をもって組み上がっていく。

部屋の隅で算盤を弾いていたニャングルが、ブルッと震え上がった。

「戦車の装甲板で作ったステルス重箱に、30秒で熱々になる魔導オーブン機能。さらに部位欠損すら治りかける超回復エナジードリンク付き……。司令、アンタこれ、他国にいくらで売りつける気や?」

「値段はお前さんに任せるさ。……だが、まだ『主役メイン』が欠けている」

真一は、漆黒の重箱の蓋を開け、空っぽの内部を見つめた。

最高の弁当箱に詰めるべき、最強の食材。ポポロ村が誇る『月見大根』や『ロックバイソンの牛すじ』を極上の出汁で煮込んだ「特製おでん」をメインに据えるつもりだが、戦う兵士の脳を極限まで研ぎ澄ませるための『究極のスパイス』が足りない。

「……リバロン。村の東の畑に、妙に口の達者な『突然変異体』が住み着いていたな?」

真一の言葉に、執事のリバロンがピンと耳を立てた。

「ネギオ、ですね。世界樹の端末『ポーン』の突然変異体にして、鋼鉄すら切り裂く『ネギカリバー』を持つ論破の賢者。……あの者の『ネギの芯』は、脳を活性化させ、判断力を極限まで引き上げる効能があります。ですが……」

「ですが?」

「奴は極めてへそ曲がりな毒舌家です。奴が仕掛けてくる『知略ゲーム(ディベート)』を論破し、勝たなければ、決して己の身を削らせることはありません」

「ほう」

真一は面白そうに口角を上げた。

統合幕僚監部・J5において、海千山千の政治家や官僚たちを相手に、国家予算と防衛計画を賭けた『極限のディベート』を潜り抜けてきたこの坂上真一に、口喧嘩で挑もうというのか。

「ダイヤ、重箱の最終調整を頼む。……俺は少し、ネギを刈りに行ってくる」

真一はエプロンを外し、純白の作業着の襟を正すと、腰の正宗を鳴らしながら工房を後にした。

最強の兵站『PRO型』の完成まで、あと一歩。

元族総長にして最強の頭脳を持つ海将と、ポポロ村随一のインテリ植物との、血を流さない『頂上決戦』が始まろうとしていた。

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