七十八章 (視点ナサン)
クィムはまたぼんやりとしたまま、それでも黙々と仕事を続けていた。
さっき俺が言った言葉を、あいつなりに飲み込もうとしてんのは分かる。
分かるけど――。
「……手、止まってるぞ。」
そう声をかけると、クィムはびくりとして、手に持っていた箱の中身をぶちまけた。
「す、すみません……。」
いそいそと拾い集めるクィムを手伝いながら「……ジョゼみてぇなやつなら、分かりやすくていいんだけどよ。」なんて口走っていた。
ちらりと視線を移した先では、ジョゼが人一倍重たい荷物を運搬していた。
――まあ、居心地は最悪だろう。
一族もろとも国外追放になるかもしれなかった事をしでかしておいて、また同じ場所に戻されるなんて。
普通なら逃げ出してもおかしくねぇ。
クィムはぼんやりと、俺と同じ方を向いていた。
「あいつみたいに、すぐに爆発するやつなら分かりやすくて、まだマシだ。
対策が練れるんだからな。
……でも、あいつみてぇなやつばっかじゃねぇだろ?」
クィムは俺の方を振り向いた、少し考えてから「あ……たしかに、まだ納得いっていない見習い騎士が……。」と呟いた。
ようやくわかったのか……。
「そ、あいつと同じ考えだけど、あいつみたく爆発するタイプじゃねぇ野郎だっていんだろうが。」
「いる……と思います。」
なんてクィムは自信なさげに呟いたと思ったら、作業してる奴らに目を移した。
「思う、じゃねぇよ……ぜってぇ居るんだ。」
俺はクィムに元に戻した箱を手渡して作業場を見る。
笑い声も、工具の音も、いつもと変わらねぇ。
でも――。
「何も言わねぇやつほど、面倒なんだ。」
俺の言葉に、クィムは首を傾げる。
「何も言わないでいた奴ら、そいつらの鬱憤が一気に爆発したらどうなると思う?
お前はそこまで考えてたのか?」
クィムの顔から血の気が引いた。
「……さすがに想像ついたろ?」
「……はい。」とクィムは頷いた。
その声は、とても小さかった。
「じゃあ考えろ、お前なりに。」
俺はまた道具を手に取って作業場の方に振り向いた。
「どうやったら、誰も爆発させずに済むか。
どうやったら、爆発したやつを止められるか。」
お前は、とにかくそれを考え続けろ。
クィムは、何も言わなかった。
それでもただ、もう一度ゆっくりと頷いた。
クィムの目はさっきまでの上の空とは違って、逃げてねぇ目だった。




