七十九話 (視点クィム)
魔石を入れての試運転段階になった。
どれだけ考えても、ナサンの言っていた“誰も爆発させずに済み、怒りが爆発したものを止められるのか”というのは分からないままだ。
「ここにはどの魔石を入れるんだ?」ロドリゴ殿の声で我に返った。
「えっと……最下層、川の中につかるようになっている部分に……エンリケス殿の植物系のを……。
ロドリゴ殿のものはその上の層へ!」私は慌てて設計図を開き、ロドリゴ殿と目を合わせた。
すると後ろからエンリケス殿に設計図をとられ「クィム、設計図が上下逆さまだよ?考え事かい?」と注意を受けた。
「……申し訳ありません。」
私は途端に恥ずかしくなってしまい、俯くことしかできなかった。
「俺たちが力になれそうなことなのか?」ロドリゴ殿は魔石をセットしながら私に聞いたが、私は首を振った。
「申し出はありがたいですが……これは私が自分で解決せねばならないことだと思ってますから。」
私は、設計図を握り締めた。
「……そうかい。」
エンリケス殿はそれ以上何も言わなかったが、その視線だけが妙に静かだった。
まるで、答えが出ていないことを見透かされているようだ……。
「それで、私の水の魔石はこちらで……?」
ディエゴは先ほどエンリケス殿の魔石を入れた投入口を開こうとする。
「そっちじゃない、お前のはこっちだ。」ナサンは川の上流側の投入口を開けて、ディエゴを呼んだ。
試運転の最中、私は飛び交うやり取りをメモするのに精いっぱいだった。
「第三流路、流速が遅い。滞留の可能性あり……。
えぇと……それから……。」
二人の会話が早すぎて、ほとんど形になっていない文字で書き留めていると、義兄上が隣で記憶してくれていたのか「植物系と水系の干渉、反応遅延あり。だってさ。」と付け加えた。
私はそこまで書留め「機械ならば、逃げ場を作って圧を分散させれば……。
でも、人は――。」その先の言葉が、どうしても続かなかった。
帰り道の道中、向こう側から子供の見習い団員が走ってくる。
「団長!団長!大変!」と半分泣きながら息を切らしてきたその子供は、イゴールに飛びつくようにして止まる。
「どうした?何があったんだ?」
「お姫様……。」そうつぶやいた子供に、私たちは首を傾げた。
「お姫様の……ガブリエルのことを、返せっていうおじさんが……!
暴れてて……!」




