七十四話 (視点ナサン)
その日の作業中、ジョアンはずっとそわそわしていた。多分クィムの勅命審理ってやつが気になってんだろうな……なんて俺はぼんやりしながらひたすら組み立て作業を続けていた。
太陽が真上に来た頃、ガブリエルが作業場に駆け込んできた。
「おい!クィムがなんかに呼ばれたって本当か!?」と息を切らしながら、いつもは気にする汗もそのままに俺に聞いた。
「勅命審理ってやつな、やっぱり殴られた被害者から話は聞くんだと……。」なんて返していると、ジョアンも近づいてきた。
「大丈夫だろうか……、また何か変な目に合ってないといいんだが……。」
ジョアンもジョアンなりに、クィムを見てきたから余計に心配なんだろう。
ただ、クィムも言ってた通り、わざと殴らせたような状況ともとれるような言い方だったのは事実だ。そこをどう話しているのかは、俺たちも気になるところではある。
「おまけに、面倒ごとを起こした張本人の俺たちが呼ばれないっていうのも変だしな……。」俺はそう言いながら作業に戻った。
「おい!心配じゃねぇのかよ!?」とガブリエルは苛立ちながら、俺の作業を止めようとしてくる。
「あいつ、一人で行ってんだろ!?
クィムは俺たちよりも年下のガキなんだぞ!?」怒鳴りながら俺の胸ぐらを掴んでくる。
「それでも、クィムは第二王子だ……。」
ジョアンはガブリエルと俺の間に割って入った。
「酷な言い方だが……。
貴族や王族は、その立場に対する責任が伴う……。
俺が言えた事じゃない、でも……それが、王族となったものの務めだから……こういう時は、しっかりと一人で戦わなければいけない。」
「……だからって、あんなガキを一人で行かせていいわけねぇだろ!?」
ガブリエルの言葉に作業場にいた誰かが「……あれは自業自得だろ。」と呟いたのが聞こえた。
ガブリエルが舌打ちして、その発言をしたやつを突き止めようと声を上げようとしたとき。
「ナサン!ガブリエル殿!義兄上!」と遠くの方から、クィムが笑顔で走ってきた。
クィムの後ろには、クィムを殴ったあのジョゼがいた。
俺たちは、その様子が信じられなくて、ガブリエルは特に間抜けな声で「……はぁ?」とあんぐりと口を開けていた。




