七十二話 (視点ナサン)
「クィムについてかなくてよかったのか?」俺の問いかけに、ジョアンは少し間をおいてから「……まぁ、あいつもそこまで子供ってわけでもないし。」と答えた。
「そうか……。」なんて答えたらいいのかわからず、何なら会話の続け方も分からなかった。
気まずい空気のところにイゴールが戻ってきた。
「叔父上、もう取り調べは大丈夫なのですか?」ジョアンは勢い良く立ち上がった。
イゴールはノギスを俺に手渡しながら「後日、勅命審理にかけられることになったから、その時に証人として出廷するまで待機を言い渡されたところだ。」と言って腰を下ろした。
「どうせマルケスが言い出したんだろうが、もうあんな感じで変に芝居は打たなくていいからな。」
イゴールの言葉に、ジョアンは勢いよく振り向いた。
「え?芝居……?」
呆然とこちらを見るジョアンに、肩を竦めて、俺は渋々白状した。
「やっぱりバレてやがったか……。
そーだよ……マルケスがその方がいいって言うから、仕方なくクィムとガブリエルと一緒に一芝居打った。
まぁ、クィムがあんなことしだすとは思いもしてなかったわけだけどな。」
ジョアンはそれを聞くと、俯いて「俺は、クィムなら正論で詰めるだろうとは思っていた……。
でも、ほんの一瞬のことで……。
あいつに吹き飛ばされたとき、頭が真っ白ですぐに体が動かなかった……。」と握りこぶしを震わせていた。
「……動けなかったことを悔いることは勝手だ。」イゴールの低い声が沈黙を破った。
「だが、見習い騎士団とともに訓練を受けたことのあるお前なら、騎士はそれを理由に自分を責め続けることをしないことは知っているだろう?」
ジョアンの肩が少し揺れた。
「結果論にはなるが、お前の異母弟は無事だったわけだ。
それに、騎士は“正しいときに正しく動けること”だけを追い求めるわけじゃない。
動けなかった時にこそ、何を学んでどう行動すべきだったか、それを含めての騎士道というものだ。」イゴールはそう言うと、規格外のボルトとナットを手に取った。
「ジョアン、お前はクィムに今、自分が何ができるのか……それを考えてやった方がいいだろうな。」
「お前たちも、勅命審理に呼ばれるかもしれない。
もし呼ばれたら、自分にできることをしなさい。
逃げずに責任を果たすこと、それが出来て自立といえよう。
しかし、まだお前たちは子供だ、どうにかできるように俺たちが動くから、まずは目の前のことに集中しなさい。」
そう言い残して、また作業場から去っていった。




