六十九話 (視点ガブリエル)
本当にうまくいくのかよ……とは思いながら、言われたとおりにリストを渡したらあっさり団長とジョアンってやつは作業場に来た。
見習い騎士団の連中も、どこか落ち着かずにそわそわしているし……。
急に巡業の運搬係になったトーマスとかいうのも変に真っ青な顔をしてやがる。
「……たしかに、規格に合ってないボルトとナットが異様に多いようだな。」と団長とジョアンがぶつぶつ話し合っていると、作業場の方からナサンの声がした。
「……あ?」その言葉に数人の見習い騎士が振り向いた。
ジョアンも目線だけ声の方に向けたのが見えた。
もう少し大きい声で言えばいいのに……なんてやきもきしていると、クィムがナサンに駆け寄った。
「ナサン、どうしたんです?」少し棒読みで話しかけているのが気になったが、ナサンは構わずに「……なんだこれ?……じいさんにもらったノギスが、動かねぇ……。」と少し大げさに工具をいじっている。
「いや……?動かねぇんじゃねぇ……歪んでやがる!」とナサンの声に、数人の見習い騎士がびくりと反応したのが見えた。
「そんな!ナサンはちゃんと工具の手入れはしてますし……ありえませんよ!」
クィムの言葉に、団長も声の方へ目を向けた。
ナサンは二人に背を向けたまま、ノギスをいじって「いや……これ本当に歪んでるぞ……どういうことだ?」と呟いた。
見習い騎士たちはというと、そわそわしてお互いに顔を見合わせたり、あからさまにナサン達の方を見ないようにしたりしている。
バレバレなんだよ……と思わず舌打ちがしたくなったが、ぐっと飲みこんで「ナサン、お前その工具どうやっておいてたんだよ?」と声をかけてみる。
予定にはなかったが、こうすれば余計に団長たちも注目するだろ……と見習い劇団員らしくアドリブを利かせてやった。
ナサンは眉間にしわを寄せて「工具箱にしまってたに決まってんだろ?……あ、でもさっき変に地面に落ちてたな……もしかして。」とナサンは見習い騎士団の連中が作業している方を振り返って、ノギスを片手に「……おい。」と低い声を出した。
「もしかして、お前たちの中に俺の工具に細工したのがいるのか……?」とナサンが言ったところで、団長がナサン達に近づいて「……工具を見せてみろ」と声をかけた。
かかった……俺がそう思った時に、反対側からマルケスが歩いてくるのが見えた。
初のガブリエル視点です。




