六十八話 (視点クィム)
マルケスは、いたって冷静に「簡単なことです。」と笑って答えた。
「まず、ガブリエル、クィム殿下の作ったリストを持って、ジョアン殿下とイグナシオ殿下の待っている劇団のテントに戻って二人にリストを見せてください。」とマルケスは指示を出した。
「俺は、これが何のリストだとかは説明出来ねぇぞ?」とガブリエル殿は私からリストを取り上げた。
たしかに、このリストを見ただけでは、見習い騎士団の嫌がらせの証拠とは完全には分からない……。これを見た義兄とイゴールが気付いてくれるという確証もない。
そんな私の心配をよそに、マルケスは続けて「渡すときにこう言うんですよ。」と咳ばらいをした。
「“ボルトとナットの数が、使ってる数よりも運んだ数の方が無駄に多すぎる。どうにかしてくれ。”ってね?」
ガブリエル殿は目を丸くして「そんなんで本当に信じんのか?」と半信半疑なようだ。
「わたくしやクィム殿下やナサンが言うよりも、運搬係のあなたが言った方が説得力があるでしょう?
実際問題、本当に使ってるボルトとナットの数よりも、十何箱以上多いんですから。
ご安心ください、作業している連中に使わせてる物はちゃぁんと規格に合っているもので、わたくしも時折夜なべして点検していますからねぇ、えぇ。」
とマルケスは何度も頷いている。
「ま、現場で起きている大問題ってことになるわけか……。」とナサンは納得したようで、再びノギスに目を移した。
「ノギスのことはどうするんです?」私はマルケスの顔を伺ったが、マルケスは淡々と次の計画の話を進めた。
「それは、ジョアン殿下とイグナシオ殿下が到着してから話すんですよ。
いや、話すというよりも、劇団がかかわってるんですし、せっかくなので演じましょう!」なんて言い出した。
「……はぁ!?」
ナサンの驚く声が、国境沿いの川岸に響いた。




