おまけエピソード 猫になったリーダー (第3話)
視点 ユキト
ユキト「買ってきたぞー!」
シュート「あっ!お帰りなさい!」
ライキ「アストは…まだ寝てるか」
シュート「うん、ずっと俺の尻尾でくるまってる」
ユキト「シュートは寝なかったのか?」
シュート「いやぁ…アストさんが乗ってるのを考えると寝れなくて…俺かなり寝相が悪いんですよ」
アストはシュートの尻尾に包まれて気持ちよさそうに寝ている。普段のアストなら考えられない光景だ。
ユキト「これ…アストが覚えてたらどう思うんだろうな」
シュート「絶対に言ったら恥ずかしがりますよ」
ライキ「デトネーション・ラッシュされるかもしれない」
ユキト「だよな、俺もそう思う」
シュート「いや、2人はアストさんのことどう思ってるんですか!?」
ユキト「まぁとりあえずご飯にしようぜ。シュートは…どうする?」
シュート「後でも大丈夫ですよ。2人は先に食べてください」
ユキト「おう、じゃあ俺たちは先に食うか」
俺は袋を開けた。城下町で簡単な肉料理や野菜、魚などいろんなものを買っておいた。アストが何を食べるか分からないので、とりあえずいろんな種類の料理を買っている。その袋の音が気になったのか、ピクンとアストの耳がたった。そして、ゆっくりと体を起こした。
シュート「あっ、アストさんおはようございます」
アスト「…にゃ」
眠そうに目を擦っている。そして、俺たちの方を見た。
ユキト「…どうした?」
シュートの尻尾から抜け出し、とことこと歩いてきた。
シュート「やっと解放された…」
ライキ「何か名残惜しそうだな」
シュート「それは…うん」
そんな2人の話を横目に、俺はアストを見る。じっと買ってきた料理を見ている。
ユキト「何か買うか?」
俺が聞くと、アストはすんすんと匂いを嗅ぎ出した。
アスト「…にゃ!!」
目の前にあった魚料理を指差した。どうやらお腹は空いているらしい。
ユキト「これか?分かった、今から小さくするからな」
ナイフやフォークは使えないと思うので、俺が小さくして食べやすくした。そして、小さな皿に盛り付けする。
アスト「…」
パクっ
アスト「…!」
一口食べると、アストの目が輝いた。美味しかったのか、尻尾もピンと立っている。
ユキト「美味しかったか?」
俺がそう聞くと、嬉しそうに尻尾を振り出した。言葉ではないが、それだけで十分伝わる。
シュート「良かった。口にあったようですね!」
ユキト「だな、とりあえず安心だ。また食べたいのあったら教えてくれアスト」
アスト「んにゃ!」
次は元気のある挨拶だった。どうやらちょっとだけ言葉は理解できてるようだ。俺たちはアストが何言ってるか分からないけど。
ユキト「よし、じゃあ俺たちも食べようぜ。久しぶりに城下町で買ったから意外と金かかったな…」
ライキ「いつもはアストが管理しているからな」
ユキト「今回買い物して少しアストのすごさが分かった気がした…あんなにたくさん材料を買ってるのに、それでも安く、俺たちを満足させる料理を作ってるんだろ?どうやってるんだろうな」
シュート「俺、この前売り物にならない商品をアストさんが貰ってるのを見ましたよ」
ユキト「えっ!そうなのか?」
シュート「はい、ただアストさんいわく、商品にならない理由は、見た目が悪いから売れないとかそういう理由らしくて、そう言った物は廃棄になるらしいです。だから、少しお店の手伝いをして、売れない物はもらう。お店側からしたらもったいない廃棄する食材をなくせる。手伝ってももらえるという2つで美味しい状態らしいです」
ライキ「見た目が悪いだけで質は良いものだからな。アストはそういうのにも詳しい。そう言ったことで節約しつつも、生活の質は落とさないようにしてるってことだ」
ユキト「そ、そうなのか…!アストすごいな!」
もぐもぐ…
本人は全く気にしてない様子でご飯を食べ続けている。
ユキト「…ちゃんと戻ったらお礼を言うか」
シュート「ですね、アストさんはいつも俺たちのことを考えてくれてますから」
アスト「にゃ!」
ユキト「ん?おかわりか?」
アストは空になった皿を差し出してきた。
シュート「ホント…いつものアストさんとは思えないですね」
ライキ「だな…」
ユキト「分かった!今からまたのせるからな。えっと、魚と…肉ものせるか」
アスト「……」
俺が小さくしていると、アストは料理の入った袋を見ている。
アスト「シャアアアッ!!」
ユキト「うわっ!?」
シュート「わあっ!?び、ビックリしたっ!」
ライキ「ど、どうした…!?」
突然アストが爪を出して威嚇しだした。驚いてつい盛り付けしようとした魚を落としかける。
アスト「シャアッ!」
すると、アストは俺たちの皿を指さしている。
アスト「シャアアアッ!!」
ユキト「だ、誰か翻訳してくれ!?」
シュート「わ、分からないですよ!?アストさん何に怒ってるんですか!?」
ライキはゆっくり俺たちの皿と袋を見ていた。
ライキ「あっ、まさか…」
ユキト「な、何か分かったか!?」
ライキ「ぐっ…し、仕方ない」
ライキはそう言うと、野菜料理の入った袋から自分の皿に盛り付けた。
アスト「にゃっ!」
すると、正解と言わんばかりに尻尾を振り出した。
ライキ「俺たち…ずっと魚か肉しか食べてないから…アストは多分野菜も食えって怒ったんだと思う」
そう言われると、アストが見ていたのは野菜料理の入った袋。これはそもそもアストが何を食うか分からないから買ったものだ。でも確かに周りと比べると、野菜料理だけ多く残っている。俺も、シュートも、ライキも野菜はあまり好きではない。アストの作ったものなら喜んで食べれるのに…。
シュート「えっ!?アストさん猫なのにそれだけは記憶にあるってことですか!?」
アスト「にゃあっ!」
ユキト「う、嘘だろ!?せっかく今日は食べないで済むと思ったのに…」
学食や他のところでも、アストからはよく野菜も食べてよく言われる。でもやっぱりアストの作ったもの以外は食べられない。だから今日は猫になったアストなら言われないと思ったのに…。
シュート「あ、アストさん食べないとダメですか?」
ユキト「今日ぐらいは…ダメか?」
アスト「シャアアアアアッ!!」
シュート「わ、分かりました食べます!」
ユキト「わ、分かった食べる!!」
俺とシュートも急いで皿に乗せた。それを見て満足したのか、アストは嬉しそうな顔をして尻尾をゆらゆら降っている。
ユキト「はぁ…アストの野菜料理なら食べれるのに…」
俺がそう言うと、それが聞こえたのかアストは辺りを見渡し始めた。
アスト「にゃっ!にゃっ!」
ユキト「…ん?」
アストは調味料を置いている棚を指差した。よく見ると、そのうちの何個かを指さしている。
ユキト「これか?」
指さしていたものを全部取ってくると、アストは俺たちの野菜料理に順番に軽くかけていく。
アスト「にゃあっ!」
ユキト「食えってことか?」
おそるおそる一口食べてみる。
ユキト「あっ…食べやすい!」
シュート「ホントだ!ちょうどいい味付け…!ちょっとアストさんのような料理になってます!」
ライキ「すごい…猫になっても料理のことは忘れてないんだな」
アスト「みゃあっ!」
嬉しそうな顔をしながは俺たちの顔を見る。破壊力が…破壊力が高すぎる。
ユキト「…ダメだ、俺これ以上アストの顔見れない…」
シュート「で、ですよね…俺もかなりやばい…」
ライキ「…ずるすぎる」
アスト「…にゃ?」
猫になっても、アストはアストのままなのであった。
◇◇◇
朝ごはん…いや、昼ごはん…?も済ませ、後はアストの面倒を見るだけだった。アストは食べて満足したのか、自分のベッドの上で丸くなって寝ている。
シュート「どこまで言っても猫ですね」
ライキ「料理だけアストが戻ってきたけどな」
ユキト「さすがにアストは野菜食わないだけであそこまで怒らないけどな…」
俺はアストの方を見た。気持ちよさそうにぐっすり寝ている。これはこれで良いのかもしれない。アストは最近頑張りすぎているところがある。よく夜遅くまで勉強もしていて、休めていないんじゃないかと心配することもあった。今はあんなに寝て、体力もきっと回復できているはずだ。
シュート「…でも最初はどうなるかと思いましたけど、ちょっと楽しいですね。いつものアストさんはあんなに暴れないので」
ライキ「珍しくはあるからな。明日には戻るとは言え、これが毎日続くのは大変ではあるけど」
ユキト「…俺、あんなに寝ているアストは久しぶりに見た気がするんだ」
シュート「確かに…アストさんは簡単には休みませんからね」
ライキ「…そう考えたら、今回の猫騒動はアストにとっても悪いことではないのかもな」
俺はそっと近づいてベッドに座った。ピクンと耳が動く。
ユキト「ゆっくり休めよ、アスト」
アスト「んにゃ…」
そっと頭を撫でる。すると、一瞬目を開けた…かと思うと、そのまま目を閉じて眠ってしまった。
シュート「はは、ユキトさんにもすっかり懐きましたね」
ユキト「最初はあんなに威嚇されてたのに…」
ライキ「ここにいる全員に慣れたんだろうな」
その後は誰も喋らなかった。俺はアストの頭から手を離し、自分の大剣を持ってきた。そしてまたベッドに座り、点検をする。シュートはアストの勉強机で課題と魔法の勉強を始めた。ライキはソファに座って魔導書を読み進め始めた。アストは相変わらず寝ている。
すごく静かな環境。いつもなら俺がふざけて、シュートが笑って、ライキは苦笑して、アストが軽く突っ込みを入れる。だけど、今は全員が静かにして、好きなことをしている。アストは猫だから違うかもしれないけど…。まぁ、たまにはこんな生活も良いんじゃないかと思えた。




