おまけエピソード 猫になったリーダー (第1話)
ふと思いついたオマケ編です。
ep25〜ep26の間に起きた出来事という設定です。
視点 アスト
アスト「よっと…これだけあれば良いかな」
ある日の朝、僕は寮の部屋で魔導書や獣人に関する本をまとめていた。みんなでギルドを作り、リーダーも僕が選ばれた。だからこそ、これからは一層強くなるために、勉強を頑張らないといけない。
それと、ユキトたちのことももっと知りたい。ユキトは珍しい氷竜と狼の混合種。シュートは九狐という狐族でも珍しい種族。ライキは普通の犬族の獣人ではあるが、そもそも僕は獣人に関してはあまり知識がない。せいぜい本でそんな種族もあるんだ程度。ムースタン国には竜人しかいなかったから、獣人と関わる機会がなかった。だからこそ、もっとみんなのことを知るべきだと考えていた。
アスト「…まぁ、今日中には読み終わらないだろうけど」
そして一つの本を手に取った。これは獣人に関することが載っている魔導書だ。中には性格、本能、起源なども載っている。
アスト「これを使えば、獣人になれるのか…」
この本には一時的にだが変身魔法も魔導書に記載されている。より、その獣人のことを知るためのものらしい。
アスト「まぁ、覚えるくらい…と言っても簡単だな…今すぐにでもできそう。流石に今からは使わないけど」
そう思って本を閉じた。その時、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
ユキト「アスト!今良いか?」
アスト「ユキト?うん、大丈夫!」
そう言うと勢いよく扉が開いて、ユキトが入ってきた。
ユキト「また依頼が来たぞ!討伐依頼だってさ!受けようぜ!」
アスト「ちょ…は、早いよ!?まずは内容を見てからだから!」
ユキト「分かってる分かってる!でも今回の討伐依頼はかなり面白そ…ってうわっ!?」
ユキトが資料を持ってこっちに歩いてくるが、油断していたのか翼が机の上に重ねていた本の山に当たってしまった。
アスト「だ、大丈夫?」
ユキト「お、おう…ごめん、魔導書が散らかった…」
アスト「大丈夫大丈夫、とにかく拾わないと…」
ユキト「俺こっち拾うぜ…ん?なんだこれ?」
アスト「どうしたの?」
ユキト「いや…この本何か光って…」
その瞬間、ユキトの持っていた本がとてつもない光を放つ。
アスト「うわぁ!?」
ユキト「な、なんだこれ!?」
前が何も見えないほどの光。だけどその光を浴びた瞬間、僕は意識がなくなってしまった。
視点 ユキト
少しすると光がだいぶ弱くなってきた。俺はゆっくり目を開ける。すると、目の前にアストが倒れていた。
ユキト「あ、アスト!?大丈夫か!?…は?」
すぐさま駆け寄る…がよく見たら何かおかしい。確かに目の前にはアストがいる。ただ、茶髪の髪の頭に、ピョコンと猫の耳がある。さらに尻尾もついていた。
アスト「…んにゃ」
ユキト「んにゃ!?」
急にアストが猫っぽいことを言っている。つい大きな声を出してしまった。すると、アストは俺の大きな声に驚いたのか、ベッドから飛び起きた。
アスト「…シャーー!!」
俺の方を見たかと思うと、後ずさって爪を出してきた。いつもなら無いはずのアストの手には猫の爪のようなものもある。しかもすごく威嚇してくる。
ユキト「お、おい…ど、どうしたんだ?」
アスト「シャーー!!」
ユキト「うわぁ!?」
少し近づこうとした瞬間、アストは凄い勢いで飛びかかってきた。アストからは見たことのない身体能力。咄嗟の出来事だがギリギリ避けた。
ユキト「ちょ…お、俺だって!ユキトだって!!」
アスト「んにゃああー!!」
何度も呼びかけるが、アストの暴走は止まらない。
ユキト「お、俺のこと分からないのか!?」
困っていた時だった。アストの部屋の扉が開く音がする。
シュート「アストさん!今少し良いですか…えっ、どうしたんですかこれ?」
そこにいたのはシュートだった。シュートはアストを見て困惑する。
ユキト「頼むシュート!助けてくれ!」
シュート「えっ!?えっ!?どういう状況ですか!?」
シュートは驚いてどうしたら良いか分からずあたふたしている。そのせいで…後ろの9本の尻尾が揺れていた。それをアストが見てしまった。
アスト「……」
シュート「えっ…アストさん…ですよね?その姿は一体…」
アスト「にゃー!!」
シュート「う、うわ!?」
シュートの揺れる尻尾にアストが飛びついた。
アスト「にゃっ!にゃっ!」
シュート「ちょ…ちょっとやめてください!?尻尾の毛が…い、いた!?爪も出てるじゃないですか!?」
シュートは逃げようとするが、移動するたびに尻尾が揺れるせいでアストはそれをさらに追いかける。
ユキト「ちょ…!?アスト落ち着いてくれ!?」
俺は隙を見てアストを抱き抱えた。
アスト「んにゃあぁー!!!」
シュート「め、めちゃくちゃ怒ってますよ!?これ絶対降ろせって言ってますよね!?」
ユキト「ぜ、絶対そうだよな!?」
俺の腕の中で思いっきり暴れるアスト。何度か離しそうになってしまう。
ユキト「た、頼むアスト落ち着いてくれー!?」
ライキ「…大丈夫か?何かやけに騒がし…ってどうしたんだ?」
またまた扉が開く。どうやらこの騒ぎを聞きつけてライキがやってきたようだ。
ユキト「ら、ライキ!!助けてくれ!アストを止めたいんだ!」
ライキ「あ、あぁ…!」
その時だった。
アスト「んにゃ!」
ユキト「いって!?」
アストが俺の翼を引っ掻いてきた。その痛みでアストを離してしまった。
シュート「あっ!?まずい外に!?」
アストは凄い勢いで走り、部屋の出口に走り出した。
ライキ「落ち着けアスト!」
ライキが立ち塞がるが、その横をするりと抜けてしまった。
ライキ「…っ!?はや!?」
ユキト「い、今のアストを放ってたらまずい!?」
シュート「い、急いで追いかけないと…!」
ライキ「…いや、それは大丈夫そうだぞ」
ユキト「え?」
廊下に出てみると、アストがぜー…はー…と不規則に呼吸しながら、手を床について倒れていた。
ユキト「だ、大丈夫か?」
近寄るがアストは逃げようとはしなかった。見た感じ体力切れのようにも見えた。抱き抱えてもアストは暴れようとはしなかった。
ライキ「…とりあえず、何があったか教えてくれないか?」
ユキト「そ、そうだな。とりあえずアストを連れて中で話す」
ひとまずアストの部屋に行き、アストはベッドの上に寝かせた。そして、先ほど起きた出来事をシュートとライキにも伝えた。
シュート「つまり…その魔導書のせいでアストさんは猫…猫獣人みたいになった…ということで良いんですか?」
ユキト「多分…その魔導書から出ていたからそのはずだ」
ライキは本を手に取り、ペラペラと読み始めた。
ライキ「…読んだ感じ、その可能性がありそうだな。変身魔法を発動できる魔法陣がかなり多く記載されてる。魔力さえ込めたら変身できる状態だ」
ユキト「魔力…?いや、でもアストはあの時、魔力なんて込めてなかったはず…」
シュート「そう言えば…この部屋かなり荒れてますよね」
シュートはそう言って部屋を見渡す。確かにアストが暴れたせいで明日も倒れ、魔導書も散らかっている。
ライキ「…これ、いつ倒した?」
ライキが床に落ちてた一本の魔法薬を手に取った。よく見ると蓋が取れていて、中身が少し溢れている。
ユキト「…ん?それって…アストの部屋に来た時机の上にあったやつか」
ライキ「アストが暴れた時に落としたのか?」
ライキに聞かれ、俺はゆっくり思い返した。
ユキト「…あれ?そう言えば魔法陣が光った後は机の上にそんな魔法薬はなかった気が…」
ライキ「…この魔導書のこのページ、少し濡れてるんだ。そしてそこから魔力を感じる」
ユキト「…それって」
ライキ「ちなみにこの魔法薬は魔力回復薬。だからこれが魔法陣のとこにかかれば、発動する可能性もある」
ユキト「……」
嫌な予感がした。魔法薬は机の上にあった。そして、俺は翼で山積みにされた魔導書を倒してしまった。その時、一緒に魔法薬を落としてもおかしくない。
そもそも、魔法薬の瓶が落ちて割れてないのも変な話だ。床に落ちた時に、何かクッションになるものがあったと考えるのが自然。つまり、落ちた魔導書の上に魔法薬が落ちてしまった。そこから液が漏れ出し、かかって魔法陣が発動してしまった。そう考えるのが自然だった。
ユキト「…」
シュート「ユキトさん?」
ユキト「…これ俺のせいだ」
原因が分かってしまい、俺は項垂れてしまった。
◇◇◇
ライキ「とりあえず、今日は学園も休みだし、俺たちで面倒をみよう。解決方法も探らないとな」
ライキはそう言ってソファで腕を組んでいる。
ユキト「はい…」
シュート「あ、あのユキトさんが落ち込んでる…」
ユキト「いや…その…悪いな。こんな大変なことに巻き込んでしまって…」
ライキ「事故だからしょうがない。次から気をつければいいんだ」
シュート「そうですよ。最初は驚きましたけど、俺たちもちゃんと手伝いますから。気にしないでください!」
ユキト「…ありがとう2人とも」
アスト「……にゃ」
声が聞こえてベッドを見た。すると、アストが体を起こしていた。
シュート「あっ、アストさん起きましたね」
アスト「…」
すると、ベッドから降りて俺たちの方に近づいてきた。
ユキト「どうした?アスト」
アスト「…」
アストはソファに座っているライキを見ていた。
ライキ「…どうした?」
ライキが聞くと、アストはライキの隣に座る。
アスト「…すぅ」
すると、こてんと頭をライキの肩に乗せて、目を瞑った。
ユキト「は!?」
思わず大きな声を出しそうになり、慌てて口を押さえた。
シュート「ら、ライキ…懐かれてない!?」
ライキ「あ、あぁ…俺も驚いた」
小さな寝息が聞こえてくる。どうやら、アストはライキで安心しているようだ。
ユキト(…なんか悔しい)
シュート「猫…ケットシーにも言えますけど、警戒心がすごい高いはずですよね…?それがこんなに心を許すなんて…もしかして、ライキは静かだから落ち着けるんですかね?」
ユキト「あぁ…なんか納得したな」
ライキ「…俺、もしかしてしばらく動いたらダメか?」
ユキト「そ、そうだな。アストがまた暴れたら大変だし…」
ライキ「…分かった。なら、解除方法を調べるから、もう一回その魔導書をとってくれ」
シュート「分かった!」
シュートは魔導書を手に取り、ライキに渡す。そして、再びペラペラと本をめくり始めた。しばらく読んでいると、ライキがアストの方を見た。
ライキ「…意外と肩が重いな」
ユキト「そこは頑張って耐えてくれ…」
ライキ「分かってる、俺は魔導書を読んでおくから、ユキトとシュートは事情を先生に説明してくれないか?一応報告はしておくべきだと思う」
ユキト「分かった、アストのことは任せたぜ」
シュート「すぐに戻るから、よろしくね」
俺たちはアストをライキに任せ、部屋を後にした。
シュート「…ユキトさん」
ユキト「どうした?」
シュート「意外と…猫アストさんかわいいですよね。俺たち散々な目に遭いましたけど…怒れなかったです」
ユキト「…それは、俺も思った」
シュート「…」
ユキト「…」
もともとかわいい顔はしているが、そこに猫耳と尻尾のついたアストは、やっぱりかわいいと思ってしまった。絶対に本人には言わないけど。
シュート「流石に本人には内緒にしておきましょうか…」
ユキト「だな…もしかしたら、宝石魔法が飛んでくるかも知れないしな…」
シュート「さ、さすがにアストさんはそんなことしないですよ!?ただ…しばらく料理で量を減らされたりとかされるかも…」
ユキト「俺はそっちの方が嫌だな、絶対言わないぜ」
シュート「魔法よりも!?」
こんな状況でも、食には勝てないユキトなのであった。
◇◇◇
その頃、ライキは肩に頭を乗せているアストを見た。
ライキ「…完全に安心してるな。こう見ると…意外とかわい…」
そこまで言いかけてライキは少し顔が赤くなった。
ライキ「…んっ!よ、余計なことを考えるな…まずは治す方法を調べるのが先だ…」
しかし、耳の良いライキは小さい寝息が聞こえてしまう。それを聞いてしまうだけで、何度も集中力が途切れかけてしまうのだった…。




