第12話 1つの希望
アスト「オークはあっちの方向に行ったんだよね?」
ジル「あぁ、間違いない」
シュート「ずっとあっちの方角から嫌な気配がしてますよ…」
アスト「そうなんだ…僕には何も感じないけど…」
ライキ「…視認しなかったからじゃないか?」
何やら考えていたライキがボソッと呟いた。
アスト「やっぱり…そういうことなのかな?」
ユキト「おいおい、頭良い組。2人で共有しないで俺たちにも分かるように言ってくれよ」
アスト「あ、頭良い組って…ま、まぁとりあえず、あの黒くなったモンスターたちは何故かは分からないけど、視認するまで気配を感じないっていう可能性があるんだ」
アトラ「確かに…俺は結構気配には敏感な自信があるっすけど、至近距離に近づかれても気配を感じ取れなかったっす。でも姿を見た瞬間…邪悪な気配を感じ取れるようになったんすよね」
ジル「…もしそうなら厄介な力だな。油断をしていたら一瞬でやられる可能性もある」
アスト(でも…1つ疑問はある。僕とユキトが初めて黒いオークと闘った時…僕は視認しなくても気配を感じ取れてた。むしろ邪悪な気配の強さで言うならゴブリンの方が恐怖を感じた程だったし…この違いは…何なんだろう…)
もしかしたら能力を持っている個体と持っていない個体で差があるかもしれないが、少なくとも何か対策を考える必要がありそうだ。気配が消える力…暗殺や闇討ちによく使えそうだ。
シュート「うわっ!?」
ライキ「っと、大丈夫かシュート?」
シュート「う、うん…!ちょっと躓いただけだから」
ライキ「確かに、この辺りは地形が悪いから気をつけないとな」
転びかけたシュートをライキが優しく支える。辺りを見渡すと、地面が先ほどと比べてデコボコしている。僕も転ばないように気をつけないと。
アトラ「…この辺りこんな地形悪かったっすかね?」
ジル「…いや、この不自然な穴ボコは…」
ユキト「これ…足跡にも見えないか?」
言われてみれば、一定の間隔で穴が空いている。形的にも、足跡と言われれば納得できる。
アスト「…えっ、でもこれが足跡なら…よっぽどの重量と大きさがないとできないよね?」
ライキ「…あのデカいオークが歩いた後…ってことか」
アスト(…デカすぎる!)
みんなが怖気付いたのがやっと分かった気がする。確かに、これほどの大きさを見れば逃げ出したくもなりそうだ。ただそれでもみんなが勇気を出してくれたんだから、僕も頑張らないと。
アスト「…つまりこれを追えば良いんだね。行こうみんな」
みんなが頷く。僕たちは油断せず、足跡を辿っていった。足跡を辿るたびに、みんなの表情が険しくなるのが見えた。どうやら少しずつ黒いオークに近づいているようだ。
アトラ「あれ…この方向…」
ジル「…どうした?」
アトラ「いや…まさか…!」
その時、アトラは何かに気づいたようだ。
アトラ「…まずい!」
ドゴーン!!
アスト「うわっ!?」
大きな音と共に、地響きが起きる。何かが壊れたような…爆発したような…それほどの大きな音だった。
ユキト「…!?あいつ…そう言うことか!ずっと不思議だった…こっちは村と反対方向だ。一体何をしようとしてるのか分からなかったが…ようやく分かった…!」
その時、僕にも最近感じた気配がこちらに近づいてるのを感じた。
アスト(この気配…あの時の黒いゴブリン!?)
アスト「そうか…!あの洞窟の奥にいる黒いゴブリンたちの解放…!」
アトラ「俺の魔法の岩を…破壊したのか…!まずい…!一気になだれ込ませる気だ!」
アトラはすぐさま戦闘体制に入った。たくさんの気配がどんどん近づいてきている。
アスト「こっちの方向にどんどん来てる……まさか…村の方に行こうと…!?」
ジル「ちっ…!この状況はまずい…!どうにかして村に伝えないと…!」
ライキ「俺が先に村に戻る!俺の速さならすぐ着く!」
ユキト「分かった…頼んだぞライキ…!」
ライキはうなずき、ものすごい速さで森の入り口に走っていった。確かにライキはこの中の誰よりも早い。素早く伝えるには1番の適任だ。そして…ここからは僕たちの役目だ。
ユキト「ならあとは…俺たちで足止めだな…!」
シュート「で、ですね…!よ、よし…やるぞ…!!」
全員が構える。音は比較的近い場所から聞こえた。そこまでの距離はない。すぐさま襲いに来るはずだ。
アスト(ここで…食い止めないと…!)
視点 ライキ
ライキ(もっと…もっと早く走れ…!1秒でも早く…村に行かないと…!)
必死になって走り続けていた。背後の気配がどんどん大きくなっている。急いで伝えて、俺も早く戻らないと。数分もしないうちに村が見えてきた。そこまでの距離はないはずなのに、すごく遠くに感じる。
ライキ「はぁ…はぁ…!」
急いで村の中に入る。避難が始まっているのか、だいぶ人が減っている。
ライキ「とりあえず…みんなに伝えないと…!後は…ギルドの人がいれば…くそっ…でももう着いてるのか?」
ネイファル国とフレーノ村の距離はかなりある。俺たちだって何時間も歩いてきたのだから、まだ到着していない可能性の方が高い。
ライキ(い、いや…まずは伝えるのが先だ!村の人は一体どこに避難を…)
??「やぁ、久しぶりだね、ライキくん。そんなに慌てて…どうしたの?」
ライキ「っ!あ、あなたは…!」
声をかけられ、驚いた俺は振り返る。その人物を見た時、俺は希望を感じた。見たことのある熊の獣人。一度手合わせをした、確実に俺たちよりも強い人物であり、ギルドにも所属している人…。
ライキ「…ファリルさん!」




