第11話 4人の決意
視点 シュート
ライキ「そ、そんなに驚くようなことか…?」
アスト「う…な、何…?」
俺は突然の告白に大声を出してしまった。そのせいで、アストさんも起きてしまったようだ。
アスト「い、いたっ…!か、体がビリビリする…!?」
シュート「す、すみませんアストさん…!起こしてしまって…」
ライキ「無理に起きあがらずに横になってた方が良いぞ。まだ電気が体に残ってるみたいだからな」
アスト「う、うん…そうするよ…えっと…今の大声は何?」
ライキ「俺がシュートに学園を卒業したら旅にでるって伝えたんだ。そしたらシュートが大声をだしてな…」
アスト「えっ…!?そうなの?」
アストさんも驚いた様子でライキを見る。
ライキ「あぁ、今回のことでオルドフェクスのやつらがいかにやばいやつらか改めて再認識したからな。俺やシュートみたいに苦しむやつがこれ以上でないように、あいつらの親玉を倒したい。そして…あいつらの野望である悪魔魔法の研究を阻止したいんだ」
ライキは真剣な眼差しで話す。そんなライキをかっこいいとは思うけど、どこか寂しい気持ちがあった。
アスト「…えっと、1人でやるつもりなの?」
ライキ「それは…そうだと答えたい…けどオルドフェクスの実力とか組織力を考えると1人じゃ無理だろうな…実際今回は、シュートたちが来てくれなかったら、きっと俺はここで死んでたと思う」
ライキの言葉を聞いて、俺は体が震えた。もし、間に合わなかったら…ライキは死んでいる。そんなことにならずに済んで、本当に良かった。
アスト「でもライキのことだし…何か考えはあるんだよね?」
ライキ「もちろんだ。アストはいろんな国にギルド協会があるのは知ってるよな?」
アスト「うん、知ってるよ。学園に来たばかりの時は何度もお世話になってたから」
ライキ「オルドフェクスは犯罪組織だからな。対抗するギルドもあるんだ。俺はそこに将来入れてもらいたい…というか学園を卒業したら入るつもりなんだ」
シュート「え?でも…ギルドに入るなら少なからず試験があるよね…?それも…オルドフェクスとかと戦うなら冒険者ランクがC以上はないと討伐とか調査にも行かせてもらえないんじゃないの?」
冒険者ランクとは、その人の実力を測る1つの指標だ。基本的にはモンスターのランクと同じでF〜Sの7つのランクに分けられている。ギルドなどでは討伐任務を受ける際、モンスターのランクがCならその人も冒険者ランクがC以上ではないと任務を受けることができない。
アスト「それに…確かギルドって基本的に20歳以上じゃないと加入を認められないんじゃ…」
ライキ「……そうなのか?」
シュート「…え?知らなかったの?」
ライキ「…全く知らなかった」
2人「えぇぇーー!?!?」
俺とアストさんの大きな声が研究所に響く。ライキはいつも真面目なところがあってしっかりしているのだが、まさかこんな勘違いをしてるとは思わなかった。
シュート「ど、どうするの?」
ライキ「20歳まで…我慢するしかないが…そんなルールがあったんだな…」
ユキト「おっ、2人とも起きてたんだな。どうしたんだ?何の話をしてるんだ?」
その時、研究員をぶち込んで来たユキトさんが戻ってきた。
シュート「えっと…それが…」
俺は今話したことをユキトさんに話した。
ユキト「なるほどな…確かにギルドはそういう決まりが多いから、ライキが入るのは難しいかもな」
ライキ「そうなのか…なら今は諦めるしか…」
ユキト「何言ってるんだ。諦めるのはまだ早いぜ」
シュート「え?」
ライキ「…何か方法があるのか?」
ユキト「おう、今のライキでもギルドに入れる方法が1つあるぜ」
アスト「それって?」
ユキト「簡単なことさ、ギルドを最初から作ってしまえば良いんだ」
アスト「ギルドを…」
シュート「最初から…」
ライキ「…作る!?」
確かにその方法ならライキもギルドに入ることはできる。でも、普通に加入するよりも難しいような感じがする。
アスト「20歳以上じゃなくても作れるの?」
ユキト「作れるぞ。それに、ギルド協会自体には20歳以上じゃないと加入してはいけないなんて決まりはないぞ」
シュート「そ、そうなんですか?でも…20歳以上の人じゃないと加入を断られるって聞いたことあるんですけど…」
ユキト「その通りだ、そして断る理由には主に3つある。1つ目は人数制限だ」
アスト「人数制限?」
ユキト「そうだ、ギルドは1つのギルドにつき、入れる人数が限られているんだ。これは、ギルドで冒険者ランクの高いやつらが集まりすぎると、軍隊を超える力を持たれて国家転覆とかクーデターを起こさせないようにするためだ。ちなみに1つのギルドにつき20人まで入れるぜ。」
アスト「なるほど…確かに強すぎるギルドは国家の安定を脅かしてしまうんだね…でもそれと20歳以上には何の関係があるの?」
ユキト「簡単に言うと、20歳以上の人は大人だから、実力が安定していることだな。ギルドの人たちからすれば頼もしい人たちで構成したいだろ?でも20歳になってない人たちは戦闘の経験も少なくて、まだ実力がない人も多い。つまり弱い人を入れたくないんだ」
アスト「え…で、でもそれもそうだね…ギルドの人たちは討伐任務とかがほとんどだし、実力がある人が多い方が良いのか…危険なモンスターも多い訳だし…」
ユキト「そういうことだ。そして2つ目は冒険者ランクだな。冒険者ランクは自身のランク以上のモンスターを討伐して、証拠として倒したと証明できる物を提出できたら上がれるんだが…実は20歳以下の人が倒した証拠品を見せても信じてもらえないことがあってランクを上げてくれないんだ」
シュート「そ、そうなんですか…!?」
ユキト「理由は…20歳未満は実力がないっていう先入観を持たれてしまってることだな。ギルド協会ってのは頭が固いやつも多くてさ…倒しても嘘だって言われることがあるんだ」
ライキ「確かに子供は大人と比べたらまだまだ未熟だ。そう言う考えの人も多いだろうな…」
ユキト「そう言うことだな。ギルドからしても、ランクが低いと討伐に行けないから入れたくないんだよ」
アスト「それで…最後の理由は?」
ユキト「最後は…ギルドの評判が落ちるからだな」
アスト「評判が落ちる…?それはどうして?」
ユキト「まだ20歳に近い歳の人はまだしも…俺たちみたいな子供をギルドに入れたら、子供を戦力として働かせるギルドと見なされる可能性があるんだ。実際に金目当てで子供を働かせて自分たちは何もしないとかいう酷いギルドもあったんだ」
ライキ「そうか…それは…周りから見るとそう見えてしまうよな…」
ユキト「そうだ、だからギルドとしては評判を落とさないために、子供は加入させたくないんだよ。この3つが主な理由だな」
確かにギルドは討伐などでお金を稼いでいるのに、子供が加入してしまうと、その稼ぎが少なくなる可能性がある。ギルド側からしてみると入れるとデメリットしかないのだ。
シュート「じゃあ…俺たちが子供のうちは入れないんですね…」
ライキ「…仕方ないさ」
ライキは落ち込んだように言う。以外と俺たちが知らないだけで、ギルドの世界はかなり厳しい世界だったのかも知れない。
ユキト「おいおい!落ち込む心配はないぜ!さっきも言ったようにまだ方法はあるんだ!」
ユキトさんはそう言って俺たちの肩を叩いてくる。
アスト「ギルドを作る…ってやつだよね?それってどう言うこと?」
ユキト「今言った3つのことを全部気にせずにギルドに入る方法…さっきも言ったが別に20歳未満の人でもギルドは入って良いんだ。なら、20歳未満のメンバーでギルドを作れば良いんだ!」
アスト「えっ!?大人抜きで作るの!?」
ライキ「そ、そんなことが…できるのか…?」
衝撃の提案に俺たちは驚きを隠せなかった。確かに、その方法なら3つのことを気にすることなくギルドに加入することができる。
ユキト「もちろんできるぜ!と言っても最初は4人以上集めないとギルドを作ることはできないんだけどな」
ライキ「よ、4人か…」
ユキト「そこで提案なんだけどさ。」
シュート「提案?」
俺が聞くとユキトさんはニヤッと笑った。
ユキト「もし3人が良いっていうなら…俺たち4人でギルドを作ろうぜ!」
アスト「えっ…僕たちで!?」
アストさんは思わず声が出た。俺も同じ気持ちだ。まさかそんなことをユキトさんが言い出すとは思っていなかった。
ライキ「ちょ、ちょっとまってくれ。俺はさっきも言ったようにオルドフェクスを追うんだ。おそらく…というかきっと何度も命の危険にさらされる可能性がある…。なのに俺と組んだら3人を巻き込んでしまうかもしれないじゃないか…」
ライキの声はどこか迷いを含んでいた。
ユキト「そうかもしれないな、でも…実は俺もギルドに入りたい理由があるんだよ」
ライキ「ユキトも…?」
アスト「…あっ、それってもしかして…」
アストさんは小さく声を漏らした。ユキトさんの事情をアストさんは知っていたようだ。
ユキト「あぁ、俺の…兄貴のことだ」
シュート「ユキトさんの…お兄さん?」
ユキト「俺の兄貴は行方不明になっててさ…細かいことはまた今度教えるけど、ずっと消息をつかめていないんだ。だから…情報が欲しい。そのためにもギルドに入って、色んな人脈を頼りたいんだよ」
シュート「行方不明…!?」
ライキ「そうだったのか…」
ユキト「それに…兄貴はオルドフェクスを追ってたりもしてたみたいなんだよな」
アスト「えっ!?」
ユキトさんの言葉に全員が驚愕した。アストさんもこれは知らなかった事実のようだ。
アスト「それって…どういうこと…?」
ユキト「アストにも言わなかったからな。これを見てくれるか?」
そう言うと、ユキトさんはポケットから小さな紙を取り出した。中を読んで見ると、それはユキトさんのお兄さんが書いたであろう手紙だった。どうやら、お兄さんの日常的な文章が書かれているようで、普通の手紙にも見えた。しかし、読み進めていると気になる文章が書かれていた。
「俺は今、ネイファル国のギルド協会でオルドフェクスを追っている。また危ないことをしているのかと思うかもだが、目を瞑ってくれ。また会いにいくからなユキト。 ソウハ」
ユキトのお兄さんの名前はソウハと言うらしい。ソウハさんも、どうやらオルドフェクスについて調査をしていたようだ。
ユキト「俺も…オルドフェクスの奴らには聴きたいことが山ほどある。だからライキ、俺も協力させてくれないか?」
ライキ「…分かった、俺からもお願いする。でも…」
ライキは言葉を詰まらせた。
ライキ「これは俺のことだから…関係のない2人を巻き込むわけには…」
申し訳なさそうに俺とアストさんを交互に見た。瞳の奥にある迷い。きっと、誰かを危険に巻き込みたくないという優しさだ。でも…
シュート「関係あるよ!俺も!」
思わず叫んでいた。ライキのその言葉に、感情が胸の奥から突き上げてきた。
ライキ「しゅ…シュート…!?」
シュート「俺だって…オルドフェクスのやつらは今でも許せない!ライキを、あんなひどいやり方で追い詰めた奴ら…!アイツらに何度も酷い目に遭わされて…それでも俺は何もできなくて…ずっとライキに頼りっぱなしだったんだ!」
俺はあの日を思い出した。5年前、オルドフェクスに捕らわれ、ライキがボロボロになってまで助けてくれたあの瞬間、震える足で立ち上がれたのは、ライキがそばにいてくれたからだ。
シュート「俺は弱いけど、今日から決めたんだ。もう、あんな奴らに好き勝手はさせないって……!誰かが苦しむのを見てるだけなんて、絶対に嫌だって…!」
言葉を吐き出すたび、胸の奥が熱くなっていく。
シュート「だから…関係ないなんて言わないでよ!俺は、ライキと一緒に戦いたい!次は…俺が守りたい…!」
ライキ「…っはは、そうか…お前は…もう昔とは違うんだもんな…」
シュート「…えっ?」
ライキ「昔の感覚が抜けきってなかったんだよ。……俺は、お前のことをどうしても守らなきゃいけないって思ってた。唯一の友達で…失いたくなかったんだ。そのために、何度も特訓して、強くなろうとしたんだ。でも……そうだよな…シュートはあのドクトルにも勝ったんだ…。お前も…俺も…あの時と違って変わったんだな…。」
シュート「そうだよ……俺だって成長するんだ。ずっとライキに守られてばかりで、そんな自分が嫌になってた。そのために俺も…強くなろうって決めたんだ。だから…次は、俺にも守らせてよ。」
一瞬、静寂が流れた。でもその沈黙の中には、言葉では表せない想いが、確かに伝わっていた。ライキは小さく、けれど力強く頷いてくれた。
ライキ「ありがとう…シュート」
終わった、終わったんだ。5年という長い月日を経て、ようやく俺たちのトラウマが消えたんだ。やっと、あの日の思いを果たすことができた。これで、ようやく俺たちは一緒に歩くことができるんだ。
ユキト「それじゃ…後はアストだな。アストはどうする?」
ユキトさんはそう言うと、アストさんの方を見た。アストさんは少し俯いた。
アスト「…僕ね、ユキトには言ったんだけど、ムースタン国出身なんだ。」
シュート「えっ!?ムースタン国って…あの星竜族が住んでるっていう…!?」
アスト「うん、あの国には人族は住んでないんだけど、でも……僕は小さい頃に両親に捨てられてて、そこを星竜族の人に拾って育ててくれたんだ」
その言葉には、温かい感情と寂しい感情が渦巻いている。
アスト「だけど、やっぱり僕だけが人間だから…誰よりも弱かったし、虚弱体質のせいで、みんなの普通とは違う日常を過ごしてた。努力しても、他のみんなには敵わないし、一度無茶をして身体を壊しかけたこともあった。それでトラウマができて、生きている理由とかも…よく分からなくなったんだ」
ユキトもシュートも、黙ってアストの言葉を聞いていた。それは、ただの過去じゃなく、彼が今でも背負っている重さなのだと分かるから。
アスト「学園に来たのは、強くなりたかったのもある。でも……それだけじゃなくて…僕には小さい頃から夢があって、旅をしてみたかったんだ。国を出て、自分の足で何かを選んで、自分の意志で誰かと出会って……」
少し照れくさそうに笑って、アストは続けた。
アスト「……自分でいろんな世界を見てみたい。トラウマのせいで一度は諦めかけた夢だったんだけど、国で育ててくれた家族もビックリするくらい強くなって、夢を追えているところをしっかり見せてあげたい。それが応援してくれているみんなへの最高の恩返しだと思うから」
その瞳は、かつての迷いの影を払ったような、まっすぐな目だった。
アスト「それに…この4人で冒険をするのも、きっと楽しいんだなって思うんだ。だから、僕も…みんなでギルドを作りたい。それに…ユキトとお兄さんを探すって約束したからね」
それを聞いてユキトさんはアストさんの目を見て頷いた。アストさんの声は穏やかだったけれど、その胸の奥には誰よりも熱い想いがあった。それはきっと、俺も、ライキも、ユキトさんも同じだ。
ライキ「俺は……アストの気持ちを尊重したい。もし、入ってくれるなら……ぜひ、俺たちの仲間になって欲しい」
その声には、迷いはなかった。ライキが俺以外の誰かを仲間として迎えたいと思えたことが、何よりの証だった。
ユキト「だな! もう4人そろってるし、あとはやるだけだろ!」
いつも通りの軽快な口調でユキトさんが笑う。だけどその目は、ちゃんとアストのことを見つめていた。
アスト「うん、僕……みんなと一緒に頑張りたい!」
そう言ってアストは顔を上げた。いつものアストさんからは考えられない程のまっすぐで、力のこもった瞳。
ユキト「よっしゃ! じゃあ、これで決まりだな! 俺たち4人でギルドを立ち上げるぞ!」
4人「おぉー!!!」
俺たち4人の声が重なる。この時の俺は、一つの歯車が動き出したかのような感じがした。




