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輝星のグランギルド  作者: yuuberu
1章 友達編
13/31

第10話 炎の体

視点 シュート



シュート「ライキ!!」


俺はすぐさまライキに駆け寄ろうとした。服は破けていて、身体中に切り傷や焦げ跡があり、眼からは血が溢れていた。明らかに異常な状態だ。


ユキト「ライキ!大丈夫か!?」


アスト「うっ…!ひどい傷…!」


すぐ後ろから、アストさんとユキトさんもやってきた。


ライキ「なんで…ここに…」


アスト「ちょ…ちょっとまって…!今傷を治すから…!」


そう言ってアストさんはライキに近づく。そこで、俺はあることに気づいた。いつもつけている眼帯がない。それはそうだ。あの爆発を起こしたのがライキなのだから、眼帯を外してどうにかしたのだろう。


シュート(やっぱりあの爆発はライキがやったんだ…また…あんな選択を…させてしまった…)


アストさんがライキの治療を開始している。ライキは何度も俺を守ってくれたのに…。また俺は何もできない。気づけば俺は膝を地面に付けていた。


シュート(俺は…今まで何をしてたんだ…)


その瞬間だった。


アスト「あがっ!?」


突然アストさんが倒れた。


ユキト「ど、どうしたアス…」


ライキ「ガッ…アァァァァァ!!」


シュート、ユキト「!?」


ライキの目に、突如電気のようなものが走りだし、胸と目を押さえて苦しみ始めた。


ユキト「な、何だ!?部屋中に電気みたいなのが…!」


ライキの目はとてつもないほどの魔力を放っていて、人生で感じたこともない圧を感じていた


シュート(まさか…属性の目の暴走…!?)


どうやら先ほどの爆発で、魔力が暴走を始めてしまったようだった。このままだと、またあの大きな大爆発を起こしてしまう。


シュート「ま、まずい…ライキ!早く眼帯を…!!」


俺は急いで眼帯を探す。しかし、何故かどこにも見当たらない。


シュート(ど、どうして…爆発でどこかに飛んで行った…?)


ドクトル「ふふふ…ははははは……!」


その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


シュート「い、今の…声って…!」


ユキト「誰だ!」


ドクトル「くくく…まさか…自身の命を懸けてまで一矢報いようとするとは…驚いたよ」


ユキト「オルドフェクス研究員…!?あの爆発を受けても意識があるやつがいるなんて…!」


俺は一歩後ずさる。今までで1番会いたくなかった人。俺にトラウマを植えつけて、ライキを傷つけた人物がそこにいた。


シュート「ど…ドクトル…」


ドクトル「まさか君にも出会うとはね…シュートくん…本当に…君たちには、あの時みたいに驚かされる…」


ユキト「シュートはあいつのことを知ってるのか?」


シュート「あいつは…昔研究員に俺たちを拷問するように指示をした張本人です…!」


ユキト「あ、あいつが…!」


ドクトル「あぁ…いかにも、私が拷問をするように指示した張本人だよ…。君たちは…どうやってここが分かったのかな…?」


ユキト「答えるわけねぇだろ!」


ユキトさんは剣を取り出し、刃先をドクトルに向けた。


ドクトル「くくく…最近のガキというのは…本当に良い目をしている…。それよりも…今の君たちにはやるべきことがあるのではないかな?」


ドクトルはライキを指差した。今にも、ライキは力が暴走しそうになっている。もしこのまま大爆発が起きてしまえば、ライキも、俺たちも危ない。


シュート「っ!ライキ!」


ライキ「ウグッ…グアッ…」


シュート「が、眼帯はどこに…!」


ドクトル「それは…これのことかね…?」


そう言うと、ドクトルはポケットからライキの眼帯を取り出した。


ドクトル「つい拾ってね…これは大切なものかな…?」


ユキト「あ、あいつ…!」


シュート「なっ…!か、返せっ!」


ドクトル「ははははっ…!そう慌てるな…貴様らには…流石の私でもこれ以上は感情を抑えられそうになくてね。何度も何度も…この私の邪魔をしてくる貴様らには…ここで死んでもらおう。君たちの…大切な友達の手によってね!」


ユキト「そんなことさせるかよ!!」


その時、ユキトさんが剣を持ってドクトルに向かって走り出した。


ドクトル「おっと…それは無駄だよ。

闇魔法 シャドウバインド」


ユキト「うわっ!?」


しかし、ドクトルが魔法を唱えると、ユキトさんの影から黒い鎖のようなものがでてきて、ユキトさんを縛りつけてしまった。


ユキト「な、なんだこれ!?う、動けねぇ!」


シュート「や、闇魔法…!?」


ドクトル「私は闇魔法を扱うことができてね…少し妨害をさせてもらおう」


ユキト「くそっ…!」


ユキトさんは何とか動こうとするが、鎖は想像以上に硬く全く動けないようだった。


ライキ「ガッ…アアァッ!!」


ライキの暴走が少しずつ酷くなっていく。もう時間がない。


シュート(ど、どうにかして助けないと…!でもどうすれば…)


アスト「…宝…石よ…!」


その時、後ろから声が聞こえた。見てみると、倒れているアストさんの手の目の前に、綺麗な紫色の宝石が出てきていた。その宝石は、ライキの目から何かを吸い取り始めていて、その吸い取ったものはアストの体に入っていく。


アスト「うっ!?ぐっ…うぅぅ…」


シュート「ア、アストさん!?」


アスト「ごめん…ライキの電気を浴びちゃって…体がしびれて動けないんだ…」


シュート「そ、そんなことより何をしてるんですか!?」


アスト「一時的に…ライキの属性の目から魔力を吸い取ってるんだよ…。でも…かなり多くて…吸収が追いつかない…!」


シュート「そ、そんなことしたらアストさんも危ないですよ!」


アスト「僕は…大丈夫…!それよりも…シュート…!早く…あいつから眼帯を奪って…!」


シュート「お、俺が…」


ユキトさんは敵に捕まってしまい、アストさんは電気で動くことができない。動けるのは俺しかいない…。


アスト「確かあの魔法は…1人にしか使えることはできないはずだよ…!ユキトに魔法を使っている以上、シュートには使えないはず…!それに魔法を発動し続けないといけないから、あいつは今片手が使えない!」


シュート「そ、そうなんですか…?」


アスト「うん…!だから…早く…取り返して…!」


俺はライキを見た。アストさんが魔力を吸収してくれているおかげか、暴走が収まりつつあるが、それも長くは持たないはずだ。


シュート(俺が…あいつに…)


ためらいが出てしまう。本当に俺なんかでドクトルに敵うのだろうか。…無理だ、どうしてもあいつの顔をみると、あのトラウマがよみがえってくる。それに相手は悪魔魔法を研究しているやつらで、ドクトルはその中でも強い人物だった。


ドクトル「まさか…この魔法の性質を知っている者がいるとは思わなかった…。しかも…魔力を吸収することできる力があるとは…」


ライキ「グゥッ…ガアッ…!」


ライキは未だに苦しそうにしている。俺はそれを見て剣を取り出した。


シュート(お、俺が…やるしかないんだ…俺が…!!)


ドクトル「…はははは。そこの混合種ならまだしも…君に負けるとは到底思えない。今のこの状態でも…私は勝てる自信があるぞ!守られてばかりだった君がこの私に勝てるのかな?」


シュート「あ…あまりなめるなよ…あの頃の俺だと思うな!」


俺は剣を大きく振りかぶる。今のあいつは片手も使えず、爆発でボロボロのはずだ。このチャンスを逃すわけにはいかない。


ドクトル「…甘いな!」


ガシッ


シュート「な…そんな…!?」


ユキト「か…片手で受け止めた!?」


ドクトル「…迷いがありすぎる、未だに私に恐怖があるようだな。絶対に倒すという意思をこの剣から感じない…そのような太刀筋では私には敵わない!」


そう言うと、ドクトルの足に魔力がたまっているのが見えた。


シュート(まずい!?)


そう思ったのも遅く、ドクトルの強烈な蹴りを腹部に食らってしまった。


シュート「かはっ…!?」


ユキト「シュートっ!!」


強烈な吐き気に襲われる。そう思ったのも束の間で、俺の体は吹き飛んでいた。


ドゴーン!


シュート「ぐあっ…!?」


抵抗もできず、壁に大きく激突してしまった。頭がすごいふらふらする。視界もぼんやりしていて上手くドクトルの姿を捉えられない。


シュート(だ…ダメだ…やっぱり俺じゃ…)


ライキの爆発を喰らって弱っているはずなのに、それでもドクトルはユキトさんの動きを止めるほどの力があり、抵抗できる力がある。わかってたけど、やっぱり力量差がありすぎている。


ドクトル「…やはりガキだよ、シュートくん。君はあの時から何も成長していない。あの時も、君は何もできずライキくんに助けられた。そして今回も君だけ何もできていない。君は…ただ守られるだけの存在であり…弱者だ」


シュート「……」


何も言い返せなかった。結局俺には無理なんだと痛感させられた。俺は…弱い。弱い弱い弱い弱い…トラウマも乗り越えられず、何もできなかった。アストさんみたいな魔法の才能もない。ユキトさんみたいに勇気や強さもない。ライキみたいな…心の強さもない。


シュート(やっぱり俺は…よわ…)


アスト「弱くなんかないっ!!」


ユキト「ふざけんじゃんねぇっ!!」


突然アストさんとユキトさんが大きな声をあげた。アストさんからは想像もできない大声と、ユキトさんのその圧に、俺は驚いた。


アスト「お前みたいなひどい奴が…シュートを分かったように言うな…!シュートは勇気をだしてここまできたんだ…!それがどんな思いでここまで来たか知らないくせに…今までどんな思いをして…トラウマを乗り越えようとしたかも知らないくせに…!お前がシュートのことを語るなぁっ!!」


ユキト「…ふざけんなよ…!シュートの勇気を弱者だと…!!もう一度言ってみろ!絶対にお前をぶっ飛ばすっ!!」


シュート(アストさん…ユキトさん…)


2人はすごく感情的になっていた。俺のために、すごく怒ってくれている。


シュート(何で…俺なんかのために…)


ドクトル「ふん…動けない君たちが吠えても負け犬の遠吠えにしか聞こえないな。君たちは勇気をだして乗り込んできたようだが、君たちのそれは勇気ではなく、無謀だったのだよ。何でも勢いで乗り越えられると思わないことだ。少し勉強になったな」


ユキト「こいつ…!!くそっ…体さえ動いてくれたら…どうにかして解けないのかよ…!」


アスト「はあっ…はあっ…!ま…まだ…まだ吸収してみせる…!」


シュート「……」


ドクトル「諦めたらどうだ?君たちの実力ではどうしようもできないことは分かっているだろう?」


絶対絶命な状況だ。そのはずなのに、アストさんとユキトさんは頑張り続けている。


ユキト「…黙れよ!俺はまだ諦めてねぇ!!シュートとライキを酷い目に合わせたお前の思惑通りになるのがとてつもなく腹立つんだよ!!」


アスト「…諦めることはっ…簡単だよ…でもっ…ここで諦めたら…シュートとライキの思いを…壊すことになる…だから…絶対諦めない…!」


シュート(…あぁ…そっか…2人は…ずっと闘志を燃やし続けてるんですね…)


辛くても、勝機を見出せなくても、それでも2人は諦めてない。俺たちのことを思って、最後まで立とうとしてくれている。


それなのに俺は、1人で勝手に諦めている。トラウマが…実力が…そんな理由を言って、弱音を吐いて、結局弱いままでいようとしている。


俺は何のためにここにいる?助けてもらうため?


シュート(違う…)


無謀なことをするため?


シュート(それも違う)


また同じ過ちを犯すため?


シュート(違うだろ…!)


…俺は何のためにここに来た?


シュート(それは…)


シュート「ライキを助けるためだろ…!!」


俺は立ち上がった。再び、剣を持つ。そして、憎き宿敵を睨みつけた。


ドクトル「!?」


アスト「シュート…!」


燃やせ、闘志を燃やせ。諦めるな。俺がやらなきゃ誰がやるんだ。


シュート「うらぁぁぁぁっ!!」


ドクトル「特攻か…ムキになって突っ込む攻撃ほど簡単なものはないのだよ、シュートくん」


シュート「まだだっ…!」


剣を振る。また掴まれる。でも…それだけで終わらせない。ここから、またドクトルが足に魔力を込めようとする。でもその前に、俺がドクトルに蹴りを入れた。


ドクトル「ぐっ…!?こ、こいつ…!風よっ!」


シュート(ぐっ…か、体が…!)


その瞬間、俺の体は強風に吹き飛ばされた。そのせいで、剣から手を離してしまった。


ドクトル「剣は手に入れた…もう終わり…」


シュート「まだ…だぁぁぁ!!」


すぐさま地面に足をつく。すごい強風が吹き荒れて、足が止まりそうになる。それでも、俺は諦めない。一歩一歩確実に前に進む。これ以上止まり続けたくはなかった。昔は何もできなかったけど、今は違う。あの時みたいに守られてばかりじゃない。次は、俺が守ってみせる。


シュート(止まるな…!進み続けろ!今度こそ…進むんだ!変わるんだ!)


この時ドクトルは、初めてシュートに対して困惑の表情を浮かべた。何度も何度も立ちあがろうとするシュートに、驚きを隠せなかった。完全に心が折れたはずだ。もう動けないほどに。それでも立ち直り、再びドクトルの前に立ちはだかる。


ドクトル(なんなんだ…こいつは…!?)


シュート「ドクトルーっ!!!」


ドクトル「くっ…!?こ、こうなったら…炎魔法 ルインフレア!」


ドクトルが詠唱をした瞬間、黒い炎が瞬く間にシュートを包んだ。辺り一帯が炎に包まれ、シュートの姿は炎で見えなくなってしまった。


ドクトル「ふ…はは…!ルインフレアは炎魔法の中でも上級レベルの魔法…当たれば灰すらも残らない!昔のように弱い君ではどうしようも…」


ユキト「…はは、お前焦ったな」


ドクトル「…何?」


ユキト「知ってるか?戦場に立ったら、焦ったり、動揺したり…そんな隙を晒すやつからやられて行くんだぜ?」


ドクトル「はははは…面白いことを言う…。君は現実を見るといいさ。こうして、最終的には私が立っている。君の大事なお友達のシュートくんは、こうして私の炎で焼かれて…」


ユキト「お前は知らなかったんだよな、あいつの強さを…せめて、炎じゃなくて別の属性だったら良かったんだけどな」


ドクトル「…何の話だ?今、確かに私の魔法は彼を燃やし尽くしている。いくら炎に耐性があっても、確実に燃やし尽くす炎の魔法だ。さらにそこに風の魔法も加わって、火力も範囲も破壊力も段違いに上がっている。チリも残るわけが…」


ユキト「はははは…!じゃあ…教えてやる。もしそんなすごい魔法に当たったらよぉ…俺たちはもっと騒いでもおかしくないと思わないのか?」


ドクトル「…何………まさか!?」


シュート「でやぁぁっ!!」


俺は炎の中を思いっきり走り、ドクトルの前に姿をだした。それを見て、ドクトルが驚いた顔をする。


ドクトル「な、何!?な、なぜ!あの炎の中を平然と…!」


シュート「これが俺の能力だ!くらえっ!ドクトル!炎魔法 ブラストフレイムエッジ!」


炎の刃を複数作り出し、それをドクトルに向かって放った。


ドクトル「まさかユニーカーだったとは…ちっ、こんなもの…水で…!水魔法 アクアウォール!」


ドクトルは水の壁を作り、消火を図ろうとしたが、俺の炎は水を貫通した。避けようしたドクトルだが、とっさのことでうまく避けれず、炎の刃はドクトルの右腕に命中し、その腕を切り飛ばしてしまった。そのおかげで、ユキトさんにかかっていた魔法も解けた。


ドクトル「ぐああぁぁっっ…!?な、なんだこの火力は…こ、ここまでの火力…普通の子供が出せるわけ…!」


シュート「俺の能力、<炎の体>は炎系統の魔法を喰らった時、そのまま魔力を吸収して自分の力に変えれるんです。つまりここまでの火力がでてるのは、あなたのさっきの魔法の魔力が俺の魔力が上乗せされたからなんです」


ドクトル「ぐっ…ど、通りで…」


シュート「その腕は…俺とライキに今までやってきたことの仕返しです。そして…返してもらいますよ…ライキの眼帯を…!」


ドクトル「くっ…ま、まだ…だ!例え片腕がなくなろうとも…!」


ユキト「氷魔法 アイスロック!」


ドクトル「なっ…!?これは…氷!?」


その時、起き上がって逃げようとしたドクトルの足から氷が現れた。みるみるうちに足を包み、ドクトルは完全に動けなくなってしまった。


ユキト「アストに頼んで魔法の練習をしていて良かったぜ…さっきはよくもやってくれたな…これはお返しだ…!」


ドクトル「こ、こんなもの…私の炎で…!」


ユキト「おそいんだよっ!」


ドクトル「なっ…!」


ユキトさんはドクトルの手からライキの眼帯を取り上げた。


ユキト「受け取れシュート!」


シュート「はいっ!」


そう言って、ユキトさんは俺にめがけてライキの眼帯を投げた。俺はそれをキャッチして、急いでライキの目につけに行った。


ライキ「…っはぁ…はぁ…」


アスト「うぅ…」



バタッ



眼帯をつけた瞬間、目の暴走は収まったが、2人は倒れてしまった。


シュート「ら、ライキ!アストさん!?いたっ…!?」


俺は2人を起こそうとするが、体を触った瞬間、手にバチっと電流が流れたような痛みに襲われた。おそらく、雷の魔力が魔法として放出されなかったため、その分の魔力が電気となり、体から抜けようとしているのかもしれない。


シュート(いたた…これじゃあ、起こすどころか触ることすらできない…ど、どうしよう…)


ユキト「大丈夫かシュート?」


シュート「あっ!ユ、ユキトさん!その…2人の体に電気みたいなのが流れてて触れないんです…」


ユキト「うおっ…確かにすごい電気の量だ…これはしばらくは動かせないかもな…」


シュート「そう言えばドクトルは…?」


ユキトさんが氷漬けにしてから声が聞こえなかったので、ユキトさんに聞いてみた。


ユキト「ん?あぁ、あいつなら氷漬けにしても炎で溶かそうとしてきたから、氷ごと投げて気絶させておいたぜ。ほらそこで伸びてるだろ?」


シュート「あぁなるほど…通りで…えっ…氷ごと…投げた?」


ユキト「ん?そうだぞ?」


俺は振り返ってドクトルの方を見た。そこには足元に大きな氷をつけて仰向けに倒れているドクトルがいた。すっかり伸び切っていて、明らかに気絶している。


シュート「えっ!?い、いやあの氷かなりデカくないですか!?オークぐらいの大きさはありますよね!?あれを投げたんですか!?」


ユキト「おう、あれくらい軽い方だろ?」


シュート「えぇ…」


シュート(お、俺が苦戦した相手をこうもあっさり…)


アストさんから、「ユキトはホントに力が強すぎる…」とか言っていたのを聞いてはいたが、強いとかいう次元ではなかった。竜と狼の力があるとはいえ、さすがに力がありすぎる。とはいえ、ドクトルにこれ以上暴れられても困るのでこれで良かったのかもしれない。


ユキト「まぁあれくらい大丈夫だろ。しばらくは目を覚さないはずだしな」


シュート「そ、そうですね…とりあえず…どうしましょうか…」


ユキト「外はもう暗いはずだ。今帰ろうとしても、森の中で迷子になったりモンスターに襲われるかもしれない。しかもこんなところに助けが来るとも思わないしな…。仕方ない、ここで1泊するしかないかもな。ここなら雨風も凌げるし」


驚きのことを言ってきたユキトさんに俺は思わず聞き返した。


シュート「こ、ここで1泊するんですか!?」


ユキト「しょ、しょうがないだろ…?かなり奥深くまで森に入ってきたからな。しかもここは地下だ。モンスターが来ても足跡が響くからすぐに気づけるし、安全な場所でもあるんだよ」


シュート「で、でも…ここはここでオルドフェクスが…」


ユキト「大丈夫だ。こいつらは全員牢屋に入れておくぜ。いくら使われてないって言っても、あの牢屋はかなり頑丈そうだしな。こいつらでも壊せないはずだ。そして朝になったら、ギルドとかに頼んでひっ捕えてもらえばいいんだよ」


シュート「わ、分かりました。ユキトさんがそう言うなら…」


正直俺はオルドフェクスの近くで過ごすことが嫌だったが、ライキとアストさんの状態が悪いのと、ユキトさんがいるからなんとかなると思い、俺はユキトさんの提案に乗ることにした。


ユキト「決まりだな!じゃあシュートは2人の側にいてくれないか?俺はここにいるクソ野郎共を全員牢屋にぶち込んでくるぜ!」


シュート(く、口悪い!?)


そう言って近くにいたドクトルを含め、6人くらいの研究員を軽々と持ち上げてユキトさんは行ってしまった。少し前から思っていたがユキトさんは悪いやつに対しての対応がすごく適当にしている気がする。もしかしたら内心ではかなり怒っている…というか今もかなり怒っているのかもしれない。


シュート(相変わらずの力持ちだなー…)


シュート「ふぅ…」


俺は2人の側に座った。そして、自分が繰り広げだ死闘を思い返す。


シュート(勝てた…俺でも…)


昔は何もできずに、ただ見ていることしかできなかった。あの時もライキを守ることができず、むしろ守られる側だったはずの、あの俺が…ドクトルとの真っ向勝負に勝ったのだ。


シュート「…俺…強くなれたかな…?」


俺は誰にも聞こえない声で呟いた。


ライキ「…お前は充分強いさ」


シュート「えっ…!?」


帰ってくることのない返事が聞こえ、俺はすぐ振り向いた。すると、ライキが体を起こして俺の方を見ていた。


ライキ「なんだよそんな顔して」


シュート「ら、ライキ…!?い、いつから起きてたの!?と、というか…聞こえてた…?」


ライキ「俺は犬の獣人で耳がいいのは知ってるだろ。ちゃんと聞こえてたさ。いつ起きたのかは…ずっと…だな。あまりの激痛に何度か気絶しかけたけど、アストくんのおかげで何とか耐えてたんだ」


俺は聞こえてたのが恥ずかしくて、顔を手で隠して、そのまま背けてしまった。自分でも顔が赤いのが分かる。


シュート「も、もう体は大丈夫なの?」


ライキ「あぁ、電気は体からとっくに抜けた。多分アストくんもそろそろ電気が抜け切るはずだ。それより…いつのまにそんなに強くなってたんだよシュート、びっくりしたぞ?」


シュート「えっ…み、見てたの?」


ライキ「あぁ…頑張って耐えながら…ずっとシュートのことを見てた。あのドクトルに真っ向から勝とうとしたお前をな。最後のあの魔法は教わったやつなのか?」


指からこっそりライキの方を見る。すごく落ち着いていて、優しく微笑んでいた。


シュート「う、うん…学園に来てからアストさんに魔法を見てもらってたから…いろいろ教わったんだよ」


ライキ「そうなのか…すごいなアストくんは、勉強だけじゃなく、魔法もできるとか羨ましいな」


ライキはそう言ってアストさんの方を見た。すると、アストさんは少し縮こまっていた。どうやら夜になったのでかなり部屋の気温が下がってきているようだ。俺たち獣人は体温が高いため大丈夫だが、アストさんは人間なので、この寒さだと風邪を引くかもしれない。すると、それを見たライキはアストさんの上に自分の羽織っていた服をかけた。


アスト「…んぅ」


ライキ「寒くなるだろうし…ボロボロになったけどないよりはマシだろ…おっと…」


ライキは立ちあがろうとするが、体がすごくふらふらしていて、今にも倒れそうだった。


シュート「ぜ、全然大丈夫じゃないじゃん…!早く横になりなよ!」


今すぐにでも支えてあげたかったが、俺もボロボロになっていて、上手く体を起こせなかった。


ライキ「大丈夫…な訳ないよな…。1度死にかけているし…暴走したせいで反動もすごい来たから、動けそうにもない…はは…正直、立つのもきついな…」


シュート「そ、そりゃそうだよ…!あんな無茶をして…と、とにかく後はユキトさんがやってくれると思うから、ライキは早く横に…」


言い終わる前に、ライキは俺の唇に人差し指を当ててきた。咄嗟に俺は黙ってしまう。


ライキ「分かってるさ、でも今は少しシュートと話がしたかったんだ」


シュート「お、俺と…?」


ライキ「あぁ…実は俺さ、この学園を卒業したら、この大陸を出て、旅をしようと思うんだ」


シュート「えっ…えええぇぇ!?」


研究所に俺の声が響き渡った。

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