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27匹目:ラストダンスはお菓子を食べながら見守る所存 10

レオナ先輩の寮服SSRが出てくれたので遅くなりました


ダンスミュージックがゆったりとしたものへと変わり、周囲のざわめきも自然と落ち着いていく。


なぜこんなハッピーな空間でどんよりと暗いオーラを発するマーサの相手をしているのだろうか。周りの空気に釣られてうっかり気持ちを落ち着かせてしまったジェマは、涙を零すマーサに冷たい視線を送っていた。


一言で泣くと言っても色々あるのだなと少し現実逃避する。


アンジェリカは泣いていても品があり、リリアンが泣く姿は思わずお見事と言ってしまいたくなるような愛らしさを兼ね備えた魅せる泣き方だった。最終的にはそんなものもすべてかなぐり捨てて吠えていたけれど。


今目の前で泣いているマーサは、悲壮感はあるがつい同情してしまうような儚さはない。泣かせた本人であるジェマが言うことでもないが、この空間で普通に泣かれても対応に困る。



こういうところがリリアンは許せてもマーサは許す気になれない一因なのだろうななどとひどく失礼なことを考えながら、ジェマはぺろりと唇を舐めた。



「……そこで泣いててもわたしは慰めないから。どうするかは自分で勝手に決めて。わたしは別にお前がどうなろうとどうでもいいし。後見人に報告はするけど」


「そ、それは困るっ。な、なん、なんで、あたしばっかり」



同じ平民だからとあまり舐められては困る。リリアンの薬の一件は結構大事になったのだ。そのリリアンを唆したことを自ら白状しにきたくせして、ごめんねで済むわけがない。


汚く鼻をすするマーサの言い訳は無視して、ジェマは遮るように大きなため息を吐いた。



「あたしばっかりって。今更そんなことを言うくらいならグレーな薬なんて使うなよって話でしょ。貴族相手にあんなの使ったら怒られるって初めからわかってることじゃないの?」



リリアンといいマーサといい、なぜ自分だけが理不尽に責められているかのような被害妄想をするのだろうか。ジェマからすれば問答無用で退学にされたって文句は言えないくらいのことだと思うのに、どう考えたら普通に許されると思えるのだろうか。


もう無視して立ち去ろうかと1歩踏み出したとき、あぁとジェマは思い出した。


それもこれもゲームとやらのせいか。いやきっとゲームには罪はない。じとっとマーサを見遣って眉を顰める。



マーサは直接高位貴族と接する機会がなかったから余計に現実味がなかったのかもしれない。リリアンほど夢を見ているような雰囲気は感じたことがなかったが、マーサはマーサで現実を生きていなかったらしい。


あの馬鹿に要らない入れ知恵をしておいてずっと他人事だったとでも言うのか。


アンジェリカに余計な入れ知恵をしたジェマはあれだけきちんと責任を取ったというのに、1人だけ『別にあたしは関係ないけど後で恨まれても嫌だし一応謝っておくか』とでも言わんばかりの態度でごめんの一言で許すわけがない。


まだ初めてのお茶会が予想外の方向に滅茶苦茶になったことをちょっと根に持っているジェマは、八つ当たりだとわかっていてマーサを睨みつけた。



「どうしてあんな薬をアレに渡したのかはどうでもいいけど、大公令息に薬を盛る手伝いをしたんだから相応の責任は取りなよ。わたしだってあのクッキーのせいでちょっと具合悪くなったんだからな。なんかごめんねで許す気はないから」



べぇっと舌を出して、ジェマはマーサを置いて歩き出した。


マーサが人目も気にせず泣いているせいで少し注目が集まっていた。面倒くさいなとため息を吐きながらスタッフ役の女子生徒に声をかけ、マーサを預ける。



空いたシャーベットのグラスとスプーンを片付けて、新しい皿にチーズケーキばかりをぽんぽんと盛り付けていく。こういう場では皿にいっぱいに盛りつけることも山盛りにすることもマナー違反だ。けれどもうそんなことを気にするのも馬鹿馬鹿しく思えてきた。


普段から適度にマナーを守りつつ適当にのびのびと生きているジェマだが、もうその程度のマナー違反で叱られたとしても痛くも痒くもない。そんな気分だった。端的に言えばやけくそというやつである。


もっくもっくと頬にチーズケーキを詰め込んでいると、ジェマとは正反対にほくほく顔のクロエが戻って来た。不貞腐れているジェマを見て首を傾げ、その手にあるチーズケーキが山盛りの皿を見て苦笑を零す。



「あなたねぇ、こんな目出度い日に何してるの? 長くならないなら話を聞いてあげても良いわよ?」


「どうせネタにするんでしょ」


「そりゃするわよ。あなたみたいにただ話を聞いてあげるだけなんて人、セラピストか聖職者か他人に興味のない変人だけよ。ほら、なんでもいいから話してごらんなさいな。せっかくの美味しいケーキが台無しになるわよ」


「むぅ」



さらにいっぱいに膨らませた頬をクロエに見せつける。くすくすとご機嫌に笑うクロエに釣られてぎゅっと寄っていたジェマの眉根も緩み、差し出されたジュースを呷って息を吐いた。






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