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27匹目:ラストダンスはお菓子を食べながら見守る所存 8




「それ、ノーマルエンドのドレスでしょ? わた、リリアンが攻略しようとしてたから、それでジェマちゃんは攻略できなかったんでしょ。その、なんか、ごめん」



マーサもリリアン物語を共有していたのだったかと思い出して、返答をせずにスプーンを咥えた。


ノーマルエンドとは誰とも恋愛関係に発展せずに終わる話だとリリアンが言っていたのを聞いたことがある。たしかに今の状況を見れば、ジェマは誰とも恋愛関係にないので間違ってはいない。


だがそれはリリアンのせいではない。リリアンがいなくても、ジェマはわざわざ高位貴族に手を出そうとはしなかっただろう。


ルシアンだって、初めはリリアンのことを相談するために【幸運の猫】の元へ来たのだ。むしろルシアンはリリアンのせいでジェマに興味を持ったとも言える。もしリリアンが攻略を行わずルシアンに不気味なちょっかいを出さなかったら。ルシアンが頻繁にジェマの元へ来ることもなく、恋愛感情が芽生える可能性も低くなっていたかもしれない。


リリアンの語る物語の中のジェマと実際のジェマでは生活環境も性格もまったく違う。リリアンが何もしなくても、リリアン物語のヒロインとジェマが同じことをしたとは思えない。



もうひと口シャーベットを口に突っ込んで、ジェマは息を吐いた。


頭が混乱していたせいでごちゃごちゃと余計なことを考えてしまったが、それはともかくとしてマーサに恋人ができなかったことを憐れまれていることが腹が立つ。


なぜ自分がこんな思いをしなければならないのか。一周回ってイライラしてきたジェマは、取り繕うこともせずマーサを睨みつけた。



「別にわたしに恋人ができようができまいがお前たちに関係ないでしょ。いい加減鬱陶しいんだけど、何がしたいの?」


「え、いやなに。そんなに怒るならもっと頑張れば良かっただけじゃん……。これマジで怒られるパターン……? やばい、マジでやりすぎたんじゃないの?」


「わざわざ喧嘩売りに来て何言ってるの? お前たちの方から絡んでこなかったらお前たちのことなんてどうでもいいんだけど」



どうでもいい、と呟いて、マーサはぱちぱちと瞬きを繰り返した。まるで何を言っているのかわからないとでも言いたげな顔をしているマーサに、ジェマは大きなため息を吐いた。


なぜジェマがマーサに赦しを与えなければならないのか。


マーサがリリアンにどんな入れ知恵をしたのかは知らないが、悪いことをしたと思っているのならば勝手に反省すれば良い。自分たちのせいでジェマに恋人ができなかったことを謝りに来る意味がわからない。それが喧嘩を売る以外の何だと言うのか。


気持ちを落ち着かせるために冷たいシャーベットを口に入れて、するりと零れそうになった罵声を呑み込む。


いつもの湖ならば遠慮なく言い返していただろうけれど、ここは楽しいパーティー会場だ。周囲を見回せばあちこちでバチバチと火花は散っているが、自分が揉め事を起こす気はない――これ以上問題を起こせば、冬季休暇はまた淑女教育をみっちりと詰め込まれてしまう。


一息吐いて、ジェマはゆっくりと口を開いた。



「……あなたが何をしたのか、何を反省しているのかは知らないけど、わたしはあなたを楽にするために赦しを与えるつもりはない。反省したいなら自分で勝手にやって。わたしに悪いことをしたと思ってるなら、もう関わらないで」


「そ、そんなに怒る? やっぱりリアルの好感度アップアイテムはまずかった? ヒロインが使うはずの攻略対象者用好感度アップアイテムを他人が使うとヒロインの好感度が下がるとかそういう仕様だったりするわけ? そんな絡んでないのに嫌われてるってリアルだとそうなくない? あたしがリリアンに味方したからってこと? そんなに怒らなくってもいいのに。だからちゃんと謝りに来て」



瞬間的に湧いた怒りのままに口を開きかけたジェマだったが、きゅっと眉根を寄せて動きを止めた。


必死に言い募るマーサの言葉をひとつひとつかみ砕いていく。



「…………お前があのクッキーと香水を作らせたの?」



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