表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/32

ダラダラっと第十九回!

「ある貧しい村に少年がいた。その少年の家は貧しかったが、その少年は信じていた…自分が畑仕事を頑張って収穫量が増えればきっと今より生活が楽になると。だが、現実は少年が考えるより過酷だった。少年が頑張って増えた収穫量の分は…そのまま領主のものになった。それでも少年は諦めずに頑張った…いつか、何かが変わると信じてな」


 ジェストは救いのない話だと言っていたけど…これってやっぱり…


「だが、何も変わらなかった。頑張っても頑張っても領主が得をするだけ…それでも、少年は諦めなかった。だが…少年が青年となった頃、さすがにしびれを切らして少しはこちらの取り分も増やしてくれ領主に迫ってしまった」


 それは仕方ないと思う。頑張っても頑張っても…何もしてない人が得するだけ何て間違ってる!


「そして、その次の収穫の後…事件は起こった。その村が…盗賊に襲われたんだ。その青年の家族も被害を受けた…両親はころされ、唯一の身内になった妹はさらわれてしまった」


「そんな!?」


「どうした?ここからが面白くなるんだぜ?もうちょっと静かに聞いてくれよ?」


「すみません…」


 自分の過去の話じゃないのかな?随分落ち着いて話しているけど…


「青年は絶望しかけた、必死に頑張ってきたことが僅かな時間で全て奪われてしまったのだからな。だが、最後の希望を託して領主に願い出た、妹を助けて欲しいと。すると、領主はすぐに盗賊の討伐隊を結成し直ぐに送り出した。異例の早さだったと言う話だ」


「そして、すぐに盗賊団は壊滅し妹は助け出された。青年は思った、これは頑張った自分に領主が報いてくれた結果だと、妹が生きていてくれただけで最悪は逃れられた。これからは妹のために頑張ろうと。・・・しかし、その後すぐにその青年は頑張る理由を失うだけでなく、世界に失望してしまう事になる」


「え…?」


「青年の妹は、助かってなどいなかった…。生きる気力を失うほどに弄ばれていたんだ!!」


「!?」


 一瞬だけど、ジェストに憤怒の形相を見た…。やっぱり、自分の事なんだろうな…


「妹が帰って来てからわずか数日後…妹は最悪の選択を選んだ…自ら命を絶ったんだ。しかし、妹の残した手紙で青年は真に絶望することになった。そこにはこうあった…自分をさらいおもちゃにした真の犯人は領主だと…そして、その原因は青年が取り分を増やせと文句を言ったことに腹を立てたせいだと…」


「そんな下らない理由で…?」


「そうだ。そんな下らない理由で、盗賊を使って俺の両親はおろか村人を何人もころし、さらに口封じで盗賊をみなごろしにし、さらに…妹を弄び…いや、妹もころされたと言って良いだろうな。そして、その全ての原因の元が…青年が文句を言ったせいだった」


「違う!そんなことで人の運命を弄ぶ領主が可笑しいだけ!その青年は悪くない!!」


「そうか?そうだとしたら、その青年は何も悪くないのに、家族を全員失った事になるが?」


「それは…」


「そう言う事だろ?そして、その青年は全てに絶望し…復讐者になった。領主の隙をつき…ころした。それから、手配され逃亡生活を送るうち生きるために盗みに手を出し、暴力に手を出し、どんどん堕ちて行き…最終的には、自分の家族の命を奪った盗賊の頭にまで堕ちて行った」


 僕は、今聞いた話を否定したくて耳を塞いで顔を振った。何処かで起こった悲劇の話ではなく…目の前の底辺まで堕ちた男の実体験を聞かされて…悲しいとか苦しいとかそんな感情でもなく、ただただそんなはずはないと否定したくなった…。簡単な話だ、何処かの話だから受け入れられても、目の前の男の実体験の話しすら受け入れる覚悟すら、僕は持っていなかったんだ…


「最後に、おまけの救いのねえ話としては…領主が殺されたある地域では…その息子がそのまま後を継ぎ、同じような事をしているそうだ…めでたしめでたしだろ?」


「作り話…なんでしょう?そう言って下さい…」


「ああ…そうかもな?でも、何でトワはそんな作り話で泣いてやがるんだ?」


「私が勝手に思い描いたその少年の未来のせいです…。その少年は今でも自分を責め続け、自分なりに周りの仲間を守ろうとしてるんじゃないかって…そう、勝手に思ってしまっただけです…」


「面白い想像だな?盗賊の頭に堕ち、人を殺して好き放題やっているその男が…本当は未だに苦しんでいるんじゃないかって…?世界に絶望したその男が?面白い解釈しやがるな。本当に、お前は面白い奴だよ…」


「何で私にそんな話をしたんですか?暇つぶしならもっと他の話もあったはずなのに…」


「さあな?そっちで勝手に解釈してくれていいぜ?」


 その解釈の選択肢が多すぎるんだよ…


「で、こんな話を聞いた後でも真っ当に生きろと言うのか?バカ見るだけかもしれないってのにだぜ?」


「少なくとも、その話の人物はもう一度やってみるべきだと思います」


「・・・どうしてそう思うんだ?」


「それは、昔失敗した時は一人で頑張ってしまったからです。その人が家族に…村全体に話をして何かをしていれば…違う結果を得られたかもしれません。もちろん、仮定なので変わらなかった可能性だってあります。でも…一人で頑張るのは限界があると思うんです。だから、その人はもう一度、今周りにいる人たちと試してみるしかないと思うんです。そうしないと、きっとその人は過去に捕らわれたまま…世界を憎んだまま進めないと思うんです」


「一人の限界…か。確かにそれはあるかもしれないな…。だが、全ては遅すぎるんだよ」


「そんなことはありません!貴方はまだ、怒りや悲しみが残っています!本当に絶望しきったらそんな感情なんて残っていません!まだ…まだジェストさんなら出来るはずです!!」


「何をそんなに必至になっているんだ?俺はお前を辱めてころそうとしてたんだぞ?それにだ、盗賊の…しかも、頭にそんなチャンスなんてものはもう巡ってはこないだろうさ…」


「本当にやり直す気があるなら、私も頼み込んでみます!もちろん、過酷な条件が付くかもしれませんが…それでも!!」


「本当に分からねえ…。トワ…何でお前はそこまで…」


「どういう事だ?私は、トワを連れて来いと言っただけだぞ?楽しくお喋りして待っていろとは言った覚えはないんだがな?」


「すみませんね、ドルドーニュさん。こんな美しい女性と話す機会なんてないもんで…少し、世間話をしてしまっただけですよ」


「ふん、私が見初めたんだから美しくて当たり前だろう?しかし、盗賊風情が余り近付くなよ?私のトワが穢れたら一大事だからな」


「ええ…分かっておりますとも」


 この会話だけで、ドルドーニュがジェストをどう思っているか分かるなぁ。でも、それよりも…


「私は、貴方のものになった覚えはありませんよ?」


「ここまで大人しくついて来たんだろう?それが答えではないのか?」


「無理やり見たいなものですよ。逃げようとしたら、そこのジェストさんに気絶させられて運ばれたでしょうからね…」


「そんなことはしなかったはずだ、私は丁重に連れて来いと言ったんだから…そうだろう?ジェスト」


「ええ、なるべく説得しようと思ってましたよ…なるべくはね」


「そう言う事だ。私は、トワ…お前を大事に思っているんだぞ?そんな乱暴な手段を取るわけないだろう?」


「物は言いよう…結果論ですね。どちらにしろ、ドルドーニュさんの妻になるのはお断りします」


「何故だ?私の所にくれば、あんな連中と危険な旅をすることもなく、そこのジェストのような盗賊に襲われることもなくなるんだぞ?それに、欲しい物を何だって買ってやるぞ!」


「・・・そのお金は、町民の皆さんが必死に働いた税金でしょう?ドルドーニュさんは、それをそんな仕様で使って何とも思わないんですか?」


「町を運営するのにはハッタリも必要なのだ!私は、町の早朝である長だぞ?私が贅沢をしていると言う事は、それだけ発展している証になるんだ!それが人を呼び、延いてはさらなる町の発展のためになるのだ!」


「屁理屈を考えるのだけは上手いようですね…」


「残念だ…なるべくならトワ…君自身の意志で私に嫁いでもらいたかったんだが…どうやら、周りに居た連中に色々毒されていたようだな?教育する時間が必要なようだ」


「!?」


 な、何…?今、一瞬全身を駆け巡るような悪寒が走った…?思ってる以上に、このドルドーニュと言う男は危険な人物なのかもしれない…。従順な振りをした方が良かったかな…


「その前に、ジェスト…お前の飲みたがっていた酒だ!有難く思うがいい」


 そう言って、小さなひょうたんをジェストに投げた。言葉から察するに、酒が入ってるのかな?


「…ありがとうございます、早速頂きますよ」


「好きにすると良い。…トワよ、お前は私がただの何も出来ないぼんくら貴族か何かだと思っているのだろう?だがな…」


「ごぼぁ!?ど、ドルドーニュ…き、きさまあ!?」


「どうだ?毒入りの酒の味は?格別だっただろう!!本当はどこか別の所で始末する予定だったが…トワの教育に使おうと思ってな…多少し期が早くなったが…文句はトワに言うんだな?」


「な、何をしてるんですか!?人の命を何だと思って」


「トワ…お前も私を不快にさせ続けたらこうなるぞ?分かったな?」


「ひっ!?」


 何…これが人が人を見る目!?な、何て冷たい目で僕を見るんだ…こんな恐ろしい男だったなんて…


「どいつもこいつも私をバカにしやがって!私はそこらのただのぼんくら貴族どもとは違う!!命令するだけではなく、自分の手を汚す事すら厭わない!もとより、命とは私のためにあるのだ!故に、私に直接奪われる奴は幸福ですらあるのだ!!」


 狂ってる!?こんなのが町の長なんて…絶対に、居座っちゃいけない人物だよ!!


「トワ…お前は私のものだ。私の言う事だけを聞いていれば良いのだ。そうすれば、贅沢な暮らしが出来るんだぞ?それ以外にはもう道はないのだ!分かったな?」


 怖い…!?反論しないといけないのに…拒絶しないといけないのに…!?なのに、言葉が出てこない…この人の冷たい瞳が僕の否の感情を言わせてくれない…。怖い…逆らってはいけない…そんな感情ばかり湧いてくる…


「おっと?少し怖がらせ過ぎたか?まだ少女だったな…もう少しゆっくりと教えてやらないといけないな、色々とな?」


 そう言って、ドルドーニュは僕に手を伸ばして来た。逃げるとか手を払いのけるとかそんな考えは浮かばずに、僕は一言だけ浮かんだ言葉を発するのがやっとだった…


「誰か…助けて!?」


「おや?誰に助けを求めたんだ?ここは私の屋敷だぞ?誰も来るはずがないだろう?」


 そう言って伸ばして来た手が僕の腕をつかんだ瞬間…


「ところがどっこい!助けが来たりするんだよな!!」


 そう言って、扉をけ破って来たのは…何と、ギュネスさんだった!?そして、他の皆も!?


「ギュネスさん!?みなさん!!」


「トワ…無事か?」


「何とか間に合ったようだね」


「この豚野郎…トワを泣かせるなんて許さねぇ!!」


「ハルト…怒りの余りキャラが変わってない?」


「とりあえず、この豚ころして良い?殺して良いよね?」


「いや…さすがにいきなりそう言うのはまずいからね?」


「そう言いつつ、ルーファスも剣に手をかけているけど?」


「まあ…トワちゃんのこんな恐怖に引きつった表情を見せられればね…僕は結構温厚な方だけど…さすがにね?」


「お前らに任せたら大惨事になるだろ?ここは、俺がきっちり…しなない程度に地獄に落としてやる!!」


「しなないのに地獄って…余計に怖いですよ…?」


「トワ…本当に大丈夫?怖かったよね…」


「…大丈夫です、ありがとうございます。約束を守ってくれて!」


「本当に…いきなりだったからびっくりしたわ。だけど…うん、お陰でトワの事を好きになれたかも?これからよろしくね♪」


「こちらこそです♪」


「貴様ら!私の別荘に無断で侵入して上に、勝手に助かったと思っているのか!?これがどれだけの罪か分かっているのか!?ただで済むと思うなよ!?」


「おやおや、ドルドーニュ町長?言葉と顔が歪んでおりますよ?」


 ニヤニヤ笑うギュネスさんを見ながら…これからどうするんだろう?とか、他人事のような事を頭に浮かべて、僕はもう助かったと安心しきっていた…

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


何作も同時は…やはりきついです…。もう少し頑張らないと…(汗


次話もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ