ダラダラっと第十八回!
「う~ん…さすがにこれはベタ過ぎて釣れないんじゃないかな?」
そう愚痴をこぼす僕だけど、いい策が思いつかなかった自分にも責任があるのは分かっているので…
現状を説明すると、僕は今現在意味もなく所謂裏路地のような人気のない道を歩いている。まず、すぐにドルドーニュが動くか分からないし、こんなベタな囮作戦が通用するか分からないけど…とりあえず、やってみようと言う話に落ち着いてしまった…。メンバーを見れば何となく想像出来るよね?
もちろん、遠くからこっそりルーファスさんと、マリーお姉ちゃんがついて来ている。別々に付けているとの事だけど…何となく心配になるんだよね…普段の二人を見てると…
他のメンバーは尾行は苦手だからと断られた。もちろん、いざと言う時動ける位置に待機してもらってるけどね?それに、尾行の人数が増えるとバレてしまうリスクも上がるから仕方ないのも事実だけど…二人の自信がたっぷり過ぎて逆に不安になったんだよね。実力は確かなのは間違いないんだけどね…
現在、1時間くらい経過したと思う。その間に何人かに声を掛けられたけど、残念ながらドルドーニュとは無関係だった。それに…マリーお姉ちゃんの反応の速さ…びっくりしたよ。声を掛けられたと思ったら、相手が組み敷かれていて…ついでに、脅されていたんだから…
相手の男は、軟派目的で私に声を掛けただけだったようで…マリーお姉ちゃんのころすぞ?に近い剣幕に震えながら答えていた。ちょっと可哀相だったよ…
そんなわけで、現在何の成果もなく歩いている状態だけど…これ、切り上げた方が良いんじゃないかな?物は試しにしても酷すぎる作戦だと思うんだよね…。これ以上続けても、軟派男?の犠牲者が増えるだけな気がするよ…僕に声を掛けてくるだけでアウトな気もするけどね…
「よお?また会えたな?トワって言うんだろ?」
声を掛けてきた相手を見て、僕は固まった。だって…
「お頭さん!?何でここに!?」
「…お頭さんはやめてもらおうか?俺の名は、ジェストだ。覚えておきな?」
「そのジェストさんが…何でここにいるんですか?」
「何となく察しが付いているんじゃないか?」
「やっぱり…裏でドルドーニュ町長とつながっていたって事ですね?」
「さあなあ?たまたま逃げ出しただけかもしれないぜ?」
「それなら、何故私の居場所がすぐに分かったんですか?」
「そう言うたまたまもあるってこったな」
「なるほど、何かあった時はそうなるわけですかね…」
「まあ、一緒に来てもらおうか?安心しな?一緒に来てくれさえすれば、俺は何もしないぜ?」
「何も出来ないの間違いですよね?」
「さあ?どうだろうなあ?」
さっきからニヤニヤしてこちらを見てるけど…何かあるの?大体、マリーお姉ちゃんが飛んでこない時点で何かあるとは思ったけど…ルーファスさんも…?と言う事は…逃げても無駄かな…?
「…分かりました、付いて行けば良いんですよね?」
「話が早くて助かるな。頭の良い女は好きだぜ?」
「お頭さんに好かれても嬉しくないですけどね」
「…中々度胸が据わってやがるな。ますます気に入ったぜ」
こちらを興味津々に見ているが、どうやら本当に手をあげるつもりはないみたいだ。僕が大人しくついて行くと言ったからだろう。でも、もし逃げようとすれば気絶させられて終わり…注意しないと…
「どこに向かっているんですか?」
「何か仲間に場所を教える目印でも残そうってか?止めておくんだな?俺が見逃すはずないだろ?」
「・・・大人しくついて行くだけですよ」
さすがは僕の不幸スキルって事かな?でも…みんなを信じたんだから…今更取り乱す訳にはいかないよね…?
「…残念だな?時間があれば泣かせてやるんだがなあ!」
「急がないといけないんですか?」
「そう言うこったな?依頼主様は、どうやらせっかちなようでな?まあ、精々可愛くじゃれ付いて可愛がってもらえるように尽くすんだな」
「そう言うのは苦手なので遠慮したいですね…」
「はは!じゃあ、逃げてみるか?俺は、鬼ごっこは得意だぜ♪」
「私は苦手なので遠慮します…」
「そりゃあ残念だな!」
わざとらしく笑うジェストを見ながら僕は考えていた。逃げるのは難しいけど、何とか居場所を知らせる事は出来ないだろうかと。恐らく、連れていかれるのはドルドーニュがいつもいる場所ではないだろう、と言う事は…人が余りよりつかない場所だろうか?それとも…
「こいつに乗れ、無駄な抵抗はするなよ?」
「馬車…これは、本当に絶対絶命みたいですね…」
「今更だろう?俺が姿を堂々と見せた時点で気が付くべきじゃないか?」
「…その通りです。お別れの挨拶くらいはさせてくれても良いのではないですか?」
「バカな事を言うなよ?あのルーファスって奴の速さは異常だ。正直、何度やっても勝てる気がしねぇ…二度とやり合うのはごめんだぜ?」
「でしょうね…私何て、目で追う事すら出来ないんですから…」
「何にせよ、トワ…お前にはこれに乗る選択肢しかないんだぜ?さっさと乗りな?」
時間稼ぎしたいけど…このジェストって男…盗賊の頭だっただけあって結構頭が回りそうだし…下手な事したら本当に気絶させられて終わりなんて事になりかねない…乗るしかないよね…
「分かりました、乗ります…」
「それで良い…ったく、本当に肝が据わってやがるな?あの豚には勿体ねぇ…っと、今のは内緒だぜ?」
「さて…どうしましょうか?」
まあ、僕の場合は肝が据わっていると言うよりは…何処に行っても付きまとって来るスキルと言う解りやすい不幸があるからね…逆に、この程度で根を上げていたら生きていけないんだよ…多分ね?
元々、前の世界でも真剣に生きてなかった僕だ、今の状況も何処か映画のワンシーンの様な気分でいるんだと思う。でも、だからこそ諦めずに行動出来るって言うメリットもあるよね?まあ、今回はその他にもあるんだけど…
「私が貴方の女になるから助けて欲しいと言ったらどうしますか?」
「ぶははははっ!!最初から無理だと思ってる事を口にするもんじゃねえぜ?俺が長いものには巻かれる奴だって分かってるだろ?それなら、こんな時何て言うか分かってるんじゃないのか?」
「十年経ったら考えてやる…ってところですか?」
「当たらずも遠からずってこったな?ガキの思いつき乗るほど俺はバカじゃねえ…それとも、ドルドーニュを出し抜く作戦でもあるのか?ん?」
「あったら教えてくれませんか?」
「それはこっちのセリフだろ?まあ…俺も、好き好んであんな肥え豚の言いなりになってるわけじゃねえんだよ。まあ、だからって俺に助けてもらえるなんて期待されても困るがな?」
「なるほど…そう言う事ですか…。見返りは、部下の開放ってところですか?」
「なに!?・・・本当に面白い女だな?俺の女になるってんなら…すぐには無理だがそのうちに隙をついて助けてやらん事もないぞ?」
「御者がいるのにそんなことを言うなんて…冗談は受け付けてませんよ?」
「はっはっはっ♪マジであいつにゃ勿体ないな!まあ…ドルドーニュの野郎に好き好んで従っている奴はほとんどいないってこった」
「そう言う事ですか…」
「しかし、分からねえな?何が目的だ?お前ほど頭の良い女なら、今更俺に色々聞いたところで無駄だって分かっているだろう?」
「来世に期待してるんですよ」
「…話せないって事か…何か起こるのか?まあ、俺に被害が来ないように頼むぜ?」
「ジュストさんこそ面白い人だと思いますよ」
まあ、ここは僕にとっては異世界で未知の部分が多い。彼女の事を信じているけど、自力で何とか出来ないか模索しないとね…
「どんどん町から離れていますね…大丈夫なんですか?暗くなると魔物が…」
「ああ、お前は俺のアジトの装置をみたんだろ?」
「私は見てませんよ」
「そうなのか?まあいい、それと同じものがあるんだよ…これから行くところにはな」
「そう言う事ですか…」
「しかし、やけに念入りに景色を見ているな?」
「それはそうでしょう?だって…次はいつ見られるか分からないんですから…」
「なるほど、自分の運命を悟ったか?その通りだ、お前はこれから飼いごろしにされる。さすがに逃げたくなっただろ?」
「逃がす気がないくせにそう言う事を聞くのは意地が悪すぎませんか?」
「盗賊に意地が悪いと言うこと自体が可笑しい話だと思わないか?」
「どうでしょうか?中には、良い性格の盗賊もいるかもしれませんよ?」
「いたら見てみたいもんだな!!」
高笑いをするジェストをちらりと見てから景色へと視線を戻す。なるべく見ておかないとね…
その後は、ジェストは気をよくしたせいかやたらと話し掛けて来たけど、特に役に立ちそうな情報は得られなかった。
「ここがお前とドルドーニュの愛の巣って奴だな」
「・・・悪趣味な屋敷ですね」
いかにも金を持ってます!みたいなお屋敷と言うやつが目の前にある。まだ世界を見回っているわけではないでの何とも言えないが、少なくともこの町は基本石造りの中世ヨーロッパ風の建物が主流だ。確かに大きめの家が多いけど、それでもこの悪趣味な屋敷はその数倍はある。見るだけならともかく、住むのはちょっとご遠慮したいんだけどねぇ…
「なるほど、悪趣味か!本人に教えてやれよ?一段と可愛がって貰えるかもしれないぜ?」
「…自虐趣味はないので遠慮しておきます」
「そりゃ残念だな」
その後、自分の部屋…監禁される部屋に案内されたけど…思わずうわぁと声を出しそうになった。理由は…
「部屋はそれなりに豪華だが、何よりベッドが凄いな!!こりゃ、何をするつもりか分かり過ぎて笑えてきやがるな!!」
「閉じ込められる側としては笑えないですね…」
部屋も、言われた通り豪勢なんだろうけど…何より、ベッドが凄すぎて…さすがにドン引きだよ…
「さすがのトワも顔が引きつってるぜ?どうする?俺に助けを求めてみるか?」
「しつこいですよ?助ける気がない人に助けを求めたりしません…」
「そいつは残念だ!今度こそ本当に助けてやろうかと思ったんだがな?」
「良く言いますね…。それにしても、やけに私と会話をしようとしますね?何か目的でもあるんですか?」
「可愛い娘と会話したくなるお年頃なんだよ」
「・・・」
「まあ、冗談だ。ただ単に、久しぶりなまともな話し相手がいるから話したくなっちまっただけだ」
「…沢山部下たちがいたじゃないですか?」
「あいつらはな…まともな頭の奴が少なくてな…会話にならねえんだよ。そんでもって、この屋敷の連中みただろ?ドルドーニュの配下たちは、主人を恐れているのか必要以上の事は喋りやしねえときた。まあそんなわけでだ、まともな会話が楽しくてついつい多く話し掛けちまったんだよ」
「それはそれは…光栄な事ですね…」
何とかこのジェストさんを味方につけられないかな?
「では、口が軽くなってるついでに答えて下さい。ドルドーニュさんに従っていてもいつかは使いつぶされるのをジェストさんは分かっているんですよね?分かっていて…何故従い続けているんですか?」
「無駄な事を聞くな?理由は簡単だぜ?他の選択肢よりマシだからだよ」
「他よりマシですか…」
「そうだ。考えてもみな?これだけ大きくなっちまった盗賊団だ、何処に行ったって目についちまう。それなのに、人数が多い分稼ぎが悪きゃ飢え死にするしかねえときた。どうすりゃいいんだ?世界平和のために死んでくれってか?冗談じゃねえぞ!!」
「真っ当に生きている人たちだってたくさんいます!」
「ああ、いるな?だが、その真っ当に生きてる奴らも一部の上の身分の高い連中の食い物にされているのが多いんだぜ?さらに、俺たちみたいな悪い連中にも食い物にされちまうっていうおまけ付きだ!」
「それだけ人数がいるなら食べ物でも作れば何とかなるんじゃないですか!?」
「畑でも耕せってか?町から外れれば魔物がわんさか出るんだぜ?で、町の中でやろうと思えば…ドルドーニュみたいないけすかない上流階級の連中に頭下げて…結局、そのほとんどを取り上げられちまうってわけだ」
「そ、そんな…」
ドルドーニュみたいなのばかりじゃないはずだけど、僕はまだこの世界について何も知らないに等しい。少なくとも、ジェストが言ってる事の方が真実に近いんだろうけど…でも…
「な、何かあるはずです!だってそんな…救いのない話なんて…!!」
「おいおい、何て顔してやがるんだ?暇つぶしの会話だったはずなんだがなあ…?トワ、自分の置かれている状況が最悪だって分かっているのか?」
「・・・」
そうだ、感情移入してる場合じゃない…場合じゃないんだけど…
「…仕方ねえ。話の締めに一つ面白い…救いのねえ話をしてやろう」
「救いのない話…ですか?」
「そうだ、面白そうだろう?」
そう言うジェストの笑みは、すでに何処か分からない遠くを見ているようだった…
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
何度も書き直してこの体たらくです…難しいですね
次話もよろしくお願いします。




