84話
『主!!』
それは突然だった。大きな魔法陣が足元に展開する。範囲内にはドロシーとファムも入っている。
ザンザス、バリオス、翡翠が同時に念話で叫ぶ。
発動はおそらく後2、3秒で完了する。逃げる選択肢がない今することは一つ。
思考もそこそこ二人の腕をつかみ抱きしめる。同時に魔法陣は発光しあたりは閃光に包まれる。
あたりが静寂に包まれ目を開ける。一面真っ暗になっている。どういうことだ?ここ何処?
『地下空間のようです。おそらくダンジョンの中かと思われます』
念話で薄紅が答える。あの短時間で魔法陣の中に入り込めたらしい。
助かるよ。アンバーはいる?
『いるにゃ。振り落とされるところだったけどにゃ』
すまなかったな。二人が心配だったからな。それ以外に考えなかったよ。
ん?二人?
そこまで思考が回りようやく自分が柔らかい感触を抱きしめていることに気づく。
「ああ、ごめん!けがはないか?」
「けがはないけど少し乱暴な抱きしめ方ね」
「ラウルが乱暴なのが好きなんて今に始まったことでもないけどね」
内容はともかく声は怒っていないようだよかったよ。三度目にカウントされて責任取らされたらどうしようってところだ
『主、空間探査が終了しました。先ほどの入り口から数えて10層下に現在いるようです』
「ダンジョン10層?」
「どういうことよ」
「何でそんなところに?」
あれ?うちの娘さん以外に誰がいるの?アンバーこっちに来てナイトビジョンモードで。
アンバーを頭にのせる。視覚情報を共有し暗闇でも見えるようにするとそこにいた一人はサファイヤ嬢。
まあ彼女はカシウス製の護身魔道具があるのでさほど心配してなかったり。ただもう一人が。
「ヒルムカさん、何でいるんですか?」
「何でって魔法陣光ったときに、に、逃げれなくて」
足がすくんだようである。残念な人だがまあ機敏な動きは期待できない人だもんなぁ。
「サファイヤさんはケガありませんか?」
「貴方あたしが最後なのね。」
「一番防御力を信用していますから」
「まあいいわ、それよりダンジョンの中って本当?」
「そうですね。ダンジョンの中は間違いないです。」
へたり込むヒルムカさん。腕を組んで考え込むサファイヤさん。対照的である。
まずは上への連絡だな。魔石ランタンを出し明かりができたことで少し落ち着いた面々を見て切り出す
「ダメだな上にいるはずの翡翠とも連絡が取れない」
「あたしの召喚獣も駄目ね。10層程度の距離なら問題ないはずなのに」
「魔力ジャミングでも入ってるのかね?」
『ダンジョンがダンジョンたる所以だにゃ。人の持つ魔力探査能力を阻害するようにできてるにゃ。』
人の持つってことはアンバーたちには問題ないのか?
『少し障害はあるけどにゃ。でないと薄紅の探査もできるはずにゃいにゃ』
なるほど、そういやそうか。10層まで探査できてるんだもんな。
『だから上の翡翠たちにはアタイから指示ができてるにゃ。とりあえずみんにゃあわてているそうだニャ。』
まあ上が無事なのは幸いだな。消えた人数も全員ここにいるし分断転移させられたらと思ったけれどそれもないみたいだ。
「ねえ、ヒルムカさん?連絡用の魔道具持ってたでしょ?あれって使えないのかな?」
ドロシーが言うと当の持っている本人は慌てて取り出す。
受信されているようで、どこにいるのか?みんな無事かなどの質問が書いてある。
通信用魔道具は邪魔されないのかね?
ヒルムカさんはみんな無事、現在ダンジョンの中、これから上に戻る。と簡潔に書き送信する。
とどまっていてもしょうがない。ここは動きますか。
移動を開始する。隊列は俺、ファム、ヒルムカさん、ドロシー、サファイヤ嬢である。
申し訳ないが殿の防御をお姫様に一任する。召喚は使えるのだがこちらはアンバーと薄紅の前方探査に主眼を置かせてもらう。本当は摩睺羅伽王(雷桜)でも召喚すればいいんだけどビーストモードが蛇なんだよねぇ。聞けば満場一致でダメと言われました。つぶらな瞳で可愛いんだけどな。
という訳でサファイヤ嬢はダチョウを召喚していた。
マジェストリッチというダチョウ型召喚獣らしい。首の色により属性があるらしくレッドネックは火属性、ブルーネックは水属性。ブラックネックは闇属性。今回はホワイトネックの聖属性だそうだ。
「あたしの一番の切り札切ってるんですからね。無事に脱出させなさいよ」
「了解しました。」
軽いわね、とぶちぶち言われているがしょうがない。あとは迦楼羅とか龍とかダンジョンに合わないサイズのビーストモードしかないんだよ。
目的は上層への移動場所。10層は攻略が終わっているのでアンバーによるステータス鑑定も活用できる。
最短ルートで上層への道を進んでいたのだがその歩みは遅々として進まない。
前方はともかく後方からも執拗にアンデッドが押し寄せてくるからだ。
流石にダンジョン内なので全体的に力、スピードが上がっている。中にはスケルトンもメイジやアーチャーなど特殊タイプも出てくることもあり気が抜けない。
「にしてもちょっと出て来過ぎじゃないか?」
「なんて言うのか誘われてきてるみたいよね?」
前方からのグールを倒しながらファムが言う。そう、そんな感じ。
光に誘われる蛾のようによってきているという感じなんだよ。
光なんてダンジョンなんだからそんなに遠くまで通ることはないし。
「薄紅、常時探査しているんだよな?一度止めてみてくれないか」
薄紅が探査をやめてから今来ている魔物を倒し終わり、ようやくひといきつくことができた。
「音波探査が魔物を呼び寄せていたんだな。おそらくダンジョン内を探査しながら進むっていうことの防止策だろうな」
「どうするの方角わからなくなってない?」
「大丈夫だよマップ自体はできているんだから自分の位置の確認が常時できなくなっただけだ。たまにならいいんだしさっさと進むか」
一同不満はないようで歩き出す。
「あたしが一番役に立ってない。仮にも先輩冒険者なのに・・」
ヒルムカさんがぶちぶち言っている。いいんですよいつか役に立ってください。それまではドジっ娘担当でいいですから。




