74話
明けて翌日。
ギルドに参りました。
鍛錬場には我々パーティ。そしてヒルデ姉、ミュゼ、カーンズパーティが観客であります。
相手の人たちはギルマス室で手順説明を受けている途中らしい。
「意外と面倒くさいんだよ、試験官ってのもな。」
「そうなんですか?」
「ああ、相手の攻撃防御、咄嗟の対応力ってのを総合的に判断しなきゃいけないからな。試験官の他にも採点の人間が3人いる。それらと打ち合わせしてどういう風に試験を進めるかとか色々決めごとがあるんだよ」
「それらが3人分ですか?」
「採点員は基本変わらないからな。ただファム、ドロシーはそれぞれ別の人間が相手をするだろう。正直誰とも相手したくないがなぁ」
「そんなに強いんですね?」
「探索者多頭竜の眼といえばAランクとしても名高いからなぁ。特にディフェンスに定評がある。メンバー五人のうち4人がディフェンス。リーダーのみがオフェンス特化だ」
「リーダーの人脳筋?」
「バカ!、大声で言うな!知らぬは本人ばかりだがな」
結構残念な人らしい。まあひとめぼれの女性をこの広い王都で探すっていう発想もなかなかしないからねぇ
そんなこんなで待っていると人がたくさん入ってきた。
ギルマスと文官らしき人数名。おそらく採点員ってあの人たちだろう。
その後冒険者らしき人達が来た。おそらくあれがAランクの人たちなんだろう。
あれ?でも武装してる人二人しかいないですよ?
こっちは三人なのに。
「それでは試験を始める。今回は変則だ。ファム、ドロシーの二人はこちらのルイーズと二対一の戦闘試験。ラウルはリーダーのレオンとの模擬戦だ」
ふーん、ドロシーたちは二人で一人分と思われてるんだ。結構好機だね。
喧嘩してもいいのかね?
しかしファムは好機ととらえているのかとてもいい笑顔である。
「まあ妥当よね。こっちは学生女子二人。むしろAランクが相手してくれるなんてめったにないし」
そういいながら声が笑っていませんよ。
とりあえず二人を鑑定してみますか
ルイーズ・クローバー(25歳)
LV 39
HP :655/655
MP :258/258
ATK :133
DEF :339
MATK:123
MDEF:557
INT :53
【N】 水魔法 LV3
【R】 物理耐性LV5
楯術 LV1
防御術 LV5
【SR】 武器強化LV1
レオン・オウルロード(23歳)
LV 48
HP :753/753
MP :428/428
ATK :193
DEF :246
MATK:0
MDEF:666
INT :50
【N】 加速 LV3
索敵 LV3
弓術 LV2
生存術LV4
【R】 格闘 LV5
【SR】 剣術 LV4
気力剣 LV1
女子二人の相手は女性盾職のようである。ちゅか見る限りどう見てもバリバリの前衛である。
誰かに似ているんだけどな
そう思っていると薄紅が念話で答えてくれる
『あの女性摩睺羅伽王にどこか似ている気がします』
そうだ、雷桜だよ。アマゾネスなバーサーカーな雰囲気が似てるんだよな。もっとも雷桜はあれで乙女趣味なところもあるのがすごいんだが。植物には詳しいしなぜか花言葉などほとんど網羅していたりする。彼らの趣味もよくわからんなぁ。
しかし見る限りに完全防御型。手はあるのかね?
『問題はありません。昨日は少し連携の確認をしましたが彼女たちならいい結果を残せそうです』
そうなんだ。まあお手並み拝見と行きますか。正直これは試験なのでベストを尽くせば勝ち負けは関係ないはず。
「気を引き締めてな」
「大丈夫、ある程度は見ているから。」
「何とかなるでしょ」
ファムとドロシーが答えて試験に臨む。
こちらは少し後ろに控える。ヒルデ姉とミュゼが心配そうな顔で見ているがそんなに心配しなくても死なないよ、多分
「あんたって妙に図太いときがあるわよねぇ」
どういう意味ですか?ヒルデ姉。石橋を叩いて渡る性格なのに。
それに今は心配するときじゃないよ。
「まあ試験だし、いいんじゃない?ヒルデ姉ならあの人とどう戦う?」
そう聞くと珍しくため息をつく。ヒルデ姉のため息なんて珍しいな。
「あたしなら降参ね。隙が見つからないってああいうことかもしれないわね。」
「それじゃあドロシーたち負けちゃうんですか?」
それを聞きミュゼが心配そうに言う。
「おれは悪くて引き分けとみてるけどね。一人ずつなら確かに勝ち目は薄いだろうけど二人相手だからなぁ」
目を丸くするヒルデ姉、何か言おうとしたようだが試験が始まる。
ファムががルイーズに向かって走り出す。同時にドロシーが風魔法[風弾]を発動。射程は若干短いが
速射性と威力を兼ね備えた魔法である。
着弾と同時に切りかかるファム。連携がよくなっている。
だが、彼女は斬りかかってきた剣を籠手で受け止める。そのまま体を入れ替えファムを魔法の盾とする。
ファムに当たる風弾は衝撃と大きな音を出す。
予想外の音に一瞬意識がファムに向いた。その隙を見逃さず死角からドロシーが切りかかる。
レベルの差だろうか?それすら難なく受ける。
数合激しい剣戟を撃ち込むドロシー。だが持ち直したのかもはや余裕で受け流している。
防御術は伊達ではないな。
「終わりだね。」
こちらは余裕で答える。向こうのパーティも格下相手に助言はできないと思っていてくれるのか黙って見守ってくれている。
打ち込みからいったん間合いを取り力を入れた一撃を撃とうとするドロシー、そこに気がいってくれたのか迎え撃とうとするルイーズの首元にファムの剣が光る
「そこまでだ」
ギルマスの宣言により試験は終わる。直後二人とも膝から崩れ落ちる。
だがそれを支えたのはルイーズ。女子を一人片腕で支えるって。力では俺でも勝てないよ。
「やるじゃない。首筋が冷えたのって久しぶりだよ」
こちらの席まで運んできてくれて称賛してくれる。
「学生でそれって末恐ろしいね。うちのパーティつぶれたらあたしと組まないか?」
「こらこら、縁起でもないこと言ってんじゃないよ」
男が来てルイーズの頭を小突く。
ルイーズ自体も170は越えていそうな大柄女性だがそこからさらに10センチは高いこれまたクマみたいな男。聞けばルイーズのお兄さんらしい。
兄妹そろって同じチームの冒険者だそうな。
でも似てないね。似てるのは大柄ってとこと瞳の色だけだ。
「いえ、そちらがアドバイスされていたらあんな稚拙な手では勝てませんでした。」
殊勝に言うドロシー。だが首を振ってお兄さんは言う。
「試験はあくまで受けている剣士が気づかねばならない。我われ外野は何も言えないんだよ。それにこいつは戦闘視野が狭いのが欠点だ。いい教訓になっただろう」
頭をワシワシしている。その辺は兄妹だねいやそうな顔をしているが振り払わない。
「それと試験結果は勝敗とは別だからな。まあ次の試験が終わってからの結果になる。少し待つんだな」
そういって二人は向こうの席に戻っていく。
さて、そろそろ順番ですか。用意はいいか?




