75話
さてこちらの番がやってまいりました。
鍛錬場の真ん中に出て行く。
で、出てきたのアタッカーのレオン。
マジの打ち合いでは勝てるかどうかという相手である。
「よろしくお願いします」
一礼をするが素通りで後ろに行かれてしまう。ドロシーやミュゼがいるがそこを素通りし
さらに後ろの人物へと。
「やっとお会いできました。お探し申し上げておりました」
手を取り恭しく言う。
そもそも後ろにいて顔を隠すようにしていたのだがどうしてわかったのか。
恋する男の執念パないな。
「どなたかは存じませんが初対面の女性の手をむやみにつかむのはおよしなさい」
ヒルデ姉がレオンの手を払い薄紅を背にかばいながら毅然と言う。
「失礼した。私はレオン・オウルロード。そこの女性は私がもう一度会いたいと探していた女性なんだ。」
「それで、女性をいきなりつかむという言い訳になるとでも?」
何も言えずに黙ってしまう男。
「申し訳ありませんが私は貴方と会った記憶などないのですが、どちらで会いましたの?」
「魔物の群れから助けてくれただろう?あの時森の中であったじゃないか」
「そのような恐ろしいところに女の身で行けるわけないですわ。」
しれっと言う薄紅。演技派だな。不審な人物を見る目がすごい。あんな目を向けられてアタックできる男がいるならすごいよ。
「わかった、初対面なのだな。ならばこれから貴方に結婚を申し込む。どちらが彼女の主人なんだ?」
切り替え早!てかどれだけ惚れられてるんだか
女子連中がみんな引いている。まあ男なら引けないのはわかるんだけどな。
「私です。私の侍女である彼女に結婚を申し込むというのですね?」
ファムが一歩進み出る。あれ?ファムさんなんか怒ってません?
「結果として言わせていただきますが主人として貴方との結婚は認められません。自らの仕事を放り出して女性を口説くような人には家族のように大事な使用人を任せるわけにはいきませんから。」
「そうだな、失礼した。まずは口だけでないところを見せねばならないな」
そういい踵を返す。こちらんきてようやく言葉を交わす
「待たせたな、さっそくで悪いが始めようか」
いや、結構見ててテンション下がったんですけど本当にAランク冒険者?
バトルの気分じゃないよ今
だけど、どうやら相手はやる気十分のようでこちらが構えると同時に突っ込んできた。
速い!剣を払われ首筋に突き付けられる相手の剣。
「やる気を出したまえ。今のは試験前に失態を見せてしまった詫びだ。これからが本当の試験だよ」
そう言って構えなおしてくれる。ああ、そう。今ので沈めなかったことを後悔させてやる
今度はこちらから打ち込んでいく。攻撃特化とは言え流石にAランク。軽々とあしらわれる。
何度か打ち込み、隙に一撃を撃ち返される。そのようなことが数回続く。
「もう、ラウル押されてるじゃない!」
つぶやくドロシー。だが後ろから薄紅が言う
「ドロシー様。ラウル様は徐々に相手の剣筋に対応できています。最初に比べ反撃回数が減ってきているでしょう?それに」
「楽しそうよねぇ。あの人強い相手と戦うと楽しそうに笑うのよ。バトルジャンキーなのかしら?」
薄紅の言葉にファムが繋ぐ。
ヒュドラアイズの面々は逆に驚いている。試験用に刃引きの剣ではある。致命傷にならないように打ってはいる。だがこれほど短時間にレオンに追いつける剣士など見たことがなかった。今では互角、いや、若干レオンが押されている。
あしらっていたはずの少年がまさか打ち合いの最中に同等の使い手になる。如何な熟練の剣士とは言え、いや熟練だからこそ、その成長の異様さに恐怖する。
そこが隙になったのかラウルの払いがレオンの剣を飛ばす。
「よっしゃぁ!」
ガッツポーズをとるラウルに目を丸くするレオン。
飛ばした剣を拾いレオンに渡しながら。
「これで一対一だね。次で決着でいい?」
笑いながら剣を受け取るレオン。10も年下の少年に恐怖したが同時に奮い立った。まだ負けるわけにいかないと。心が折れれば冒険者としては終わる。このような試験ごときでは終われない。
「同等の相手として勝負だな」
試験場には再び剣戟の音が響く
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結果としては無事に三人ともCランクに上がれました。
ドロシーたちは喜んでいる。俺はといえば結果を聞いても仏頂面を崩せない
「いい加減にその不機嫌な顔止めなさい」
ヒルデ姉に怒られる。
だってしょうがないじゃないか。勝てなかったのに昇格って気分的に納得できない。
三戦目は結局負けてしまった。
耐久力の差とレオンの虎の子の気力剣の攻撃に討ち負けてしまったのだ。
何を言おうと負けは負け悔しいんだからしょうがない。
「史上一番不機嫌なCランクの昇格だろうな」
ギルマスが笑いながら言う。
「実際、お前の実力なら通るのは簡単なんだよ。だからこそその悔しさを知ってもらいたかったのはあるんだがな。まああれだけ拮抗するとも思わなかったのも事実だが」
まあそういわれるとしょうがない。確かに戒めは必要だし、取り返しのつかないところより最初の方がいいというもんな。
でもそれはそれ、負けたのは悔しぃ~~
悶絶している俺を無視してファム、ドロシーミュゼは喜んでいる。
「そういえば、ピンキーさんだっけ?どこに行ったの?」
ヒルデ姉が聞く。
「もう一度呼び出されて改めて申し込まれるみたいだったからビシッと振ってくるって出て行ったわよ」
ドロシーが答える。まあ実際嫁にできないのを知っているので振ることにみじんの疑いもない。
そもそも神将を嫁にしても子供もできないだろうし。何より俺の魔力消費してるからね。許すわけありません。なのでちょっとショック療法で行こうと思います。
この部屋にいるみんなに少しお願いしたところでレオンが入ってきた。
「どういうことだ?あのピンキーって人は・・」
「ピンキーって誰?」
「聞いたことない名前ね。ヒルデ様お知り合いですか?」
「ううん知らないわね」
口々に何のことかわからないという。
「ファム君、君の従者じゃなかったのか?」
「従者なんていませんよ?男爵家の末子にそんなものつける財力なんてありませんから」
「そもそも従者がいたら家に泊まることなんてしないものね」
キツネにつままれたように不思議な顔をして出て行くレオン。
「どういうことなのよ?」
いたた!、説明するから耳を引っ張らないで
ヒルデ姉に説明する
あまりにもしつこい求婚が起きそうなので精霊であるという設定でごまかすことにした。
彼が探しているのは魔物を倒した女。ならばその正体を見抜かれたことに対して、見抜かれればもうここに居られず精霊界に帰らねばならない。という設定で姿を消す。問い詰めに来た我々が知らないということにすれば親しい者の記憶ごと消し去っていったという設定で姿を消すことができる。
「名付けてウルトラ設定計画だ」
「ラウルのネーミングセンスって時々よくわからないわね」
ドロシーツッコミどころが違う。
まあ実際は全てうそではなく目の前で召喚解除しただけなのだがね。念話で状況はわかっていたのであとは知らんぷりなだけ。ファムの実家に問い合わせてもそもそもいないものの存在など残っているわけがない。完璧な作戦である。
これからほとぼりが冷めるまで薄紅の召喚時はビーストモードで召喚しよう
ふと、横を見るとファムが肩を震わせている
「ウルトラって・・」
あれ?なんかツボはいったのか?面白がるところがどこかにあったのかね?




