38話
廃墟になっている。
家はすべて崩されている。
まるで怪獣が襲ってきたようだ。
木造家屋は押しつぶされ。数件あるレンガ作りの建物も扉、窓など木造部分が壊されている。
「恐ろしいな。これ王都で展開されたらどうなっていたことか」
「不可解なところが多いですがね」
緋焔が言う。
「おそらくですが術者の人数は最低で二人、多くて数人でしょう。だが問題はこれだけの呪術をどうするつもりだったのか、ですね」
だよなぁ、村一つ滅ぼして作った蠱毒なんてそれこそ戦略級兵器だよなぁ。
まして王都からほど近くあまり人もよってこない村。危険だな。
「蠱毒って即発動するんだよね。つまり確実に何かを狙った呪術ってことは間違いないんだろうけど」
「個人狙いでは大きすぎます。かといって国狙いとしてみるとこの術の意味がない」
だよねぇ。殺戮で王都壊滅しても国が壊れるだけ。どちらかといえば愉快犯っぽい
愉快犯か・・・
「転生者だと思うか?」
「十中八九は間違いなく。転生者でなければ蠱毒はわからないでしょう。この世界のそもそも呪術はありませんし」
断定されてしまった。するとやっぱり詳しくはギルドに報告することもないか。
「とりあえずマユーリーの報告待ちだな。いや、任せていたら殲滅で終わってしまいそうだ。足取り追えるか?」
「お任せください、ご案内いたしますわ」
ダーキニーが返事をする。さすがにキツネなので追跡は得意らしい。
「ただ間に合うかですけれど」
そうだね、容赦なさそうだし急いでみるか
************
男は困惑していた。
発動した蠱毒が消滅したのだ。
転生を知らされたときはよろこんだ
胸のない女神はただ文化を上げるためというがチートスキルがあるのだから好き勝手やろうと決めていた
元々文化レベルの低い世界ならば現代人の知識で無双できる。
イージーモードと意気込んでは見たものの、転生は赤ん坊から。周りのやつらはレベルの低いものばかり。おまけに使えるスキルはSRの呪法のみ。かろうじてRスキルの隷属くらいであとはごみスキル。
やってられない
そう、そんなときに彼女はやってきた。
俺のスキルは世界を変える可能性のあるレボリューションスキルだと。
一人ではただのスキル。ただし仲間がそろえば世界を変革できると
俺はその言葉を受け入れた。腐った王制を排し民主国家を作る為に彼女の誘いに乗った。
その作戦第一弾であったのにどうしてこうなったのかわからない。
呪いを仕掛け終わった後、仲間が撤退中にゴーストらしきものをしとめきれなかったことからケチが付いたのかもしれない
やはり無能では役に立たない。もっと有能な人材をつけてもらうように進言しなくては。
先行する一人が何かを見つけたのか立ち止まる。そこには一人の銀髪の美少女がいた。薬草でも取りに来た村娘かも知れない。美しい女だ。
するべきことがわかっているのか仲間は女の周囲を取り囲む。
「お嬢さん、こんなところで何してるんだい?」
「人を探していたのだが」
「そうかい、そりゃ大変だ。俺たちも探すのをてつだってやるよ」
「かまわない、もう見つけたから」
笑顔なのに声に抑揚がない。頭のおかしい女か?どちらにしてもすることは変わらないがな
「まあそういうなよ、旅は道連れ夜は情けっていうじゃないか」
そういって手を差し出す。
俺の隷属のスキルは触れていることが条件となる。気を張られていると通じないこともあるが触れながら気を逸らせればほぼ確実に隷属をさせられる。初見ではまず見抜かれない。
これだけのいい女ならここでやり捨てなくても連れ帰って可愛がってもいいだろう。いい拾い物になった。
「触れないほうがいいと思うけれどな」
女はそう言いながら手を差し出す。
何を判らんことを言っているのかまあいいどうせ性奴隷にするだけの女だ。
手を取り地面に押し倒す。同時に隷属スキル発動。
地面に魔法陣が展開する。この陣が収束し女にタトゥーとして取り込まれれば隷属完了だ。ニ三秒ほどの時間気づかれることはない。
しかし、魔法陣はそのまま燃えて灰になるように消えてしまう。
押し倒された女は冷ややかな眼差しでこちらを見ている。
「魔力パターン一致。貴様があの蠱毒の犯人ということで間違いないな?」
とっさに女の首を絞める。同時に呪法スキル【腐敗呪】を発動
蠱毒をどうやって解除したのかは知らないがこいつさえいなければ失敗の汚名は雪げる。
「あきれたな、貴様は最後でいい」
突如女が立ち上がる。俺は振り払われた格好であおむけに倒れる。なんて力だこの女。
仲間は同時に女に向かっていく
結界士が動きを封じ魔物使いが残ったムカデをけしかけ、残った剣士は同時に切りかかる。
逃れられるはずのない攻撃。
しかし女は最初から持っていたのかしなやかな棒を一振り横なぎにする。
それだけで仲間は弾き飛ばされる。
「闘法術 鏡刃」
女は一言そう言うともはや興味がないように振り返る。
女の後ろでは剣士がお互いの剣でお互いを貫き、結界士は身体が妙な角度に曲がって気を失っている。そして魔物使いは自らの魔物に喰いつかれ蒼白い炎で燃えている。
「な、なんなんだよ、おまえ!」
「お前に名乗る必要はない。ただ仕事とだけ言っておこう。貴様を滅ぼさない限り仕事が終わらないのでな」
そういって目の前に細い棒をもって構える。乗馬鞭なのか?そんなもので俺は殺されるのか?
なんなんだ、俺は転生者だぞ。なんでわけのわからん女に殺されなきゃいけない。おかしいだろ!
そう思った時突然目の前が暗くなった。




