22話
「ミュゼ!お願いがあるの!」
いきなり彼女が言いだしたのは確か武技際の二週間ほど前だったと思う。
騎士団の訓練に混ぜさせてほしいと言い出した。
なんでも実行委員のヒルデ様から打診があったらしい。武技際の優勝者にドロシーとの交際権利を賭けるようにする、と。
最近、ドロシーとラウル君はお互いに魔術、武技のクラスを交換している。そもそもの原因は学内での私の護衛という意味で必ずクラスを一緒にしなければいけないためではあるが、二人ともどちらの才能も通常レベルを凌駕しているためどちらのクラスも彼らを取り込みたいというのが本音らしい。
ドロシーはオーソドックスにどちらの才能にも秀でている。
コツコツと武技の鍛錬もするし魔術に対しても非常に素直に伸びていっている。
対してラウル君はその発想に驚かされる。
魔法は本来、魔力を感じ、詠唱によって力を与えるという作業になる。
勿論慣れることによって詠唱短縮は比較的簡単ではあるがこのプロセスは変わらない。
ところが彼はいとも簡単に『圧縮』というプロセスに思い至った。
世界の構造を根底から覆すような発想である。
剣技にしてもそう。
素人目に見ても明らかに異質。
ただその異質な剣技は正統派でおそらく学院最高峰のヒルデ様すら圧倒していた。
そのような彼らだから同学年はもちろん上級生にまで目をつけられる。
ひどい意味ではなく優良物件という意味で。
あからさまなアプローチから強引以上な手段まで、あとで笑い話で教えてくれたがよくもまあそれだけ言い寄ってくるものである。
そこで権利として賞品にし、煩わしい人たちを封殺する作戦なんだそうだ。
ただ、それだけでは守られるお嬢さんでいればいいはずなのだがそれには続きがある。
男性が勝利した場合はドロシーに交際を申し込める。ただしその条件では二割強いる女性には意味がない。
そこでもし女性が優勝した場合はラウル君に交際を申し込める権利となるそうだ。
そこまで聞いて納得した。このブラコン妹の普段を見ていればよくわかる。
本気で兄との交際権利をとりに行くつもりなんだと。
ラウル君の同学年で仲のいい女子の筆頭はもちろんドロシーであるが二番目は何を隠そうこの私。
こう見えてもかなりいい線は言っていると思うのだがもちろん誰も言い寄ってこない
もちろん本来は言い寄ってくる人たちも多いのだろう。
だが学院内ではドロシーとラウル君がかばっていてくれる。
その意味でも彼女たちには苦労を掛けていると思う。
何か恩返しをしなくてはといつも思ってはいる。
ある意味チャンスだと思った。、友達としてはたとえ失恋としても恋するものを応援しなくてはいけない。
「わかりましたわ。でもどうせならこれから一週間は家に泊まればいいと思います。訓練の後帰る時間ももったいないし、朝も一緒に登校のほうが護衛という意味でもいいですしね」
そうと決まれば早速ヒルデ様に許可をもらいに行きましょう、と引っ張っていく。
すごく乗り気だと、ドロシーが目を丸くしている。
ふふ、たまにはこういうのも悪くないでしょう?
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闘技祭初日の夜。軽めの食事をとって夜の鍛錬に森に来た。
アンバーによればその日決まった出場者20人のうち不自然な魔力持ちが半数いたらしい。
身体強化の魔法具なのか呪印なのかは定かではないが何か禍々しい感じがしたそうだ。
とりあえずハイレイスを呼び出し配下としてインビジブルストーカーを10体召喚。
レイスよりステルス性が高くアンデッドでない魔物。彼らなら聖属性結界を透過できるので不自然な魔力の元を探らせていた。
「10体中4体の報告によれば武器、アクセサリーなどが魔法具になっているようです。あと二体は呪印を確認。しかし残る4体とは連絡が付きませんおそらく消滅したものと思われます。いかがいたしましょう?詳しく望まれるのでしたら今度は私が参りますが」
「いや、そこまでしなくてもいいよ。仮にもインビジブルストーカーを消滅させることができるんだ。朝露に無理はさせたくないからね。」
「旦那様、ありがとうございます。」
ウルウルしている。このあとは家のほうの警備に回ってもらうよう指示をしておく。
「アンバーはドロシーのほうだしな。まああやしいのが4人に絞れただけましか」
切り替えて今日の最後の修行である。
いつも通りに八部衆三体召喚である。
『主、今夜は仕上げとして八部全員を召喚いただけますか?』
いきなり天王に言われてしまう。まさか一人で全員と総当たりなんてことはないよね?
『総当たりなんてしませんよ。さすがにそんな無茶はしません』
だよねぇ明日が本番なのに前日夜に地獄の特訓なんてどんなスポ根だ
『一対七の乱戦です』
明日、不戦敗になるかもしれない




