116話
「ところでクロエさん。この地下倉庫って誰でも入れるんですか?」
「屋敷の鍵を持っていればね。そもそもここには重要なものは置いていないのよ。予備のワイン置き場だしね」
「何でここにゴンサロは来たと思います?」
「それは、たまたまここの鍵も持ち出していたからじゃないの?」
「そうですね、実は彼はついこの間までラミアと共に生活していたんですよ。もっとも山に追いやられていたようですけど」
「物好きな魔物もいた物ね」
「まあそこは同意しますね。で、ラミアを我々が退治してしまったので再びの流浪生活になるようでした。そこで隠してあったお金を取りに戻ったようですよ」
そういってワイン棚の一番下にあるワインをすべて出す。そしてその空になった棚の板を外す。
なかにはひとつ鉄製の箱が入っていた。
箱を開けると宝石、貴金属が出てくる。
「これを取りに戻ったんでしょうね。」
「馬鹿な人ね。何もわざわざ私がいるときじゃなくてもいいでしょうに」
そういって宝石と共に入っていた羊皮紙をくしゃりと丸める。
「ありがとう、こんなに早く解決してくれるなんて思わなかったわ。事後依頼の形になりますが戻ればきちんとギルド経由で報酬を払います。」
「わかりましたそれでは今日はこれでお暇しますね、また明日に」
そういってその場を辞する。
クロエさんは振り返らず頷くだけだった。
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「どういうことかしら?」
「何が?」
宿に戻って夕食時ファムが聞いてくる
「どうしてわざわざ建物の主人であるクロエさんがいるときにそこに舞い戻ってきたのかしら?明日になれば王都に引き返すんだからそのあとでもいいじゃない」
「クロエさんに会いたかったとか?」
ミュゼが言う
「会いたいというより一目見たいって感じだと思うよ。彼は望遠眼のスキルがあるから遠くからは眺められるけれどやはり実際に見える距離に来たかったんだろうね」
質問に答えてあげる。サトリが読み取ったのはクロエさんへの未練。もっともクロエさんの持っていた感情は厄介者払いであったのだが。
「あの宝石の入った箱の中に一枚の羊皮紙があったのは覚えてる?」
首を振る三人。皆宝石に目が行っていたようである。女の子だねぇ
「あの羊皮紙はゴンサロとクロエさんの結婚誓約書だったんだよ。そしてクロエさんが最も取り返したかったもの。もっとも処分したかったものなんだ」
もっともゴンサロは偽名を使っていたので魔術制約があっても効かない代物ではあるのだが、彼女にとっては黒歴史の証明書。一刻も早く処分をしたかったものだったのだろう。
「そうですね。クロエさんくらいの家でしたら婚姻は教会に報告しますからね」
「そうなんだ?結婚しますって紙に書くだけじゃないんだ?」
ミュゼの言葉に疑問をぶつける
「私達や貴族の方々は基本的に神の前に結婚を報告し誓約書を教会に収めるものなんです。クロエさんくらいの大きな商家の方も最近はなさっているようですね。」
教会って市役所みたいなこともするんだねぇ。こちらの感覚だと行政の仕事と思うんだけど。
まあ貴族とか名のある人々しかしないそうだし。お妾さんとかはしないそうだから意外とざるである。
そのあとは娘さんたちは結婚話で盛り上がっていた。ドレスがどうとかエスコートがどうとか。
興味がない話なんだがなぜかこちらに聞かせるように話すんだけど、どうしろと?食事が終わっても逃がしてもらえず二時間ほど付き合わされました
明けて翌日 カイン達も無事に戻ってきていたようで王都に向けて出発である。
今回のカインの目的はコカトリスキウィの討伐だったらしい。
キウイバードのように丸くて愛らしい姿に似つかわしくなく石化毒をまき散らす魔物である
かなり強力な個体だったらしいのだが無事に討伐完了したそうだ。
体内から大きな緑の魔石が出てきたらしい。
見せてもらったが確かに大きい。某炭酸飲料のアメリカンサイズほどはある大きさだった。
緑だからセーレ・トレスのダンジョン産魔物だね。尋ねるのはいつになることやら。
帰還時は少しうちの娘さんたちにご教授願うということで半日ほどうちの馬車の中で移動してもらい冒険譚、心構えなど説いてもらった。
これが食事報酬なんだから安いのだろうね




