1169話
入室を許可すると入ってきたのは30代前半といった風情の男性。そして後ろに護衛らしき従者をつけてきている
「正式にお目にかかるのは初めてですね。わたしはそちらのヤパムの南西隣を持っております。レオンハルト・ラグーナと申します」
「そうですか。ヤパム領を受けさせていただきました。本来ならこちらから挨拶に向かうところご足労申し訳ありません」
「いえ、最近は王都詰めの方が長いですから、このタイミングの方がお互いに無理はなかったと思われますよ」
まずは当たり障りのない挨拶から。
社交辞令というやつである。
というかやり手なんだろうね。30代の前半だからうちの父親の少し下というところだろうけど
温和そうな表情の割には本心をつかませないって感じかね
「えっと、本日はご挨拶だけでしょうか?」
「いえ、ご相談したいことがあるんでこちらに来させていただいたのです。アプレシオとの街道整備をなさっているとお伺いいたしましたが?」
「ああ、そうなんですよ。結局ヤパムに足りないのは人ですからね。往来とか考えると道って大事かなって思うんですよ。」
「それでヤパムから王都に向かう道ですが何でもヘルマン子爵領に向かうとお伺いいたしましたが。どうでしょう?我が領地を通されるルートに変更なさいませんか?」
「単刀直入ですね。まだ決まっていないとはいえ内々にはヘルマン子爵には打診してますけれど?」
「こちらに移していただければ子爵の方には断りを入れておきますが」
「一つお伺いしてもいいですか?」
条件を出してくるラグーナ伯爵に聞く
「うちの街道をそちらにつなげるメリットがよくわからないんですよ。何かありますかね?」
「何かと言われましてもまずは王都までの距離が短くなりますね。あとは治安がよろしい街道になると思いますが」
「そうですね。確かにヘルマン子爵の土地では遠回りです。」
「でしたら我が領に」
「でもね。遠回りって言ってもコース的に三キロも変わらないんですよね」
「何を根拠に?」
「計算しましたよ?」
そう言って地図を見せる。
ほぼ正確な地図ではあるが手書きなので実際の航空製図とは思わないだろう
「これが今のうちの構想しているルートです。ヘルマン子爵領から二つ他領をまわってから王都ですね。で、そちらの領を通るルートだとその次の領地からは同じ領地を通りますよね?」
「短いのでしたら、それでよろしいのではないですか?」
「問題はヘルマン子爵の領地との境にある山なんですよ。」
「現状は結構細い街道。馬車もすれ違いが難しいところの上に高低差が大きい。メイン街道として広げるだけでも崖を削ったりかなりの難工事になりそうなんですよね。」
何か言いたそうだが二の句の告げないようである。建築全般を任せているクリスタロイドのアンドゥにはすでにこの案もいったん計画させてはいるんだよね。
実際に作ることは可能だがこの世界にはないオーバーテクノロジー街道になってしまうので計画にゴーサインは出せなかった。
だってトンネルとか架橋とか作らにゃいかんからね。それをしないとなると山間をくねくね曲がった道になるので距離がかさんでしまう。結果ヘルマン子爵領ルートにしたというわけなのである
まあこのヘルマン子爵領もラグーナ伯爵の土地からはダイレクトに平坦な街道がないんだよね。
直接ヤパムを通れればアプレシオへの貿易もできると踏んだんだろうけどちょっと無理だね
「チャーリス男爵領とエルバビロスの交易街道を作ったとお伺いしましたが?」
「ああ、あれいつの間にか俺のせいになってるんですよね。ひどいと思いません?犯人はエルバビロスの元賢者だってのに」
そういやあの山くりぬき陣魔道俺がうろうろとエルバビロスに行ったりしてたんでなんかオラトリオ貴族の間では俺のせいって噂があったのであった。
「あれはコーデリア皇女がきちんと自分の主導で街道整備してますからね。あんな山くりぬくなんて一朝一夕にはできませんよね。」
そう言った解説してあげたのだが、なぜかまだ引く気のなさそうなラグーナ伯爵
そんなに誘致しなきゃいけないほどのもの?たかだか道だよ?




