109話
お昼休憩が終わって移動開始。
とは言え初日は何も起きませんでした。
なぜか今度はファムが二人乗りをしてきたくらいですけどね。
胸をグイグイ押し付けてくるんで困るんだよ
「あのさ、あんまり胸を押し付けないでくれないか」
「何であたしだけ断るのよ」
「だってファムのじゃ形までしっかり思いだひゅ・・」
「うるさいだまれ!」
両頬を抓られる。
耳に近づき小声で
「二人にばれるでしょ!うかつなこと言わないで」
結局そのままくっつかれてしまいました
いや、そもそも胸を押し付けるキミタチが悪いんじゃないのか?解せぬ
夜が近くなり今回は野営。
うちのパーティ4人、カインパーティ5人。隊商の人数7人合計16人分の食事を今夜はウッツと二人で作る羽目になってしまった。
「まあスープはチュチュに任せるとしてお前はこっちを手伝ってくれ」
「はい師匠!」
「いつから師匠ができたの?」
「今日の昼間に」
「無駄口は叩かない!」
「「はい」」
ウッツと彼女のチュチュは同時に返事する。いいコンビだよ。
幸い二日移動なので野菜は新鮮なものを持ってきているのでスープは心配がない。
「この人数だし手軽に作るピザでいいか」
「ピザなんて作ったことないですよ?」
「だってそこにあるのダッジオーブンじゃないか、できるできる」
二つのダッジオーブンがウッツ側にこちらも調理用具として二つあったはずだから合計四つ。
それだけあればピザくらい作れるだろう。
食材は生地以外はすべて出させることにする。
生地はさすがに薄力粉なんてないのでこちらのをこっそりと使用するしかない。
「ファムたちは竈を後二つ作ってくれないか?」
「まあそれくらいなら手伝えるわね」
「それなら、の間違いだろ」
「うるさい!」
怒られてしまった、まあワザとだけどな
本来力仕事は男の役目だが今回はウッツに教えなきゃいけないのでやむを得ない
配合とか必至で聞き入るウッツ。いや小麦粉に水混ぜるのは勘でもいいんだよ。
必要なのは生地の感覚だけだからな。
「本来は一時間寝かせるんだがここは少しでいいよな」
「あ、それなら任してくださいっス」
そう言ってこねた生地に手をかざす。
スキル【進行】
魔力が生地を覆う。なんだ?
「これでいいっすよ、一時間分時間が過ぎてるっす」
「マジで?」
生地を確認する、確かに状態がよくなっている。
「煮込みとか、熟成とかに便利でしょ?」
そんな使い方していいのか?そのスキル
ある意味、全時空中贅沢なピザ生地だよ
やっぱり転生者、とんでもないスキルだな。時空系スキルなんてSSRもいいとこだ
その後竈ができたのでピザを焼き始める。ジャーキーとチーズがあれば大体できるんだよね
でもこれは焼きを任せられないのでウッツには横で見ていてもらうことに。お客さん用にはきちんといいものを出さなきゃね。
「そろそろやってみたいっス」
何枚か焼いた後にウッツが言う。そうだね、ほとんど食事も終わりのようだし一枚焼かせてみるか。
ウッツは二枚失敗した後で三枚目で成功した。すごくうれしそうだ。
もちろん成功品はチュチュへの賄いに。男二人は失敗作の焦げピザである
「師匠まで食べなくていいっすよ」
「いいよ、二人で食べようぜ」
そう言って二枚のピザを半分ずつ取り分ける
一枚目、二枚目と食べて
「やっぱり二枚目の方が成功に近いな」
「そりゃそうっすよ」
「でもさ、こんな風に上達していくのがわかるって楽しくないか?」
料理人としていきたいという信念を持つウッツ。ひたむきな向上心は最近なくしていたものかもしれない。傍で見ていて何か思い出した気がするよ
「でも何も失敗作なんか食べなくても」
「何だよ、師匠って呼んでくれるんだろ?だったらこれが俺に作ってくれた最初の料理じゃないか。ここからの成長が楽しみだよな」
「いつか食べたとたんにむせび泣くくらいの料理作って見せるっす」
「楽しみだねぇ」
そういや、料理のことだけ考えた時間っていうのも久しぶりだよなぁ
こんな穏やかな時間もいいもんだね。
チュチュはうちの娘さんたちと何か話している。
まあ野郎は野郎で洗い物でもしてますか。




