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死にぞこないの病弱皇女は、奴隷の護衛に恋をする  作者: 鷹居鈴野


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閑話・ヴィヴィアン 「百七個」

 ねえ、聞いて。


 日記の紙はもらえたの。たくさん。インクも。誰が持ってきたかは知らない。朝、起きるとある。


 一日目。部屋は思ったより素敵。絹の寝台。窓は高いところに一つ。空が四角い。星の箱が扉の下の小さな戸から入ってきた。百七個。わたしの日記の数と同じ。あの子、読んだのかな。そういうところが好き。


 三日目。扉の向こうに人の気配があったので、話しかけてみた。ねえ、あなたのお名前は。わたし、今朝すごく退屈なの。何も返ってこない。足音だけ。おもしろいから続ける。


 七日目。世話の人は四人いるみたい。足音でわかる。一番重い人の前で歌ってみた。一番軽い人には泣いてみた。とても上手に泣けた。何も返ってこない。


 十五日目。お父様が死んだって、手紙は来ないのかな。来ないよね。誰も何も教えてくれないんだから。


 二十二日目。星を百七個、きれいに床に並べた。こうして見ると多い。全部食べた。おいしい。おいしいよ。ほんとに。


 三十日目。ねえ、聞いて。


 四十一日目。窓に鳥が来た。声をかけたら、逃げた。あの子なら、何を言っているかわかるのかな。わたしも飲めばよかった。あ、飲むものがもうないんだった。


 五十日目。今日、発明をした。机の向かいに椅子を置いて、そっちにお皿を置く。星を二つ載せる。ねえ、友達でしょ? 初対面です。ほら、もうおしゃべりしてる。


 わたしが向かいのお皿から、星を取る。


 ごめんね、やっぱりこっちのほうがおいしそうだったの。


 おもしろかった。


 五十一日目。もう一回やった。


 五十二日目。向かいのお皿の星は、わたしが置いたやつだった。


 七十日目。同じものですよ、って言ってくれる人がいないと、全然ちがう。


 百日目。お兄様は、わたしを見つけるのが一番遅かった。鬼のときは、ぜったい反対の方向へ行くの。でも毎回、最後には来た。泥だらけで来た。見つけました、すみません、って言った。あの人が来るのが遅いから、わたしはいつも木の上で、ずっと笑って待ってた。


 もう隠れてないよ。ここにいるよ。


 ねえ、地図の上下、確かめた?


 百四十日目。扉の下の小さな戸に、手を入れて待っていた。箱を置く指にさわろうとした。五時間くらい待ったかな。箱は、戸の外側に置かれていて、棒で押しこまれた。


 あの子だ。こういうの全部考えたの、あの子だ。


 すごいなあ。やっぱり最高。


 ねえ、会いに来てくれないかな。一回でいいの。うんと怒っていいから。石を投げてもいいから。銅貨を噛《か》むところ、もう一回見たいの。今度はちゃんと笑うから。


 二百日目。星を床に捨てた。次の朝、新しい箱が来た。百七個。


 三百日目。


 何を書こうと思ったんだっけ。


 三百五十日目。今朝は、すごく退屈なの。


 ねえ、聞いて。


 ごめんね。


 ねえ、誰か、取って。

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