第7話 2人
(そんなに辛いなら"俺"が代わってやろうか?)
最初に聞こえたのはそんな声だった。
声の主は何処か楽しむ様な嘲笑う様な…兎に角そんな陽気な人の気配を漂わす。
ただ何故か僕はその声を簡単に受け入れていた。
本当なら自分の中にもう1つの意思なんて…そんなものありえない筈なのに…。
(代わるって何を…?)
(決まってるだろ?お前のつらいと思う事全てをだよ)
(い…いいよそんなの…)
(本当に良いのか?俺に代わればお前はもう辛い想いをしなくて済む。あの女にもあの男にも会わなくて済むんだぞ?)
(そ…そんな都合の良いことは…)
(良いんだよ…だって俺はお前の見方なんだからさ?)
(………、君は誰なの?)
(はは!話を反らしたか、まぁ良い、俺はお前だよ)
(え?僕…?)
(厳密には違うが俺と言う人格が構成されたのはお前の存在あったればこそだ)
(君は僕と代わって何がしたいの…?)
(そうだな、まずは俺達を裏切ったあのクソ女とクソ男にかる〜いお仕置きをしないとな)
(そ…そんなの駄目だよ!)
(あぁ?どうしてだ?)
(そ…そんなの…)
(はは!わかってるぜ兄弟?お前はあの2人に遠慮なんてしてないし善意でもない、怖いんだろ?報復される事が!やり返されたりするのが!大丈夫だ、そぉ~言うのは相手に余力があるから発生する、軽〜く徹底的に分からせてやるのさ!徹底的にやり返そうなんて思えなくなる程徹底的に!かる~くな?)
(な…何をする気なの…?ぼ…暴力とかは…)
(はは!暴力?ないない!そんな原始的な事はしないさ、もっとアイツ等を心底から後悔させるのさ…俺にはそれが出来る!)
どうやって…
そんなこと…………。
彼の事は知らない。
誰なのか…何処から来たのか…。
でもなぜかな…。
彼をうけいれたい…。
そう思う自分があるのも事実なんだ。
(少し眠くなってきた)
(え…?)
(はは…、まぁ楽しみにしてろよ兄弟…)
(ちょっとまってよ!…ねぇ…ねぇ!?)
彼は眠ってしまった。
そして僕にも変化があった。
自然と微睡みから開放される。
見たくも無い…感じたくもない、目覚めたくもない。
しかし現実はいつだって残酷で…僕はそんな世界に目覚める。
「あっ…」
のそりと起き上がる。
僕はどうも眠っていたみたいだ。
なんとかなく部屋の周りを見回して人がいるのに気が付いた。
「空音…」
寧音の妹、もう一人の幼馴染。
雪坂空音が何故か僕の部屋にいる。
彼女は僕のベッドにもたれ掛かって眠っていた。
空音…やっぱり美人だ。
彼女の寝顔なんて普通は見れない。
だから見入ってしまう…。
こうして寝顔をみていればまるで人形の様に綺麗で
見入ってしまう。
普段の彼女はキツく鋭く怖い。
顔をこんなに長く見つめていたら普通なら怒られるだろう…。
何故…彼女が僕の部屋にいるのか?
僕は警戒心を強める。
しかし僕のわずかな動きに敏感に反応したのか空音は目を覚ました。
2人の目があう。
気不味い空気が部屋に充満した。




