第6話 目覚め
「だけど勘違いしないでもらいたいのはその事は俺が目覚める切っ掛けになっただけで生まれる切っ掛けになった訳じゃない」
「はあ?ど…どう言う事…?」
圭が姉に裏切られ、その大きな心的ショックからコイツは生まれたらしい。
圭は姉、寧音に懐いていた。
それがただの憧れなのか恋心なのか…依存なのか私には分からない。
それでも幼馴染として幼い頃から圭を見てきた私には分かる。
圭にとって姉は掛け替えのない存在なんだと…。
コイツが言う話しが本当なら姉は家庭教師と出来ていたらしい。
しかもエッチな事をする仲だって話だ。
別に姉の恋路なんてどうでも良いし興味も無い。
でもそれを圭に見せびらかして姉は何をしたかったのだろうか…?
兎に角、姉の馬鹿な行動の結果コイツが出て来た訳だ。
そしてコイツは目覚めたといった。
ご丁寧に生まれたのでは無く目覚めたと注釈まで入れてくれた。
それが意味するのは…
「あんたはずっと前から圭の中にいた?」
「御名答」
「そんな……、人格が分裂って…普通うんっと幼い時に酷いトラウマとか経験してないとならないって何かで聞いたけど圭ってそんな経験あるの…?」
昔ネットの動画か文章か忘れたけどそんな内容を見た事がある。
幼い頃の精神的ストレスから人格を分裂させて現実逃避するみたいな…?
圭はそれにあたるって事?
でも圭の家族は普通だ…虐待なんてしてるとは思えないし何より思いたくない。
「安心しなよ、俺達の親は人格者だ、人格が分裂するような虐待は受けた事がないし受ける予定もない、俺が生まれたのはもっと別の理由だよ」
「別の理由…?」
「空音、君も予防接種って受けた事があるだろ?」
「よ…予防接種?」
いきなり何を言い出すんだコイツ?
「予防接種は有害はウイルスから体を守る為行われる政府公認の医療行為だ、体内に抗体を作る為にワクチンを体に注入する。」
「そんな事わかってるわよ!その予防接種が今の話にどう関係してんのって聞いてんの!」
「まぁそう急かすなよ、俺の元となった物質が言ってしまえばその予防接種が切っ掛けで圭の中に入り込んだんだよ」
「……はあ?」
「良く都市伝説とかであるだろ?予防接種は国、あるいはそれに準ずる期間が国民を制御統制する為に画策した行動なんじゃないかみたいな感じのそう言う噂話」
「は…っはぁ?ば…馬鹿にするのも大概にしてくれる?そんな話与太話を信じろとでも?」
「まぁさっきの話はれっきとした与太話だから安心してくれよ?」
「あんたねぇ…」
「しかし俺自身はそのどこぞの組織によって生み出された実験体だ。
予防接種や健康診断…色々な方法で人間の体に注入され被検体のDNA情報が書き換えられる。
早い話が注入された物質は被検体《圭》の肉体組織と混じり合い体の一部となってる訳だ」
「ちょっとまって!…えっとどう言う事…?話しが滅茶苦茶過ぎて理解が追いつかない…つまり…」
「予防接種とかで俺の元となった物質が圭の体に注入され長い時間を掛けて俺と圭は1つの存在になったって事だよ」
「………」
絶句だった…。
空いた口が塞がらない。
そんな馬鹿な話が実際にあるのか?
荒唐無稽にも程がある。
「あ…あんたはなんでそんな事を知ってるのよ?もとは注射器の中にいたようなミジンコ以下の大きさだったんでしょ?」
「多分最低限の知識が俺の中にプログラムとして書き込まれているんだろうな?俺を生み出した開発者様は俺達を使って何か大規模な実験をしたいらしい」
「達…?」
「俺みたいな存在が1人とは限らないだろ?予防接種はこの国ほぼ全ての人間が受けている、なんならお前の中にも俺の兄弟や姉妹がいるかも知れないぞ?」
「うぅ…ど…どうしてあんたを作った奴はそんな訳解んない事をしてるの?」
「知らね〜」
「は…はあ!?とぼけないてくれる?」
「本当に知らないんだよ、俺の中にあるのは俺が作られた存在で宿主の成長に即して俺も成長する、そして俺は俺自身の力を使う事が義務付けられているって事しか分からん」
「力…?あんた何か力があるの?」
「さぁな…それも覚えてねぇ…」
「何よそれ…」
兎に角こんなわけ分からない奴に圭は巻き込まれちゃったんだ…それに元を辿ればコイツが目覚めたのだってウチの馬鹿な姉のせいだ…。
私が…私が責任を持ってコイツを見てないと…そう!幼馴染の私が!!
「……今日は疲れた…少し寝る…」
「は?」
「こんなに長く起きて誰かと話したのは初めてだ…眠い…」
「ちょっと…!」
「すぅすぅ…」
「もう寝てる…」
本当になんなのよ…
このインチキみたいな奴は好きなだけ馬鹿みたいな話を勝手にして勝手に眠ってしまった。
私がこの馬鹿みたいな話を信じてしまってるのは私が今だ中学生の子供だからなのか…。
それともこんな与太話を普段私には絶対にしない圭がしたからなのか…それは私自身にも分からなかった…。




