第61話 異なる姉妹
最近頭痛の種が増えた。
幼馴染の少年、鳴海圭の周りで色々な事が起こっているから…。
いや起こり過ぎてる!
正直ただの高校生のキャパシティでどうにかなる域を超えているのだ。
しかも起こってる事が非常識過ぎて大人に相談も出来ない。
私の頭はショート寸前だ!
「はぁ…」
だからため息の数も増える。
もう何回ため息を付いたか解らない位だ。
圭にもう一つの人格…黒圭が生まれた事は驚いた…けどようやく自分の中でごちゃごちゃになった感情とか気持ちとかもまとまってきて踏ん切りもつけられる様になってきた…。
つまりは受け入れられる様になってきた。
でも許容出来たわけでも納得出来た訳でもない。
受け入れないと前に進めないから仕方なく受け入れただけ…。
なのに次から次へと問題は増える。
黒圭の出自には私も個人的に色々と考察したり考えたりした。
黒圭は予防接種等の公的な場において密かに被験者に投薬されてていてそれが自分達が生まれる起源だと言っていた。
予防接種やボランティアの献血など民間人が公的に国の息のかかった注射器に触れる機会は多い。
なら私も例の人工バグ試験体の原液を知らずの内に注入されていてもおかしくは無いと前から思っていた。
そう、人工バグ試験体だ。
そんな物を国が私達国民に黙ってコソコソ作ってしかも投薬してるんだから驚きだ。
これって普通にヤバい事だよね?
でも訴えたくても何処に訴えれば言い訳って話!
もう何を信じたら良いのか解らないじゃない?
そして黒圭だけにとどまらず闇沢なんてのまで出て来た。
こうなると私の中にも私以外の私がいるって考えるのが自然でしょ?この場合…さ。
「はぁ…」
またもやため息が出る。
私の中にいるもう1人の私については考えても仕方ない。
仮にそいつが私の中にいるんだとしてもいつ出てくるかなんて私には解らない。
そんな事よりも今考えなくちゃいけないことは闇沢の事だ。
光沢の中で生まれた黒圭みたいな存在。
通称闇沢。
元々の光沢と違ってなんかナルシストっぽいのよね。
まぁ光沢もナルシストだけど闇沢はなんてゆーかねちっこい。
でも何となく悪い奴じゃないと思うんだよね。
嫌味ったらしいけどね。
悪い奴じゃないと思うんだ。
なんていうか…光沢の最も身近な被害者…。
そんな印象かな。
たから友達くらいにはなってやっても良いと思う訳だ。
兎に角…最近は色々あって疲れやすい…。
宿題も一段落付いたし寝る支度をしよう。
私は洗面所に向かおうと自室を出た。
するとタイミング悪く寧音と出会してしまった。
一応は家族だし、同じ家に住んでるんだからどれ程避けていてもこういう事は嫌でもある。
仕方ないんだ…。
「……」
「……」
姉妹の間で会話はない。
こんな奴に話す事も無いし向こうもだんまりだ。
昔はまだ仲良かった方だとおもうけど…。
いつからだろう?
こんな関係になっちゃったのは…。
まぁどうだって良い…コイツに使う時間は1秒だって無駄だから。
「圭君とは仲良くしてる?」
「は?」
「あら怖い、女の子がそんな顔しちゃ駄目よ?」
驚いた…。
コイツから話し掛けて来るなんて。
「なんなの?アンタには関係無くない?」
「姉として妹が好きな男の子と仲良くやれてるか…心配になるじゃない?」
「ッッッ!!!??………アンタっ!!」
自分でもビックリするほど低い声が出た。
低いのに威圧的で相手を心から憎悪した声が。
「ふふ、だから言ってるでしょ?女の子がそんな顔しちゃ駄目よ?せっかく綺麗な顔なのに台無しよ?」
「お前に圭の事をとやかく言う資格ないの分かってるよね?ホッッント黙っててくれない?」
「あれ?今私貴方の事を話してたのよ?圭君の事…好きなんでしょ?どうなの?上手くやれてる?」
「はあ!?私が圭を好き?あり得ないから!!」
「ふふ、意地はっちゃって…可愛いわね?」
「意地なんてはってない!!いい加減な事を言うな!!」
「そうやってまた自分の気持ちに嘘つくのね?ふふ、私が圭君独り占めして悔しそうにしてたクセに」
「そんなの!してない!」
「へぇ?圭君が私から"卒業"した後に直ぐ様圭君に飛び付いたのに?」
「あんたが…あんたが圭を捨てたからだろ!!卒業?何美談みたいにしようとしてんの?アンタのせいで圭がどれだけ傷付いたかわかりもしないで勝手な事ばかり!!」
「空音が言ってたんじゃない?私と圭君が一緒だと共に依存し合うだけで良くないってね、だから私は圭君を卒業させてあげたのよ?何が不満なの?」
「はは…良く言うよ!あんな脳みそち◯こで出来てそうな性欲猿と仲良くしたいだけのクセしてさ!それで圭が邪魔で捨てたのに卒業?笑わせないで欲しいわ」
「性欲猿?誰の事を言ってるのかしら?」
「はあ?一人しかいないでしょ?アンタの彼氏よ…まぁ?本当はただのセフレかも知れないけど!」
「ねえ?それってもしかして加藤先輩の事を言ってるの?貴方本当に見る目が無いわね?加藤先輩の良さが分からないなんて?まぁ御子様な空音には分からないかぁ?ふふ」
「ほんと…おめでたい頭してるわね…アンタ」
この女は知らんないんだ。
あの男の本性を。
でも多分それは大きな問題じゃないんだろう。
この女は多分あの加藤とかいう家庭教師に自分の理想を押し付けて幸せ気分でいたいだけ。
理想を押し付ける上で浮気癖のあるクソ男なんて本性は邪魔でしかない。
だからそこに目を向けない。
結果こんなにも妄信的になれるんだ。
途端に私はこの女と話す気概を失った。
もう圭についてこの女に怒りをぶつける事すら馬鹿らしくなる。
「あら?何処にいくの?…はぁ…」
私は姉を無視して本来の目的の洗面所に向う。
態度でもうお前と話す気なんてない事を示す。
「ほんと…昔から何考えてるか分からない子だわ」
という姉の独り言を無視して…。




