第58話 闇沢
「よかったら僕の方とは友達になってくれないかな?」
「は?」
「え…?」
ニッコリと微笑む光沢。
太陽のように温かみのある笑顔…。
いや…空虚で空っぽの笑顔…。
作り物めいたすっからかんの微笑。
そこには多分愉悦も好意も何もない。
「何考えてるわけ?いい加減キモいよ?あんた」
「ふふ、僕は君達に感謝してるんだ、君達のお陰で僕はこの体の主導権を得た、君達は恩人だよ、だから友達になりたいんだ」
「へ……?……っ!!?君…まさか…」
「ふふ、察しがいいね、そうさ、僕は君の中にいるもう1人の君と同じ存在だよ。」
「はっ!?ってまさか…あんたも二重人格なわけ?」
「おや?雪坂さんも僕等の事を認知してるのかな?参考までに君達の交友関係の中で何人までの人物が僕等の様な存在の事を認知してるのかな?」
「僕と空音意外は知らないよ」
「ほお?そうかい、なら秘密を共有する者同士仲良くしたいな」
「誰があんたなんかと!」
「勘違いしないで欲しいな?僕は君達と敵対する気はない、仲良くしたいんだよ?」
「それを信じろって?無理あるでしょ?よくいえるわね…あんたが今まで何して来たか忘れたわけ?」
「君達にちょっかいをかけてたのは今心の奥底に引き籠った前の僕さ、今の僕は違う。こうして外に出れたのも君達のお陰なんだ、だから感謝してるんだよ?僕は君達と争う気は無いよ。」
「そんなの信じらんないわよ」
「そうかもね?でも光沢大治という人間を追い詰め心の奥底に引きこもらせたのは間違いなく君達の功績だよ、だから感謝したいんだよ」
「き…君はもう1人の自分が嫌いなの?」
「嫌いだね」
「えっ!?」
黒圭の話によると被験者の体に注入されてからこうやってバグ試験体の人格が表に出てくるまでの間の意識や記憶はしっかりとあるらしい。
つまりは表の光沢と裏の光沢…彼等は一心同体で記憶や思い出も共有している筈だ。
言ってしまえば黒圭が言っていたように裏表の関係にある僕等は兄弟に近い関係なんだと思う。
それをきっぱり嫌いだと言い放ってるんだ。
彼等はいったいどんな関係なんだろう…?
「ど…どうして嫌いなの?同じ自分なのに…?」
「君達は眩しいね、互いを認め合ってる…羨ましいよ。」
「え?」
「簡単な話さ、僕と彼…そうだな僕はこれから闇沢とでも名乗らせてもらうよ、で闇沢と光沢で明確に違う所があるんだよ…何かわかる?」
「分かる訳無いでしょ?もったいぶらないでハッキリ答えたら?」
「はは…手厳しいな、そうだな…ヒントを与えようか?」
「はぁ!?ヒントぉ!?……はぁ〜だっる!付き合ってられるか、いこっ!圭。」
「いや、待ってよ、空音」
「あんたコイツの与太話に付き合ってあげるつもり?」
「僕としてはそうしたい…光沢の話しが本当なら敵意はないし…なにより…彼は僕等の同類だから…」
「………はぁ…しょうがないわね…」
「ふふ、聞いてくれるかい?」
「勿体ぶらないでとっとと言え!」
「君はまるで女王様だね?自分が世界の中心にでもいると思ってるのかい?…ホント…笑えるね」
「はっ…はあ!?」
「光沢は君に随分ご執心だったけどこの僕…闇沢は君に一切の好感を持てそうにないよ?」
「上等じゃない?私もあんたと仲良くなんて頼まれてもごめんだわ!」
光沢は空音に強く執着していた。
なのに闇沢は空音に執着するどころか嫌ってすらいる?
なら…
「君は光沢が関心を持っていたモノに興味が無い?」
「ふふ…正解!流石は鳴海君だ…、でもさもう一つ付け加えるなら光沢が嫌っていたモノに対して僕は好意を抱いてるよ」
「それって……うやっ!?」
「ちょっ!圭?」
僕は急いで空音の側による。
なんか怖気が走った。
「アハハハ、大丈夫だよ、別にそう言う趣向はないからさ!安心してよ?」
「………一応……信じるよ…」
「さて…ここからは本題だ…」
光沢…いや、闇沢の目つきが変わった。
どうやら彼の本題はここからみたいだ。
いったい彼は何を言い出すのか?




