第56話 雪坂寧音の独白
私の名前は雪坂寧音。
今年から高3になる受験生だ。
目下の目標は家に来て私の勉強を見てくれている先生が通う大学に合格して先生…先輩に会って一緒にキャンパスライフを満喫する事だ。
先輩はすごい人だ。
私に生きる楽しさを教えてくれた恩師みたいな人だ。
私は基本的に自分が嫌いだ。
地味で根暗な自分が大嫌いだ。
でも先輩はそんな私を変えてくれた。
変わる切っ掛けを私にくれた。
今の私は前の自分とは違う…全然違う…今なら私は私を好きになれる。
そんな開放的な気持ちを持てる位に前向きになれたのは先輩のおかけだ。
でも私が今の私になるのに捨てなくちゃならないものがあった。
私の幼馴染。
大事な…いや大事だった2個後輩の男の子。
鳴海圭君。
私は彼に依存していた。
今にして思うと私は私の卑屈な部分を唯一肯定してくれる彼に依存していた。
同時に彼もまた卑屈な自分を私に肯定してもらいたがっていたわ。
だからお互いが互いに卑屈な自分同士を見せ合って傷を舐め合って慰め合って依存していた。
ソレが駄目だと気付かせてくれたのが先輩だった。
外に目を向けろ。
君なら前を向ける。
そう言って彼は私に前を見る事の大切さを教えてくれたわ。
でも圭君はきっとまた私に依存してくる。
前を見る私の足に縋り付いて来る。
僕は前なんか向けない!
だから1人にしないで、行かないで!と。
圭君の先輩として…歳上のお姉さんとして…彼が頼ってくれる幼馴染のお姉さんとして私は圭君を突き放す義務があるわ。
だから私は心を鬼にして彼を突き放した。
生半可な方法ではきっと彼は変われない。
だから私は彼の私への気持ちを断ち切る事にしたわ。
方法は多少は残酷だったかも知れない。
それでも…それでも私は圭君の幼馴染のお姉さんとして彼が自立する為の後押しをする決断をしないとならないっておもったのよ。
それに彼の中の未熟な恋心を終わらせる必要もあったわ。
私への依存心を恋心と履き違えた彼の気持ちを初期化するためにはああすあるしか無かった。
いつか謝りたいとは思う。
でもそれも叶わないわ。
あの妹がいる限り…。
本当に目障り…。
恵まれた…圧倒的に恵まれた美貌を持って生まれて来た目の上のたん瘤。
見た目だけじゃない…頭の良さも運動神経も何もかも私なんかより圧倒的に優れた天才。
あの子は何でもかんでももっている。
親も天才のあの娘を贔屓して私はいつも蚊帳の外。
憎い…憎かった…でも私は知っている!!
あの子は…圭君の事が好き。
いつもいつも圭君の事を見てる。
圭君といつも一緒にいる私をあの子は羨ましそうに見てたのを私は知っている。
だから見せ付けてやった!
彼が私に甘えて来る所を見せ付けてやったんだ!!
凄い快感だった!
心がスッとしてとても晴れやかな気分になれたものだ。
私が圭君を切り捨てた後は目の色を変えて圭君にすり寄ってる。
本当に…滑稽だわ。
人のお下がりにあんなに必死になって。
今は前程あの子を怖く思わなくなった。
そうなれた…その筈だったのに…。




