第45話 光の王子様
クソクソクソ!!
ふざけやがって!!
あの根暗八方美人の二重人格野郎が!
光沢大治は苛立っていた。
中学を卒業し、ようやくあの陰キャモドキとおさらば出来たと思っていたのに何の因果かまたアイツと同じ学校…しかも同じクラスなんてツイてないどころの話ではない。
マジで最悪だ…。
空音を奪えない所か俺の取り巻きだった女子2人がアイツに絆されてこの俺を無視しやがる。
この俺が女をあの陰キャにうばわれたんだ…!
この俺があんな陰キャに…クソがっ!!
ちっとも分からない…あんな奴より俺の方が全てに置いて勝っているのに…何故女共はこぞって俺よりアイツを選ぶんだ!
マジで意味不明だ。
とか言ってるが俺は馬鹿じゃない。
本当は俺だって気付いてる。
本当はわかってるんだ…。
アイツは見掛け通りの人間じゃない。
ケンカが強いのはもう疑う余地もないがアイツの恐ろしさはもっと別の所にある。
まるで魔法でも使ってるんじゃないかってくらいあっさりと俺に絆されてた女がアイツに靡いていった…ガチであっさりと。
あんなの普通じゃない…。
睡眠とか洗脳とかそのくらいにヤバい…。
アレを見ると関わらないでいるのが正解なんてわかりきってる…だから高校からは関わらないでいようって決めていた。
なのに…何の因果かまた同じ学校だ…。
くそったれな神様の嫌がらせとしか思えない。
しかもアイツは中学の頃よりイキイキとしてやがる。
俺の女になるはずだった空音を自分のモノにしてヘラヘラと笑ってやがる…!
オマケに俺のハーレム要因までうばって…。
許せねぇ!
だから立場ってモンを分からせてやらないといけない…!
でもアイツにちょくで攻撃しては駄目だ…何されるか分かったもんじゃない!
だから間接的に…!
アイツと仲良くしてるダチ連中から削り落として行こうと俺は考えた。
まずはアイツと似たり寄ったりのチビ陰キャ。
田辺とか言う雑魚から潰そうと思い、様子を見てると奴が女に告白してる現場に居合わせる事が出来たんだ、これは使える!
直ぐにそう思ったね。
女を寝取って底辺の陰キャの分際で一丁前に恋人なんて作ろうとしたことを後悔させて叩き潰してやる!!
鳴海を直接じゃなくアイツの周りから潰して鳴海を孤立させてやる!!
そう思ってたのに寄りにも寄って鳴海にバレちまった!
まぁいいさ!
バレた所でどうしょうもない!
むしろ鳴海は俺を怒らせた事でお友達が不幸になるんだ!
それをまざまざと見せつけてやる!!
俺にケンカを売った事を後悔させて潰してやるんだ!!
光沢大治。
頭も平均以上に良く運動も出来る。
男性アイドル顔負けのルックスの持ち主で何もしなくとも女は向こうから勝手に来る。
何処かの誰かはそんな彼の名前をモジッて光の王子様と呼んだ事もあったくらいだ。
つまりは模範的なイケメン。
しかしその性格は捻くれている。
彼にとって褒められたり好かれ恋焦がれられる事は特別な事ではない。
ちやほやされるのが彼にとってのあたりまえ。
人から好かれるのは彼にとって当然の権利なのだ。そしてそんな当たり前の物すら満足に得られない愚かで不出来な奴等がいる。
他者から必要とされない、何も得られない者達は彼にとって見下しても構わない人間未満の動物。
見下されて当然。
人間未満の出来損ない共を社会の常識なんてクソなルールに沿って人として扱ってやっているんだ。
むしろ感謝して欲しいくらいだ。
だからそんな奴等相手なら基本的に何をしても構わないし良心の呵責に苛まれる必要も無い。
しかしそんな彼の常識を揺るがす驚異が現れた。
驚異の名は鳴海圭。
誰からも無償の愛を与えられる優秀な自分の上を行く完全な上位互換の存在。
何度も潰そうとした。
他者から無償の愛を与えられる絶対的な存在は俺の筈!
お前じゃない!
そう思い何度も鳴海圭を潰そうと行動した。
しかしその結果は常に敗走だった。
そして…今度も…。
次の日の学校。
気怠く楽しくも無い学校で代わり映えしない毎日を送る。
自分が属するいつもの教室で鳴海圭の友人である田辺葉は性懲りも無く自身の彼女…彼女だと思い込んでいる女、真野奏にしつこく話し掛けていた。
真野奏は心底つまらなそう、いや不快そうにしている。
まったく飽きもせず良くやるものだ。
分からないものかね?
嫌われていると言うことが?
彼女と言う初めて出来た存在に依存したいのだろうがそんな物は相手の合意があって初めて成立する物だ。
まったく…見ていて余りの滑稽さに怒りを通り越して同情しそうになる…こんな茶番はさっさと終わらせてやるのも優しさ?だと俺は思うね。
「それでね…この映画が今話題なんだって…だからその…よかったら…」
「いい…結構よ、興味ないから」
「あぅ…そ…そう…」
「……、」
「……。」
田辺は真野に拒絶された後もしつこく彼女の席の隣に立つ。
そして何か思いついたのかまた口を開いた。
「ね…ねえ!真野さんの好きな物を教えてよ!ぼ…僕…それに合わせるからさ!」
「…………はぁ…」
「え…?」
「貴方ねえ?…いい加減ウザい」
「へ…?」
「聞こえなかった?ウザいって言ったの」
「あ…うん…」
「あ〜あ…人の目もあるからこんなところで言う気は無かったのに…もう…サイアク…」
「そ…そんな…」
「大体貴方いつも他人の受け売りばっかりで自分が無いじゃない!?流行りらしいよ〜とか今人気らしいよ〜とか私はそんな世俗的な物に興味無いの分からないの?かと言って自分をアピールしてくる事も無いし……はぁ…ほんっと…退屈な男よね貴方」
「あ…あぁあ…」
「貴方と比べたら彼は段違いよね…」
「え…?」
「………、」
「ちょっとまってよ…!彼って…誰だよ?」
「貴方には関係ない…」
「関係ない…?そんな訳無いでしょ?だって君は僕の…」
「はぁ…めんど…じゃ別れよ?」
「え…?…そんなの!そんなのって」
「いい加減にしろよ!」
「へ?」
俺は2人の間に割り込んだ、まるでヒロインの窮地に颯爽と現れたヒーローの様に。
田辺はまさかの人物の登場に面食らっている。
はは!ザマァないな!
「君の一方的な好意の擦り付けに彼女はずっと迷惑してたんだよ!」
「そ…そんな…?」
「光沢君…」
真野はほっとした顔で光沢を見る。
心なしかその目は熱を含んでる様に田辺には見えた。
「もう彼女に関わるのはよしてくれないか?彼女が迷惑がってるって事…いい加減君は理解した方がいいよ。」
「あ……うぅ…」
田辺は結局そのまま何も言わず自分の席に戻るしか無く教室全体の空気は絶対零度レベルに冷え込む。
鳴海も雪坂も相田も阿久利さえも誰もそこにいながら声を発する事が出来ない。
この瞬間…光沢の勝利が確定した。
光沢は内心で勝利の喜びに酔いしれていた。
その後訪れる絶望の事等知らずに…。




