第44話 接触
「……あれは…真野さんと…光沢?」
校舎裏の滅多に人が近づかない場所で2人の男女がいた。
まるで隠れる様に…。
(何故あの2人が…?)
咄嗟に隠れた僕はゆっくりと…そしてそっと2人に近づく。
後もう少しという所で
【それ以上は近づくな】
と言う声が聞こえた。
この声は耳から拾われた声ではない…頭の中に…心の中に直接響いた声…アニメや漫画なんかでよく見るテレパシーみたいので直接頭に響く声…そんな奇妙な感覚を直接受ける。
考える余地も無い。
この声は…黒圭の物だ…。
(僕と話しが出来るの…?)
と脳内で呼びかけるも反応はない…かわりに頭の中にふわっとしたイメージが湧いて出てくる。
これ以上近づくと2人に感づかれて見つかってしまう自分のイメージだ。
(見つかるからこれ以上近づくなって事…?)
多分そういう事だろう…。
僕はギリギリの距離をキープし耳に意識を集中した。
微かにだけど2人の話し声が聞こえる…。
「ごめんなさい…また愚痴を聞いてもらって」
「構わないさ、困った時は助け合わないと」
優しい声色で光沢は真野さんに言う。
助け合う?
なんの事だ?
「田辺君といると最近すごくイライラして…どうして私がこんな目にあわないといけないんだって思うと…大声を出して怒鳴り付けそうになるの…もう限界よ…光沢君がいないと私…発狂して気が狂っちゃいそうだわ…」
「無理も無いよ…君と彼じゃ考え方や価値観が違うんだから、でも無理して相手と合わせても君が辛いだけだから苦しかったらいつでも僕に頼って」
「ごめんなさいね…貴方をこんな事に付き合わせちゃって」
「気にしないで、…むしろ僕の方こそごめんね?」
「え?どうして貴方が謝るの?」
「僕にもっと力があれば…無力な自分に嫌気が刺すよ」
「優しいんだね…私…貴方の事を誤解してたかもしれない…」
は?
何だよこれ…?
ちょっと待てよ…これって…
真野さんは光沢に田辺君の事を愚痴ってるのか?
……何故?
田辺君は真摯に真野さんに向き合ってるのに?
それを彼女はイライラする?大声を出して怒鳴り付けそうになるって…そう言ってるのか?
何だよそれ…巫山戯るなよ…。
話しを無視してスマホをイジったり本を読んで田辺君を雑に扱ってそれであの言い草?
そんなの…そんなのあんまりじゃないか!
頭に過去の光景がフラッシュバックする。
僕を見てケラケラ笑う2人の男女。
幼い頃から仲良くしていた憧れの女性。
信じていたはずの女性のあられもない姿。
見知らぬ男と絡み合いだらしなく笑う品性の掛けた姿。
それらが目の前の光景と重なりフラッシュバックする。
(ゆ…許せない…)
【許せないか?】
(当たり前だろ…こんなの…許せる訳がない…)
【へえ?ならどうする?】
(そんなの決まってる)
【へぇ…ならやるか】
(やるよ…)
【(俺《僕》達がアイツラに罰を与える)】
"俺"はいったんその場を後にした。
田辺を傷付けるつもりは無い、アイツは友達だしな…。
でもあの女と一緒にいてもアイツの為にはならんだろう。
少々酷かもしれないが失恋の辛さも味わってこそ一人前の男だ…そうだろ?兄弟?
真野との秘密の話し合いを終えたのかヘラヘラと笑い1人歩く光沢を見る。
コマを上手く調教出来てさぞかしご満悦の事なんだろう。
俺は奴に近づいた。
「よお王子様」
「!!…鳴海…」
「そんな怖い顔するなよ?イケメンが台無しだぞ?」
「……ふん…今日は裏の方の顔かい?良くもまぁコロコロとキャラを変えれるもんだね」
「まぁな」
「普段は気弱な僕君を演じて点数稼ぎかい?いい趣味してるよね…君?」
「はは、お前程じゃないさ、王子様」
「ちっ!なんの用かな?」
「別になんでもないさ、ただコマを上手く手懐ける手腕に脱帽してたんだ、是非参考にしたいもんだ」
「……良く言うよまったく……くはは!…そうだ!鳴海…!君が悪いんだからね!!」
「は?」
「君がいけないんだ!君が僕に楯突くからお友達が失恋に涙する羽目になるんだよ?全て君の責任だよ?それにさ?君が僕に仕出かした事に比べたらこんなのなんて事は無いんだからね…!それに僕は直接君に危害を加えた訳じゃない!君のせいで君のお友達が失恋するだけ!全て君の自業自得だよ?だから僕は何も悪くないからね!はははは!!」
「そうだな…これは全て俺の自業自得だな」
「…え…?…そっそうさ!君が悪いんだ!だから…」
「だからお前が全てを失ってもお前の自業自得だよな?」
「は…?え…?な…何言って…」
「くふふ…」
「待てよ!!何処にいく!!」
俺はそのまま立ち去る。
あとには怪訝な表情を浮かべる光沢がその場に1人ぽつんと残されるのみだった。




