第43話 略奪
田辺君と付き合い始めて大体1週間くらいが経過した。
季節は5月、だんだんと暖かい日も増え始める季節だけど未だに肌寒い日は続く。
田辺君はそんな肌寒さが残る季節にデートに行こうと外に私を誘う。
私は基本的に外出が嫌いだ。
暇な時間は部屋の中で小説を読みたいのだ。
それなのに付き合わされる私の身にもなって欲しい。
バックに鳴海圭と雪坂空音がいなければ断れたのに…。
本当にダルい。
なるべく寒くならない様に厚着して遅刻しない様にする。
遅刻すると後で何を言われるか分からないから…。
しかし彼の話は面白くない。
どこどこのカフェや洋服屋だとか雑誌の話や配信者の話。
どれも私の好みじゃない。
多分あの陽キャ連中からの入れ知恵なんだろう、自分の好みをまともに話す度胸も無く下手な入れ知恵で気を引こうと言う魂胆が透けて見える。
私は小説が好きだ、毎日見てるのにそれすら分からないのか?
一方的に話して満足ならそうさせておく、私も好きにさせてもらう。
そんな感じに私と彼の時間は惰性の中に溶けて行った。
そろそろ嫌気が指して来た…彼も結局はいつものフニャオス共と変わらなかった…まぁ期待なんてしてなかったけどね。
後はどうやって別れをきり出そうか…そんな事を考えていた時だった。
彼が私に近づいて来たのは…。
「酷い物だね」
「…?何か用?」
私に話し掛けて来たのはクラスメイトの光沢君だった。
現状私が所属するクラスは2つに別れている。
鳴海圭を中心とするグループと光沢君が中心となるグループだ。
鳴海君は特にグループを管理する気もまとめる気も無いらしいけど彼は違う。
リーダーとして色々やっているのを横目でよく見ていた。
そんな彼が私に何の用だろうか?
「いや大変そうだなと思ってさ?」
「貴方に何が分かるの?」
「わかるさ!君が苦労している事くらい」
「………」
「本当は彼と付き合いたい訳じゃない…それなのに鳴海が怖くて断れないんだろ?」
「貴方には関係ないじゃない?」
「あるさ!同じクラスメイトなんだ、辛い想いをしてるなら救ってあげたい!それじゃ駄目かい?」
やや困り顔だけど優しい微笑みを携えて彼はそんな事を私に言う…胡散臭い…誰がこんな奴の口車に乗るか!
こんな奴に私の気持ちが分かる訳が無いんだ!
「本当は外になんて出たく無いんだろ?君は休みの日とかは小説とかを落ち着いて落ち着いて過ごしたい…なのに彼に…彼等に自由を束縛されてる…見てられないよ」
「な…何故そんな事…」
「見てれば分かるよ?だって同じクラスメイトなんだし…」
分かるわけないのに…
私の気持ちなんてわかるわけないのに…。
駄目…期待しちゃう…だって全然違うもの…。
全然違う…彼と田辺君とは…全然違う…。
彼は…光沢君はクラスメイト…田辺君だってクラスメイトなのに…同じクラスメイトなのに…私への理解度が全然違う…。
どうして?
どうしてここまで違うの?
彼は……本当に…彼は私の事をみてくれているの…?
ただのクラスメイトってだけで……?
「君を守りたいんだ…駄目かな……?」
「え……、…だ…駄目じゃ無い…けど…」
「俺が支えになるよ…辛かったら…苦しかったら俺にぶつければ良い…君の力になりたいんだ…!」
「卑怯よ…そんな言い方…だって…」
「利用してくれて良い…そうしてくれると…俺も嬉しい。」
「本当に…卑怯よ…貴方は…そんなの…そんなの…!!」
こうして真野奏は光沢への警戒を解いた。
いつもの彼女なら光沢の様な耳心地の良い事を言ってくる男子に油断した態度は取らない、しかし常に鳴海圭を警戒し精神的に疲弊していた真野奏は誰かに頼りたかった。
田辺葉に頼れれば良かったのだが彼の取る選択は真野奏にとってことごとくが外れの選択肢だった。
それに反比例するかの様に次々と正解を引き当てる光沢大治の優しさに彼女は落ちてしまった。
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(……はははっ………。チョロいなぁ…本当に…)。
芋臭いインテリ女はこれだから御しやすい。
勉強熱心な奴程ストレスを抱えてる。
この女も同じタイプだと踏んでいたが…体の良い田辺葉のお陰でより良く攻略が出来た。
お前が悪いんだぜ?鳴海ぃ?
お前が俺の女を全部取るからこうなるんだ!
ならお前のお友達の女を取っても俺は何も悪く無いよなぁ!?
これはイーブンなんだから!
ヤラれたらやり返す!
子供でも分かる理屈だろ?
ははっ!!
お前のせいでお友達が不幸になって行くんだ!!
はははっ!!
俺をコケにした事!
とことん後悔させてやるよぉ!鳴海ぃ!!




