第42話 歪み
あれから田辺君は真野さんと付き合い出したけれどどうも上手くいってないようだ。
僕がそう感じるのは僕の勝手な主観で実際の所は分からない。
それでも田辺君を見てるとそう思わずにはいられない。
「あ…あの真野さん…」
「……」
「あの真野さん…その良かったらでいいんだけど」
「ねえ?」
「えっ!?何?真野さ…」
「私今読書の途中なの。見て分からない?」
「え…?あ…うん」
「なら分かるでしょ?人が本を読んでるなら普通しつこく声なんてかけないものよね?」
「ご…ごめん…」
と言う感じで取り付く暇がないのだ。
確かに人が読書している所に一方的に話し掛けるのはNGだろうけどそれが常にだったらどうだろうか?
いつも常に読書中。
常に話し掛けて来るなオーラ全開。
これでは安易に私に声をかけるなと言われているのと同義だ。
それでも田辺君は勇気を振り絞って話し掛けてみても結果はご覧の有様。
まさに取り付く暇もなし。
これに業を煮やしたのは2人の恋路をサポートした阿久利さんでひと言言ってやろうとしても田辺君がストップをかけるので結局は何も言えずじまいの現状かつづいていた。
それでも田辺君が苦労してデートの約束を取り付けてもそれをすっぽかさずにちゃんと来てくれてはいるようなのでおざなりにはされていない様なのだが…。
「ウチからすればあれはデートなのかって話!」
「具体的にどんなデートなの?」
阿久利さんはドンっ!と自身の弁当箱に入っているタコさんウインナーにフォークをぶっ刺し(行儀悪いなぁ…)愚痴をたれていた。
それをダルそうに(しかし真剣に)聞く空音。
「デートをぶっちするとか遅刻するとかは無いんだけどね?なんかテキトーってか義務感でやってるてゆーの?楽しんで無いんよね!見てて腹立つわ!」
実の所デート経験など欠片も無い田辺君がデートのプランなど捻り出せる訳も無くこれに助言をしていたのが阿久利さんだ。
今を生きる現役美少女ギャルJKホカホカの助言の元打ち立てられたデートプランは女子高生相手なら間違い無い必勝の内容のはずだ。
まさに特攻のプラン。
しかし真野さんはギリ外に出ても恥ずかしく無い程度のレベルの普段着でデートの待ち合わせ場所にやって来てデート最中も常にスマホに視線を落とす。
話を振ってもスマホを見ていて上の空。
時にはさっきの様に人がスマホ見てるんだから話し掛けるなと逆ギレする始末。
いっときはそのあんまりな態度に阿久利さんはデート中の2人の中に飛び込み、説教の1つでもおっ始めたい衝動にかられそれを止めようと必死だった相田君と朝咲さんは相当苦労したと話している。
「有り得んくない!?マジで!ウチ見てて腹立ってきてさ!!」
そう、阿久利さんと朝咲さんと相田君の3人は田辺君と真野さんの初のデートを影から監視していた訳だ。
僕と空音はそんなプライベートに茶々をいれる様な事は良くないと言ったが聞き入れては貰えず皆デートの裏観察を実行したのだ。
「まぁあれは確かに無いよね〜お姉さんならあんな態度絶対に取らないのに〜」
「だね、俺も彼女にあんな態度取られたら凹む…その点で葉は良く頑張ってるよマジで…」
「大丈夫だよぉ〜!お姉さん!雄二君に悲しい思いなんて絶対にさせないからぁ!!」
「え…?あっいや!そういう意味で言ったわけでは…」
隣でバカップルがいちゃついている。
熱々だ。
この温度差も中々に風邪を引きそうな勢いで凄い。
見ていてその差の歴然さにひと言に恋愛と言っても色々とあるんだなと改めさせられる。
しかしだ…。
元も子も無い事を言ってしまえばここまでして頑張る必要性があるのだろうかと考えしまう…。
そこでふと思考が過去をフラッシュバックする。
今の田辺君は昔の自分と同じだ…。
僕に無関心…興味を無くし、おざなりになり始めたあの時の寧音さんと真野さんの態度は似ている…。
そして寧音さんに無下に扱われていたあの時の僕に田辺君は似ている…似てしまっている…。
良くない…このままでは…。
しかし僕にどうすれば良いのか…別れたほうが良いよ?
そんな事言える訳がない。
どの面下げてそんな事を言う?
言える訳が無いのだ。
でもどうしたら…僕の主観ではこの恋愛は成立しない…それが分かるからこそどうにかしたい。
でも第三者でしかない僕に…僕達に何が出来る?
下手に口出しして田辺君とケンカなんてしたくない…どうしたら…。
そんな事を思い悩むある日の事、僕は1人で校舎内をウロウロ当てもなくぶらついていた。
特に何か目的があった訳じゃない。
ただ何となくぶらついていた。
すると意外な…と言うよりも変な組み合わせを見つけた。
その組み合わせを見て僕は違和感…いや、怖気の様な物を感じた。
「……あれは…真野さんと…光沢?」
校舎裏の滅多に人が近づかない場所で2人の男女がいた。
まるで隠れる様に…。




