第41話 真野奏の内面
真野奏は告白を受けていた。
相手は同クラスの男子、田辺葉という子。
大人しくて気弱そうな男子。
実の所を言うと真野奏はコレが初めてされた告白ではない。
小学生と中学生…それぞれ片手で数えられる程度の数だが告白された事ならある。
そして男子と付き合ってみた事も…。
男子と付き合ってみて思った事はつまらないなぁ…
そのひと言だった。
いづれも長続きする事はなく一ヶ月程度で別れていた。
価値観の違い、趣味趣向の違い。
生活習慣や考え方…それら全ての拗れで別れ。
そうして学んだ教訓は小説の中にある様な恋は現実には無いのだと思い知った。
所詮は創作の世界。
現実と虚構の違いは如何ともし難い。
しかし付き合いとは面倒な物で一度恋人という関係を構築すると別れるのは殊の外難しい。
色々と別れをきり出すと拗れるし荒れる。
結果それを学んだ真野奏は不用意に告白に了承を示さなくなった。
ならば何故今回告白を受けたのか?
答えは明白で2つの理由があるからだ。
別に田辺葉が好きだとか前から良いなと思っていたからではない。
よく知りもしない地味な男子を好きになる訳がない。
もしそんな田辺葉にとって都合の良い事があるならそれこそ創作の中だけの出来事だ。
現実にそんな甘い話があるわけがない。
彼の告白を受け入れた2つある理由の内の1つ。
それは…。
「その…僕…ずっと前から真野さんの事が好きでした!!だから付き合ってください!!」
「………」
「………」
彼の目を見る。
どうも嘘を付いてる訳ではないらしい。
一応カマをかけてみるか?
「これって告白ってやつ?」
「え…?あっ!はい!…うん!」
「……そう…私男子から告白されてるんだ…ねぇ?」
「…なっなに?」
「これって嘘告とかじゃないよね?」
「ちっ違うよぉ!」
違うらしい。
漫画や恋愛小説に毒され過ぎてるのかちょっと過敏になり過ぎてるかな?
まぁいいや、それよりもどうも彼は本気で私が好きで告白してるようだ。
ならあそこでコソコソと隠れてる連中はドッキリを言い渡す仕掛け人達ではないのだろう。
そう、隠れてる連中。
鳴海圭と雪坂空音。
この2人は私が所属するクラスでは…いやクラスを超えて有名人だ。
良くは知らないけど中学生の頃に鳴海圭は1人で多数の男子とケンカして圧倒したらしい。
あのモヤシな外見で意外にもケンカが滅茶苦茶強いらしいのだ。
他人に興味が無い私の耳にも入って来る程の有名人…敵に回したくは無い。
そして雪坂空音。
コイツは女の私から見ても見惚れてしまいそうになる程美人だ、それが鼻に付かないのは彼女のこの気ダルそうでダウナーな感じのおかげだろうか?
美人なのにそれを武器にする訳でも無い。
飾らない雰囲気と他人に気を使わない有りのままの自然体な感じが男女問わず人気。
そんな2人が幼馴染でオマケに付き合っているらしい。
嫌でも有名になる要素が詰め込まれている。
オマケにウチのクラスの主力美人ギャルの2人までいる。
コイツ等の拡散力を馬鹿にしてはならない。
田辺葉は鳴海圭と仲が良い。
コイツ等を敵に回して不要な反感をかったら私の高校生活は台無しになる。
そう考えた私は…。
「そう…分かった…付き合いましょ?これからは私達恋人だね」
「………やっ…やったぁ!!」
告白を受け入れる事にした。
そう、私が告白を受け入れた理由の1つはこんな理由だった訳だ。
下手に断って教室のなかで変な空気になるなんて真っ平ゴメンなのだ。
それにしてもだ…!
せっかく教室の中でなんの苦労もない無個性のボッチをエンジョイしてるのにこんな所で無駄な懸念を持ち込まないで欲しい物だ。
どうも昔から勘違いしたフニャオスを惹きつけてしまう所が私にはある…。
本当に迷惑で嫌な物だ。
それから私がこの田辺葉って男子の告白を受け入れたもう一つの理由。
それはいたって単純だ、彼が御しやすそうと思ったから…それだけだ。
適当に付き合ってあげて塩対応してたら向こうも勝手に飽きて…自然消滅…とかになったら良いなぁ〜。
この時の私はその程度に思っていた。




