第33話 仲裁
「おい!」
「へ?」
正直キャラじゃないとも思った。
俺は昔から付かず離れずの距離感を意識して生きてるし過度に目立つ事はしたくないと考えるタイプの人間だ。
クラス内でも取り敢えずの居場所作りはしてもそこで自分を誰かに売り込もうとか目立ちたいなんて欲求は無く、むしろ目立たない様に…人の目に留まらない様にいようと考えて生活している。
たからこんな人助けなんて俺のキャラじゃないし普通はしない。
誰がどんな目にあっていても基本は見て見ぬふり、知らんぷり…そうやって世の中を渡り歩いて来たんだ。
だから今回こんな面倒な事に首を突っ込んだのは多分アイツ…鳴海圭を見たからなんだと思う。
「え…?」
助けられた当人…朝咲花織は呆気に取られた顔をしている…そりゃそうだ…俺が一番自分に呆れてる。
いつもの俺なら絶対こんな事しないもんな…。
「ホント…なにやってんだろな…俺」
「何ぶつぶつ言ってんだろゴルァ!」
俺の独り言に男子は勢いよくがなりかけて来る。
完全に目がイッている。
場の勢いに飲まれて我を忘れてるっぽい?
「俺が!俺がぁ!!その女に分からせてやるんだから外野はすっこんでろやぁ!!」
「うわっ!?」
男子は勢い任せに殴りかかって来る。
俺はそれを既の所でかわし男子の足に自分の足を絡めて転ばせる。
盛大に転んだ男子の背中に体を乗せて体重をかけ、身動きを止める。
「てめっ!?どけ!離せ!」
「落ち着けよ!お前!」
「だまれ!どけ!どぇ!!」
「お前!!こんな所で暴力沙汰になんてしたらせっかくの高校生活がオジャンだぞ!?それでも良いのかよ!」
「ちぐしょお!!どけぇ!」
「ちょっ!?こいつ!!」
火事場の馬鹿力とでも言えば良いのか男子は俺を力任せに退かそうと凄い力で立ち上がろうとする。
しかしその場にいた友人数名が抑え込むのに力を貸してくれた。
これで何とかなりそうだ。
「お前ら!!」
「とりまコイツおさえとけ!!あと皆は先生呼んで来て!!」
「まっ…不味いよこれ!?」
「あのバカ!俺知らね!」
「か…帰ろ帰ろ!!」
形勢をマズイと見たのか光沢達はワラワラとその場を去っていった。
相田は空音や朝咲に帰る様に声を出しその朝咲に絡んできた男子生徒は駆けつけた先生達に連れられていった。
こうしてなんとかではあるが事態は一応の解決となった。
「はぁ…皆ありがと…」
「お前らしくねーじゃん、こんな事するなんて」
「なんかなぁ?」
「鳴海君の影響?」
「……う〜ん…かも?」
ホント自分でも解らない…。
こんな事するなんて…キャラじゃないのに。
鳴海に影響されてるのかもな…自分でも知らない内に…。
そして翌日の事だ。
例の男子は停学とか退学とかには流石になっておらず現状注意を受けて普通に登校している。
しかし周囲の目は危険人物を見る目に変わっておりその対応はまさに犯罪者に対するそれ。
綺羅びやかな高校生活の始まりを彩るには余りにも酷い事になっている。
まぁ…自業自得だし同情の余地も無しなんだが…。
「なんか昨日凄い事になってたらしいね…」
「お?まぁな」
「でも驚いたよ…雄二が人助けなんて…」
「俺が一番驚いてる…」
昨日の事をネタに話しをしている相手は幼馴染の男友達、田沢葉と中学時代の友人、鳴海圭。
幼馴染である田沢葉とは中学時代はクラスが違ったので校内での絡みは薄くクラスメイトだった鳴海と葉の関係値は薄い。
とはいえ中学は同じ所に通っていたのだからどっかで顔を合わせてるんじゃね?と思っていたのたがお互いに初対面だったらしく、まぁそんなもんかと一応の納得をする。
話を昨日の件に戻すが鳴海は昨日の事を雪坂さんから聞いたらしくこれからは絶対に一緒に帰ると念押しされたらしい。
「モテる男は憎いねえ!この〜」
「そんなんじゃ無いって!」
「あはは!」
と、3人で話していたら誰かが話しかけて来た。
「圭!ちょっといい?」
「え?空音?」
やって来たのは鳴海の方の幼馴染。
このクラス、1年2組のマドンナ的存在。
ダウナー系美少女で多くの男子の心を高校生活始まってまもなく射止めた罪作りな高嶺の花。
雪坂空音さんとその友人の3人組。
その3人の1人、朝咲花織さんは昨日俺が助けたと言う事もあって少し気まずい。
「あぁ、うん、ちょっと来て?」
「どうしたの…?」
鳴海はなにやら雪坂さんと話し込んでいた。
時折2人して俺の方を見てくる、なんだ?
と疑問に思っていたのもつかの間。
美少女3人は回れ右をするように元の場所に戻って行き鳴海は何と言うか少し興奮気味に俺にこんな事を言ってきたのだ。
「その…朝咲さん!大事な話があるんだって!だから放課後開けて置いて欲しいらしい!」
と。




