第30話 高校生
中学の卒業と春休み…そして受験を終えて僕…いや、僕達は新たな制服に身を包む。
2人してスマホに齧りつき合否を目を血走らせて見たのも最早懐かしい思い出になりつつある。
合格してるって自信はあってもやはり正規の結果発表はどうしても気になるし緊張するから仕方ないよね?
昔の高校受験の合否は校内の定時板に記載され、それをわざわざ見にいかなければならなかったらしいが今は便利な事に高校のWebサイトに記載される様になりその手間が省かれる様になったらしい。
便利な世の中はウェルカムだ。
そうして僕等は今年より高校生として志望校に電車通学する事となった。
「………。」
「………。」
2人で電車に揺られる。
何故か微妙な気まずさがあるせいで2人とも無言。
しかし圭は高校生の制服に身を包んだ空音に妙に緊張してしまい話し掛けるのに躊躇してしまう。
高校の制服は寧音のを何度か見ているのでどんなデザインか知っていたし見慣れてもいる。
しかし空音が着ていると謎の魅力がありどうしても緊張してしまうのだ。
何か…そう、例えるなら隣に芸能人がいる、そんな感覚に近いと思う。
まぁ僕は基本テレビなんて見ないしテレビの有名人よりネットで活躍するストリーマーの方が馴染み深いんだけど。
「はぁ…アンタねぇ…何か話しなさいよ」
スマホを眠そうに見ていた空音がそんな事を言う。
どうもこの空気に限界を感じていたのは彼女も同じらしい。
とはいえいきなり何か話せと言うのはハードルが高い。
これは何か面白い事…例えば一発芸とかをやって場を和ませろと言われるのと同じくらいの難易度の高さだ。
「そ…その…空音の制服姿ってなんか大人っぽくて緊張しちゃうから…」
「は…はぁ!?」
「寧音さんので見慣れてる筈なんだけど空音がその制服着てると新鮮って言うかなんていうか…」
「ふ…ふーん…」
何故か空音はそれから黙りこくってしまった。
お互い沈黙を守る気まずい電車登校はなおも継続されるらしい。
沈黙から僕を救ってくれるのはいつだって時間だ。
時間は何もしなくても経過してくれる。
しばらくして電車は目的の駅に停車し、僕等は下車する。
駅の名は〇〇高校前、つまりは駅から目と鼻の先が僕等が通う高校な訳だ。
合格発表の時は無かったけど1年生のクラス及び席順は校内の定時板にデカデカと張り出されている。
僕のクラスと席順は…
「あった…2組だ」
「アタシも2組みたいね」
「今年も同じだね?」
「そうね、まぁアタシ等クラスが別になった事って今まで無いんだけどね」
「だね…あっ…」
「何?」
「隣の席…相田君だ…」
「あっ!ホントだ、相田君ともまた同じクラスみたいね」
「相田君もこの高校を受験してたんだ…」
友達と言っても知らない事の方が多い。
当たり前の事だけどそれを痛感させられるな。
「さっ、行こっか」
「うん。」
僕達は共に所属する事になった新たなクラスへと向う。
こうして僕と空音は高校生として新しい毎日を送る事となる。
そこに何があるのかは誰にも解らない。
きっとそれはもう1人の僕にとっても変わらないだろう。
だからこそ希望と不安が入り混じる学園生活の始まりとなる。




