第29話 受験日
あれから月日は流れ僕等は受験日を迎えた。
受験先の高校に今、僕と空音は来ている。
今日と言う日を迎えるまでの日々は緊張と不安の連続でいっそ受験日なんて来なければ良いのにと内心ではボヤいていたのにいざその時が来てしまえば驚く程に冷静と言うか落ち着いていて空音と一緒にやった勉強の日々が懐かしくも思う。
整然と並ぶ見慣れない教室には受験にやって来た生徒達。
皆が教師らしい男の号令に従い答案用紙を一斉にめくる。
ズラりと書かれた問題の羅列。
緊張する事は無い。
これまでの勉強で養った成果をしっかりと出せば難しくは無い。
と言うか改めて空音は凄い。
彼女が大凡辺りを付けていた範囲は殆ど見事に的中していてスラスラと問題が解けたのも大きい。
まるで自分の頭が良くなったって勘違いしてしまいそうになったくらいだ。
複雑な思いはあるものの彼女の助けが無ければ今でも絶対に合格なんて出来てなかっただろうと確信出来てしまうのが本当に情けない…。
だって寧音さんを目標に勉強していた頃は寧音さんに教わっていて空音の助けなんて無かった。
しかしあのまま平和な日々が続いていたら僕は受験に落ちていたと思う。
本当に複雑な思いだ…。
受験テストも終わり僕と空音は互いに成果を話あっていた。
「どうだった?」
「……えっと…」
「まさかアンタアレだけ教えてあげたのに分からなかったなんて言わないよね?」
「その逆で…その…手応えがあった…自分でもビックリするくらいに」
「!!そっかっ!良かったじゃん!」
「うん!空音のおかげだよ!」
「まっ!今回は運が良かったわ、山が殆ど当たってたしあたしも致命的なヘマしてなかったら多分大丈夫だと思う。」
「なら4月からは僕等はここに通うんだよね」
「そうね。」
僕にとって初恋で片思いで失恋した女性が通う高校。
空音にとっては姉で家族で…その事実が多分不快な人が通う高校。
僕等はここに通う。
「まっ、まだどうなるかわかんないし楽観的になるのは良くないわね」
「だね。」
しかし僕等は殆ど確信してる。
4月から僕等はこの高校に通う事を。
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高校受験が終わったその日の夜。
圭は黙って夜空を見あげていた。
圭…いや、黒圭は黙って夜空に浮かぶ月をみつめている。
しかしそこて月を眺めて風流を気取る気は無い。
ただこれからの事を夢想して彼は笑みを深める。
受験勉強によって蓄積されていただろう疲れからか圭は目覚める気配すら見せず、ぐっすりと眠っている。
だから黒圭が表に発露する事は極めて容易だった。
彼は静かに思考する。
(寧音に仕掛けた時限爆弾は問題無く機能していたな…楽しみだ…その日が来るのが…。)
オリジナルの圭は甘ちゃんだ。
黒圭《俺》は圭の中にある本能が人格形成のベースになっている。
俺は圭の本能そのモノだ。
だから分かる。
アイツが嘘を付いている事が…。
復讐したくない?
復讐なんて虚しいだけ?
報復が怖いからしたくない?
はっ、嘘だな。
圭は復讐したがっている。
受験勉強を頑張ったのも寧音のいる高校に行く為だ。
勿論復讐の為に。
あのビッチクソ女を後悔の海に沈めて2度と這い上がれなくしてやる。
それが俺の…俺達の望みだ。
そうだろ、兄弟?
「くくく…」
圭以外の誰もいない寝室で黒圭はくくくと微笑を浮かべる。
思い描いた先の愉悦を夢想して。




