第19話 命名
その後僕達はもう1人の鳴海圭の呼び方を議論した。
その結果付いた名前が。
「よし!黒圭に決定ね!」
そう黒い魂胆がありそうな圭だから黒圭と言う安直過ぎる命名だった。
まぁ圭ブラックだとかアナザー圭だとか圭オルタなんて物も候補に出したけど今にしてみれば黒歴史に新たな1ページを綴るだけになってたしもう1人の僕、改め黒圭から恨みとか反感をかいそうだからこの安直な名前で良かったと思う。
当人が自分に付いた呼び名をどう思うかは神のみぞ知るって所だ。
キーンコーンカーンコーンと予鈴の音が聞こえたので僕等は揃って教室に向う。
正直教室に戻るのが怖い。
すこし緊張というか怖いのだ。
そりゃそうでしょ…?
少し前まて黒圭が暴れ回っていたんだ。
僕の知らない変化が教室の中に大量にありそうで今からお腹が痛い。
そうして空音と共に教室に戻ると思いの外いつも通りだった。
ただ肌感で伝わるのは皆僕と目を合わせたく無いのか不自然なまでに視線が逸らされる。
朝はあんなに突き刺さる様な視線を感じたのに今は不自然無程視線を感じなくなった。
いや、誰かに見られてる!?
そう思い視線の先を殆ど反射的に見てみると先程僕に苛烈なイジメをしていた不良の山中と目があった。
しかしそれは一瞬て直ぐに彼は視線を逸らした。
彼の額にはおびただしい程の汗ご滲んでいる。
(怯えてる…?)
カタカタと小刻みに震えてる…様に見える…?
あの不良的な側面もある山中が!?
本当に…黒圭は何を仕出かしたんだ…?
黒圭に主導権を握られている間…僕の意識は無い。
その間の記憶は無くて彼が何をしていたのか知る術が無い。
いや空音に聞けばわかるのだけど僕は空音が苦手だ…。
もう1人の自分の言動の確認を空音に聞かないといけないのは何気にハードルが高い…。
僕なんかよりあらゆる面で優れているのは当然として前を向いて他人にも物怖じせずに向き合える彼女が僕には眩しいんだ。
彼女を見ていると自分が矮小でちっぽけな人間だと嫌でも気付かされるから…だから僕は空音が苦手なんだ。
「よっ、おかえり」
「あ…うん。」
席に座ると隣の席の相田君が気さくに話しかけてくる。
「おっ?いつもの鳴海に戻ってるな」
「え?分かるの?」
「え?ああ、見りゃわかるだろ?」
「そ…そうなんだ。」
「しかしお前スゲーな!あんなケンカ強かったんだな!」
「うえ!?ケンカ!?」
「おお!あの山中を力だけで抑え込んでたし、ははっ!俺も山中には困らされる事が多いからスカッとしたわ!」
「そ…そっか…」
もう1人の僕、黒圭に頼りっぱなしなのが良くない事なのは何となく分かる。
それでもこうしてプラスの意見を聞くと嬉しい気分になるのは人として仕方ない事なのかも知れない。
それが後々僕自身の首を絞める結果になった切っ掛けになるとしても僕は今の安寧を享受したいとおもうのだった。




