第15話 マジで意味分かんねーよ
山中が目を覚ますとそこは保健室だった。
何故自分がこんな所にと疑問に思い、直ぐに思い出す。
あの屈辱的な出来事を。
光沢大治に付き合ってあの貧弱モヤシ男…鳴海を取り囲んでリンチしていた時の事だ。
そうリンチ…一方的に殴れる側、絶対的に有利な側は俺の…俺達の側だった筈だ。
なのに…なのに俺は…あんな貧弱雑魚野郎に力負けしたあげく膝をつかされた。
俺の渾身のパンチを容易く掴まれたどころか…腕が壊れるくらいの力で…握り潰す勢いで…なんであんな奴にあんな力が…?
その後間髪入れずに鳴海に蹴りかかるもその足を取られそのまま床に叩きつけられ腹を思いっ切り踏みつけられた。
あの後の記憶が曖昧だ。
多分あれから気を失ったんだろうか?
「クソ!クソクソクソが!ぁ!!!」
山中は体育会系の部活こそしていないがバスケやラグビー部からスカウトをよくされ、誘われたりスケットを頼まれてたりしている。
それは彼が運動神経がよく体格も良いからだ。
大抵の男子と腕相撲をしても勝ててしまうし光沢も彼の腕力や体力については高く評価している。
光沢が彼を側に置いてるのはそのガタイの良さからある程度周りの男子生徒に対して牽制になるからだ。
ようはボディガードとしての価値が山中にはあると言う事だ。
そんな大柄な山中が彼自身が評する様に小柄で細い、貧弱な見た目の鳴海圭に一方的にボコボコにされた事にたいする怒りと情けなさが山中のプライドを酷く刺激する。
「クソっ…なんで俺があんな奴に……」
なにより屈辱的なのはここに彼の想い人、佐藤がいない事だ。
佐藤とはそれなりの関係を構築して来た筈だ。
佐藤が光沢に振られた後も甲斐甲斐しくあの女のメンタルケアをやって来たしヘラってる時も面倒なのを我慢して構ってきた。
なのに俺がこんな事になってる時にあの女は側にすらいてくれないのかと身勝手な怒りが込み上げて来る。
その時キーンコーンカーンコーンと鐘の鳴る音が部屋に反響する。
勿論本物では無い。
学校と言う施設にはもはや当たり前に設置されている合成音だ。
時計を見ると既にお昼休みになった事を告げる物で彼は自分が学校での生活の半日もの時間、保健室のベッドの上にいた事に驚かされる。
その内心は授業を4限分スルー出来た喜びと鳴海にのされていた時間が予想より長い事への情けなさの両方で複雑な心境にさせられた。
そう言えば腹も減ってる。
彼はよろよろと教室に向かう。
そして彼は目の当たりにする。
当たり前の教室と言う空間は彼にとって異質な物になっていた。
「な…鳴海君…この後暇?」
「ちょっと佐藤っ!私が先に声かけたんだからアンタはどっかいってなさいよ!」
「はあ!?アンタこそ光沢君はいいの?そっちいきなさいよ!」
「アンタには関係ないでしょ!?それ言うならアンタこそ山中はどうしたのよ!」
カーストトップグループの美人女子の2人が貧弱雑魚野郎の鳴海圭の席の前できゃーきゃーと騒いでいた。
それは山中にはあたかも鳴海を取り合ってる…そんな風に見えた。
「ね?鳴海君は私がいいよね?」
「いやいやコイツ男いるし!今なら私フリーだよ?どっかな?ね?ね?」
「………はぁ。」
はあ!?
鳴海の野郎……!!
美人2人に囲まれてだらし無い顔するならまだしも溜め息!?
ふざけんな!フザケンナ!!巫山戯んな!!!
「おい鳴海!!!」
「?」
鳴海は心底どーでも良さそうに俺の方に向く。
実際とても興味が無さそうに。
それが山中のプライドを著しく刺激する。
「あぁ、目が覚めたんだね、良かったよ。でも困るなぁ〜あんな廊下のど真ん中でゲロ吐いて寝てるなんて?常識を疑うよ?」
「てっ!テメェ!!」
「ちょっと止めなよ!山中!」
「そ〜よ鳴海君に失礼でしょ?」
「は?…何言って」
まるで庇う様に佐藤と渡井のカーストトップ女子の2人は鳴海の前に立って俺を睨む。
「お前ら見てただろ!コイツがした事!?」
「はあ?何言ってんのアンタ?」
「いいから鳴海君に謝んなさいよアンタ」
「なっ…なにいってんだよ佐藤?」
「はあ!?鳴海君に負けた雑魚のくせに鳴海君に食って掛かるのダサいよアンタ!」
「は…?」
「私これから鳴海君の彼氏になるからアンタとは別れるわ!だからもう私に纏わりつかないでくれる?」
「は…あ?な…何言って…?」
頭の整理が追い付かない。
佐藤は…俺の彼女は何言ってるんだ…?
俺と別れる…?
しかも鳴海と付き合う?
意味が分かんねーよ?
何言ってんだよ…?
「だから何度も言ってるけど俺は君等と付き合う気とかないよ?」
「そっそんな〜」
「ははーんバーカバーカ!フラれてやんの!そ~だよねそーだよね〜!鳴海君へ私と付き合うんだよネ〜?」
「いや、君とも付き合う君無いよ?」
「ぅえ〜!!?」
なんだ…
マジでなんなんだよ?
これ?
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