3
次の日になって、夜に夜会があるらしい。
姉のヘレンは、背格好が自分と同じメイドにドレスを着せて、小物や髪型、化粧を吟味している。
本気だ。
妹のジュリアとマルタは、ドレス交換しながら楽しそうにしている。
「クララお姉様も行くわよね?」
妹たちにそう言われたら行きたくなるけど、昨日離婚が成立したばかりだし流石に今回はやめておく。
「ソフィーと一緒に留守番してるわ」
ソフィーはやっぱり部屋から出て来ないけど、昔から夜会にはほとんど行かないからそこはいつも通りだ。
姉妹たちが楽しくドレスを選んでいる所に、長距離転移魔法で元夫のコンラートがやって来る。
「は? 夜会? 本当に行くのか!? 昨日離婚が成立したばかりなのに何考えてるんだ、バカ女」
私は夜会には行かないけど、ドレスだけは着たかったから着替えてただけなんだけど。
説明も聞かずにコンラートは怒りだした。
ま、説明する気なんて最初からないけど。
私が今夜、新しい恋人を作るって勘違いしてればいいわ。
コンラート以外にもちゃんと好かれるし……。
コンラートにキスされてる。
ガッ。
「だから、離婚したばっかりだってば」
コンラートは私に頭突きされて鼻を手で抑える。
でも、今日は手を見ることなく、すぐに私を抱き上げている。
「な、何するの!?」
「お前の部屋は? 理由が聞きたいんだろう?」
それならと教えたけど、コンラートに運んでもらう必要あるの!?
部屋に着くまで、何度もキスされてる。
「離婚したって、言ってるでしょう!」
お姫様抱っこされて手が自由だから、頭突きじゃなくて、手で顔を殴ったりつねったりしたけど、コンラートは気にしてない。
「そのうち意義の申し立てするから、離婚の成立は無効だ」
「……今してないなら、今はもう成立したってだけでしょう!」
何で、すぐに異議を申し立てないのよ!?
ドサッ。
私の部屋に着くと、ベッドの上に半分投げられた。
「何すんのよ! バカ!」
私の声なんて無視して、コンラートは私に覆い被さってキスする。
「バカ! 理由の説明するって言ったでしょう!?」
「それは、後でも出来る」
「先に説明しなさいよ!」
「もう我慢できないから無理だ。結婚してから、三ヶ月もしてないんだから」
「それは、あなたが家に帰って来ないからでしょうが!」
説明を聞いてからだって言ってるのに!
「愛してる、クララ……」
なのに、囁かれるだけで、身体が溶けていくみたいで……。
「ほらすぐ俺にメロメロになる。俺のこと大好きだな、クララは」
離婚したのに、そんなわけあるか……。
言葉の代わりに、右手でコンラートを殴ろうとするけど、弱々しすぎてすぐにつかまる。
両手を押さえられたから、もう抵抗できない。
目をつぶってコンラートの囁きを聞いていた。
ベッドの上で、コンラートとギュッと抱き合ってるだけで幸せな気分になれた——。
あ……でも、説明は……?
リーンゴーン
辺境の地に夜の訪れを知らせる鐘が鳴った。
「あ、帰らないと」
コンラートが服を着てる。
「ちょっと待って説明するんじゃなかったの!?」
「明日だな」
「今、説明して帰ればいいでしょう!!」
何? また帰って、女の家を転々としてるんでしょう!?
なんなのよ? 私のこと、愛してるって言ったばっかりなのにっ!
「コンラートのバカ! もう来るな!!」
枕を投げたけど、コンラートには届かず床に落ちた。
「明日も来る」
扉から出て行ったコンラートの声だけが響いた。
——っ!
本当に何なの!?
こんな風に残されたら、寂しいって言うの!!
次は殴ったり、枕を投げるくらいじゃ済まないからっ!!
ドラゴンを倒した魔法を当ててやるっ!




