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小部屋の壁が開くと冷気が入り込んでくる。
ゴン
邪魔になってたコンラートに頭突きする。
のけぞった、コンラートの片腕だけを引っ張って、ソフィーとフレデリックがいる方に歩いていく。
「痛っ!?」
コンラートも腕に付いてくる。
私達がいた部屋の先には大きな空間になっていた。
その空間の、中央に氷の柱が出来ていて周りには氷の山があった。
凍えるような寒さの風が中心から吹いている。
氷に近づくたびに風が強くなって、容易に中心に行けないようになっている。
「マティアス様!?」
分厚い氷の先にマティアス様のような人影が見えた。
『——これで、呪いは永遠になる——!』
ドラゴンの言葉通りに、永遠にそこで氷漬けにされている
「どうするんだ? なんとか出来るのか?」
コンラートが言う。
「たぶん、ドラゴンは氷を操る種類のだったと思うんです。そのドラゴンが最期の力で強化した一番得意な呪いの形を解く為には神聖性が必要です……」
ソフィーが答える。
「氷を操るドラゴンだったか? 違ったらまだ呪いの力が弱くて済んでるんだろう?」
「いや、見つけた時には倒されてたから……種類までは……」
「倒した私が悪いって言いたいの?」
私は、コンラートとフレデリックを睨んだ。
「氷の中の閉じ込められている間はマティアス様は安全で、死ぬことはないんです……呪いを解ける人を探すのが、一番いいと思いますけど、ドラゴンの種類が分からないと解く為にどれくらいの神聖性が必要か分からないんです」
「神聖性か……高くなくてもあまりいないからな……」
「クララとソフィーが力を合わせたら解ける呪いもあるんだろう?」
「……この呪いなら、クララお姉様が炎の魔法で氷を溶かせば氷の中からはマティアス様を助け出せます。けど、呪いが解ける瞬間に凍って死んでしまうから、その瞬間に私が治癒魔法を掛けられれば助けられると思うんですけど……タイミングが難しくて……」
「失敗したら、マティアスが死ぬってことか……」
「……きっと、いつの日かマティアス様を助けられる時は来ると思います。でも……その時に、ヘレンお姉様がどうなっているのか……」
メイドに自分のドレスを着せて、自分が一番美しく見えるように研究して、マティアス様の代わりに次期辺境伯になってくれる男性を夜会で探してるヘレンお姉様……。
きっとすぐにでもマティアス様の代わりになれる男性を見つけてしまうわ……。
本当に好きなマティアス様の事は諦めて……。
「……でも、ヘレンお姉様は、自分のことより……確実にマティアス様に生きていて欲しいと思っているはずです……」
ソフィーが震える声で言う。
「でも、ヘレンお姉様にこの事を話して、『マティアス様の呪いを解かないで』って私たちに言わなきゃいけないのは辛すぎます……。だから、誰にも話さずにここまで来ました……」
ヘレンお姉様はマティアス様がドラゴンにやられて死んだと思っているんだ。
呪われているだけで生きてるって伝えて、本当に死んでしまうかもしれない方法と、確実に呪いは解けるけどいつになるか分からない方法を選ばせるのは酷だ。
「マティアスの気持ちはどうなるんだ。呪われても、ずっとヘレンの夢を見続けているんだ。別の男と結婚した後に呪いが解けたって嬉しいはずが無いだろう……!?」
マティアス様の夢に入って来たコンラートが熱弁するけど……『夢の中では、あんなに激しかった』って言ってたから、どう言う気持ちを想定してるのか。
「僕も、マティアスは今すぐにヘレンに会いたがってると思うよ……」
フレデリックが、マティアス様の泊まっていた領主館の部屋で見つけた、ヘレンお姉様への贈り物の髪飾りを手に取って見せる。
髪飾りと一緒にあったのはドレスの入っていると思われる箱で、マティアス様がどれだけヘレンお姉様と過ごせる時間を大事に思っていたのか、ジーンッと胸が熱くなった。
「同じ事だろっ!!」
「全然、違う」
私はコンラートを一蹴する。
「私は間違ってたわ。コンラートが浮気してたからってなんで離婚しなきゃ行けなかったの? みんながそうだから、離婚するのが当然みたいに思っていたけど、私は、私がしたいようにすれば良かったのよ!」
ソフィーを羨ましがって手をつないだり、他の女の子を羨ましがって離婚してみたり
本来の私じゃなかったわ。
「……それ、マティアスの話と関係あるのか?」
「マティアス様がヘレンお姉様にただ一緒にいる日々を求めたように、私もコンラートに求めていることはたった一つなのよ……」
コンラートが私を見つめて、呼吸を止めた。
「それって……っ!」
「私がコンラートに求めているのは、『絶対服従』、それだけよ」
コンラートの呼吸が更に止まる。
「——……っ! 全然、マティアスと同じじゃない! 俺の思ってるエロマティアスより酷い!!」
「うるさい! 服従しなさい!」
「嫌だ!!」
——とにかく、
ヘレンお姉様がマティアス様を思う気持ちは大事だけど、それが結果的には、ヘレンお姉様と生きたいマティアス様を一番傷付けることになってしまう。
ヘレンお姉様が別の男性と幸せになってる姿を見せるよりは、一か八か共に生きられる道に掛ける方がいい!
「ヘレンお姉様には呪いのことは言ってないんだから、マティアス様が本当に死んでも呪いを解くのに失敗したなんて言わなければいいのよ」
「……そうなんだけどね……」
「……」
フレデリックとソフィーが引き気味だけど。
「……でも、それが一番……いいのかもしれないね……」
フレデリックの言葉に?ソフィーも小さくうなずく。
「髪飾りを見せたら、少しはマティアスの気が引けると思う。コンラートに頼むよ」
フレデリックがコンラートに髪飾りを渡す。
「僕はフレデリックの夢の中を見ているよ。氷がじわじわ溶けて、呪いが解ける瞬間があるなら、その前に呪われて夢を見続けているマティアスが夢から覚める時が来ると思う。その時を、ソフィーに知らせたら、少しはタイミングが分かりと思う」
フレデリックに言われて、ソフィーがハッとしている。
「あ……すごいです! フレデリック様! それなら、もしかしたら、本当にタイミングが合うかもしれません……!」
ソフィーにキラキラした目で見つめられて、フレデリックは赤くなってる。
「さすが王太子よね」
私も感心していると、
「絶対に俺の方が役に立つから、見てろよ、クララ」
コンラートは、フレデリックに対抗心を燃やしているらしい。
「私に恥をかかせないでよ、コンラート」
「ご主人様気取りやめろ!」




