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離婚届を置いて出て行ったら、元夫が毎日訪ねてきます  作者: 唯崎りいち


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 私とフレデリックは、すぐにそのまま岩に背を向けて階段を降りて行く。


 扉の先は小さな部屋になっていた。


「反対の階段を降りても同じ部屋につながってるって事はなかったね」


「大丈夫かしら? あの二人……」


「コンラートはあれでも公爵なんだから、女性の扱いの教育は受けているよ」


「だったら、なんで——」


 『私にもちゃんとしないの?』って言ったら、それは私が普通の令嬢じゃないからって、言われるか思われるわね。


 ……王太子のフレデリックを蹴るなんて出来ないし……。


 少し離れただけなのに、足がもうコンラートを蹴りたがってるわ。



「うわぁっ!?」


 バタンッ


 俺は押し倒された。


 ムギュッっとソフィーの身体が全身に押し付けられてる。


「コンラート様……」


 何故、こんなことに!?




 クララとフレデリックと、俺とソフィーの間に大岩が落ちてきて、別れ別れになってしまった。


 しばらく俺もソフィーも呆然と大岩を見つめるしかなかった。


 大岩が落ちてくる仕掛けだったのか?


 ドラゴンが住処にしているうちに崩れやすくなってしまったのか?


 大昔の遺跡だから何があっても驚かないが……いや、驚くわ!



「……先を進もうか……。階段は降りられるか? ソフィー」


 俺は手を差し出す。


 遺跡の階段は手すりもないし角度が急だから慣れてないと危ない。


 でも、さっきまでフレデリックと手をつなげて喜んでいた様子だったのに、すぐに違う男と手を繋がなければいけないのは気の毒だな。


「あ、ありがとうございます、コンラート様」


 ソフィーは素直に俺の手を取った。


 ナヨナヨした様子は好みじゃないけど、素直なところがいいよな。


 クララの素直じゃないところが、可愛いし好きなんだけど……全く素直になってくれないし。


 いや、あれが素直な姿だって言われたらそうなのかもしれないけど!


 元々、『暴れ馬』だし!


 ソフィーが最後の階段を無事に降りてホッとして、下にあった扉を開ける。


 するとソフィーが後ろから飛びかかってきて、押し倒された。



「ソフィーっ!? なんで……」


 俺が慌てて、動かないソフィーを引き離す。


「す、すみません……!?」


 ソフィーも真っ赤になって慌ててる。


 あー動けなかっただけか!


 フレデリックとクララに殺されるところだった!


 殺されても死に戻りの秘宝があるから王城に戻るだけだけど、秘宝を使ったら罪で処刑されるから結局死ぬし!


 じゃあ持たせるな!!


『公爵と王太子が冒険中に亡くなったら困る ので、秘宝をお持ち下さい。使ったら処刑されると思えば慎重に行動なさるでしょう』


 って、大臣! 慎重にはなってるけど!




「怪我したのか、ソフィー!?」


 足がもつれて俺に倒れ込んで来たのか?


 でも階段は普通に降りてただろう?


 だから俺も心配ないと思って、扉の先の部屋が安全かどうかに集中してしまったんだ。


 扉の先が何もなくて良かった。


「今、転んで怪我してしまいましたけど、怪我は大丈夫です。それより、もっと大変なことが……」


 そう言うとソフィーは治癒魔法を自分と俺にかけた。


 俺にも少しだけ出来ていたすり傷が消えた。

 ソフィーが怪我をしていたとしても、すっかり消えているだろう。


「怪我は大丈夫なら、怪我以外でもっと大変なものってなんだ?」


「……」


 ソフィーは言いにくそうしている。


「……靴が壊れてしまって……」


「靴……」


 見るとソフィーの靴の踵が剥がれていた。


 歩きながら徐々に壊れていって、さっき階段を降りた瞬間に最後に靴と踵をつないでいた部分が切れたのか。


「不良品だったのか?」


「そうかもしれません……。最初からおかしいと思っていたけど、こういう靴は履き慣れていないから、こういうものなのかと思ってしまってました。普通の冒険者さんなら履いてすぐに違和感に気づいて交換するんだと思います……」


 ソフィーが恥じるように言うが、慣れてなければそう思うかもな。


 クララが最初に慣れたドレスで遺跡に入ったのは正解だった……?


 って、まさかなぁ。


 ドレスが水を吸って重くなったり大変だったんだ、俺が!



「その靴じゃ歩けないだろう。俺が抱えて行くから」


「え?」


 俺はソフィーを抱き上げた。


「お、重いですよ、私!」


「クララより軽い。特にドレスが水を吸ったクララよりは」


「……ドレスが水を……?」


 ソフィーが意味が分からないと言う顔をする。


 俺もよく分からない。


「君のお姉さんは無茶苦茶なんだ」


「……そうですね」


 これで話が通じてしまう。


「……でも、クララお姉様を止められるのは、マティアス様だけだと思っていました。それなのに、お姉様を射止めてしまったコンラート様もきっと無茶苦茶なんでしょうね」


 ソフィーが笑ってる。


「でも、今は元夫だ……」


「あ……」


 ソフィーが考えている。


「……クララお姉様は、迷っているみたいでした……あのお姉様が迷ってるだけで、すごい事なんですよ? コンラート様」


「迷ってる……?」


「いつも猪突猛進で、初恋の為に手段を選ばす『ドラゴンブレイカー』を習得したり……クララお姉様には迷いというものがないんです」


 俺は目から鱗が落ちた気がした。


「……そう言えば……」


「クララお姉様が迷っているだけでもう答えは出ているようなものだと思うんです。だから、コンラート様にはクララお姉様のことをゆっくり見守って欲しいです」


「……ああ」


 ソフィーと話して、スーッと俺の心が軽くなった。


 素直なクララを求めていたけど、素直じゃない事が俺がクララの特別で、クララの今の素直な気持ちなんだ。


 それから、俺とソフィーは楽しく話しながら先を進んだ。


 部屋を出ると、長い廊下があった。


 この先に、フレデリックとクララと合流する場所があると良いんだが。



 ——いや、良くなかった。


 俺がソフィーを抱えて、楽しく談笑しているところを見られたらどうなるか考えてなかった。


 廊下の先に、怒りの視線を俺に向けるフレデリックっとクララがいた。


 あ、死んだ——。


 俺にはゆっくり見守る時間はなかったようだ、ソフィー。


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