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離婚届を置いて出て行ったら、元夫が毎日訪ねてきます  作者: 唯崎りいち


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 翌日は、朝一番に防具屋に行って防具を整えた。


 私とソフィーでお揃いの服を選んだ。


 短いスカートの下に厚手のタイツと膝までのブーツを履いて、私はもこもこの腰までのケープで、ソフィーは丈の短いジャケットとマフラーを巻いている。


 領主館の部屋の前でコンラートとフレデリックが私たちを待っていた。


「……っ!」


 フレデリック様が声も上げられずに真っ赤になってる。


 ソフィーも赤くなって俯いてるけど、髪を頭の上でまとめているから、後れ毛の間から見えるうなじもほんのり赤く染まっているのが見える。


 ここから、今日中に手をつなげるようになるのかしら?


「なんだ、ちゃんとドレス以外も着れるじゃないか。妹と一緒にいるとまともになるな」


 コンラートが私のスカートをめくって言う。


 ドカッ


 コンラートを蹴る。


 私の上がりきった足と一つに編み込んだ髪が一直線になる。


「ぐはっ」


 いつもより吹っ飛ぶ。


 ふん、蹴る時に邪魔なスカートがないんだからキレが違うのよっ!


 って、私の方こそ絶対にコンラートと手をつないでなんて歩けないわ。



 お昼も領主館で食べてから、フレデリックに遺跡まで転移魔法で連れて行ってもらう。


「昨日、マティアスの夢に入った時に、マティアスが氷で閉ざされた部屋に居るのが見えたんだ。ドラゴンを倒した部屋のずっと奥の方にその部屋がある気配があったから、この間、ドラゴンの部屋の前に残した紋章を使って移動したいんだけど……コンラート、君は走って」


 フレデリックがコンラートに言う。


「やっぱりか……!?」


「ダンジョンの紋章をつけた先から入り口に戻って来た時に三人だったから、次に転移で移動できるのも三人までなんだ」


 フレデリックがサラッと魔法の制限を教えてくれる。


「あ……ごめんなさい! コンラート様っ。私がついてきたせいで……」


「いや、マティアス様を助けるんだから、ソフィーがいなきゃダメでしょう! むしろ、コンラートがいらないのよ。ここで待ってれば?」


「そんなのお前が心配だから、行くに決まってるだろーーーーぉぉ!」


 コンラートはすでに遺跡の中に走っていった。


「帰りは制限ないからー!」


 フレデリックも叫んでる。



 遺跡の中に一瞬で移動してコンラートを待つけど……この場所って。


 ドラゴンを倒す前にフレデリックとはぐれて、コンラートと私でフレデリックが来てくれるのを待っていた場所。


 ——それで、フレデリックがいつ来るか分からないからって、コンラートが私を抱いた場所だ。


 ここから間違ってた……っ!


 その前から間違ってた気もするけど、暇だからってやることじゃないっ!!


「……やっと、追いついた……」


 全力疾走で来たらしいコンラートがフラフラになっている。


 私は無言で蹴り飛ばした。



 ドラゴンのいた場所に足を踏み入れると少しひんやりした。


 マティアス様がいる氷に閉ざされた部屋が近い気がする。


「ドラゴンを倒した時は、クララが部屋の外から『ドラゴンブレイカー』をぶっ放して、この部屋に入らなかったからな……」


「よく考えたらドラゴンには可哀想なことをしたな……よく呪いのことを伝えてくれたよ……」


「何よ、私が何かやらかしたみたいな言い方は!」



 ギュッっとソフィーが私の腕を握った。


 コンラートとフレデリックは、ドラゴンのいた広い空間を突っ切って先を歩いてる。


 ソフィーはフレデリックと手をつなぎたいのに言い出せずにいる。


 私がコンラートと手をつなぎたいって言えば、フレデリックもソフィーと手をつなぐと思うけど……コンラートと手なんてつなぎたくないし。


 走って来たから絶対、手が汗で湿ってるし……! やだっ、絶対につなぎたくない!!



「ここから下に降りれるみたいだな」


 ドラゴンの部屋の先に、下に続く階段が見えたけど、途中の踊り場で左右に分かれてる。


「どっちに進む?」


 コンラートが全員に聞く。


「二手に分かれてた方がいいよね」


 フレデリックがここぞとばかりに答える。


「俺とフレデリックと、クララとソフィーだな」


 ドカッ


「なんでよ! 私とコンラートが一緒でしょうっ!?」


「だよな。クララは俺と一緒がいいんだよな!」


 コンラートが蹴られて喜んでる。


 これを言わせたかったわけね。


「やっぱり、コンラートが一人で行け!」


「ええ……」


 フレデリックとソフィーが驚いてる。


 コンラートを一人にするのも、私が邪魔になるのよね。


 別に、コンラートと一緒は嫌じゃないけど……。


「ソフィー、階段は危ないから僕と手をつないで降りよう」


 フレデリックが自然にソフィーに手を差し出してる。


「は、はい……!」


 ソフィーが嬉しそうに手を取ったのは、後姿からもよく分かった。


「ほら、クララも」


 コンラートも私に手を差し出すけど……。


「うわ」


 やっぱり湿ってた。


「なんで、そんなに嫌そうなんだよ」


「別に」


 でも、私が心配だからって走ってここまで来てくれた手だから——。


 手をつないで階段を降りるたびに、ドキドキと胸が高鳴って行く気がした。


 ——あの時。


 フレデリックとはぐれて、コンラートと二人だけで、やっぱりこんな風に胸がドキドキしていた気がする。


『私の事、好きなの?』


 コンラートに聞いた時に、ちゃんと答えてくれていたら、今ももっと素直になれた気がする。


 別に暇つぶしするのは嫌じゃなかったし。

 

 階段の踊り場ではフレデリックとソフィーが待っていた。


 さっきよりもひんやりと冷たい。


「どうする? 左右どっちも先に扉がある。左右対称だから同じ部屋につながってるかもしれないけど、どっちに行きたい?」


「どっちでも同じだろう。俺達は右に行くか」


 コンラートが右に行き、私が後に続いた時——っ!


 上から岩が落ちてくるのが見えた。


 けれど、足が動かず、見つめるだけだ。


「クララッ!!」


「ソフィー!!」


 コンラートとフレデリックが、私とソフィーの名前を叫ぶと突き飛ばした。


 ドガッ!!


 岩が階段の踊り場に落ちた。


 大きすぎる岩は踊り場の上をほぼ塞いで、左右の階段行き来を出来なくしてしまう


「クララッ!」


 コンラートが岩の反対側にいる私に叫ぶ。


「私は大丈夫よ」


「ソフィーッ!!」


 フレデリックも同じように叫ぶ。


「大丈夫です。ありがとうございます、フレデリック様」


 ソフィーの無事な声が聞けた。


「四人全員、怪我はないわね?」


「俺はない」


「僕もないよ」


 と、フレデリックが岩を見つめて言う。


 コンラートの様子はわからない。


 ソフィーも。


 ——岩が、私とフレデリック、ソフィーとコンラートを分けていた。


「……仕方ない、このまま行って合流出来る所を探そう」


「……そうだな」


 このまま進むしかなかった。


「クララお姉様……」


「大丈夫よ、ソフィー」


 別々の相手になったけど——。


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