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私たち四人は北の街にいた。
もう夜になっていたけど、フレデリックがどうしても必要だと言うので領主館に来たのだ。
「これは王太子殿下! ドラゴンを倒していただきありがとうございました!!」
夜だというのに熱烈に歓迎されて、また、この間のゲストルームに案内してもらえた。
空いてる部屋二つに、塞がってる部屋——マティアス様が使っていた部屋が一つ。
いまだにマティアス様がドラゴンに倒される直前に泊まった時のままだ。
「マティアスがヘレンに贈るつもりだった物がここに残されていると思うんだ」
「ヘレンお姉様に……? マティアス様はヘレンお姉様の婚約者だったけど、個人的にはそこまで親しくなかったと思うけど……」
「……! そうなのか!? それなのに夢の中では、あんなに激しかったのか!?」
コンラートが夢魔と一緒にマティアス様の夢の中に入った時の事を言ってる。
ソフィーが真っ赤になって私の腕に抱きついた。
「それは夢魔のせいじゃないの?」
「いや違う! あれは……」
ガッ
コンラートの事は蹴って黙らせた。
質問したのは私だけど、ソフィーの前でする話じゃない。
フレデリックと目が合って、同じ考えのようだった。
マティアス様は部屋で寝るだけだったようで、荷物がそのまま一箇所に置いてあった。
騎士のマティアス様が持っているには場違いな髪飾りが剥き出しで置いてあって、その下にはアイスブルーの繊細なリボンのかけられた箱があった。
箱は辺境では人気のあるドレス屋さんの物で、多分ドレス等の女性物の服が入っている。
髪飾りは繊細なデザインの物で夜会にピッタリだった。
マティアス様とヘレンお姉様は個人的には未だ距離があったけど、そろそろ結婚する時が近づいていた。
マティアス様はその前にヘレンお姉様との距離を縮めようとしていたのだと思う。
……ヘレンお姉様が喜ぶ様子が目に浮かぶ。
私はソフィーと順番に髪飾りを手に取って顔を見合わせた。
「その髪飾り一旦借りていいかな? マティアスの呪いを解く時に役に立つと思うんだ」
ソフィーがうなずいて、フレデリックの手に髪飾りを置く。
ただそれだけなのに、ソフィーもフレデリックも緊張しているのが伝わって、私の方がドキドキした。
「こっちの箱の方が役に立つと思うけどな」
コンラートがドレスの入った箱を指差す。
「ドレスなんて持って行ったら汚れちゃうでしょう。バカなの、コンラート?」
「は!? ドレスでドラゴン退治したのはお前だろう、クララ」
「着て汚すのと、プレゼントが汚れているのでは意味が全く違うわよ。やっぱりバカね、コンラート」
ソフィーがおずおずと口を挟む。
「クララお姉様、でも着替えを持って来ていないから、服は着替えたいです」
そういえば着替えがなかった。
「じゃあ、明日は防具屋に行く? 冒険用の下着はあるのかしら?」
「水着もあるんだからあるだろう」
「水着ですか……? 冒険に?」
コンラートの言葉にソフィーが驚いてる。
案外役に立つんだったけど。
私達は朝まで部屋で寝る事にした。
コンラートが私と同じ部屋にしようとしたから蹴っておいたけど、今度はフレデリックと目が合わない。
フレデリックもソフィーと同じ部屋が良かったみたいだ。
「じゃあ、また明日ね」
「おやすみなさい、フレデリック様、コンラート様」
ぺこりと頭を下げたソフィーにフレデリックだけじゃなく、コンラートもにっこりと満足そう。
何よ。
「クララお姉様はコンラート様と仲直りしないの? 今も喧嘩をしてるようには見えないけど……コンラート様は蹴られてるけど……」
「蹴られて喜んでるコンラートが変なだけよ」
ソフィーは黙っている。
「……『蹴るクララお姉様も変』って思ったんでしょう?」
ソフィーは、「そんな事は……」って否定しようとして、「はい……」って結局認めた。
「私も分かってるけど、最初がこうだったからしょうがないの。私もソフィーみたいに髪飾りを手渡すのも赤くなったりしてみたかったわ」
ソフィーはまた無言だった。
「『クララお姉様の性格的に絶対にそれは無理!』って思ったんでしょう?」
「……はい……」
ソフィーが素直に言う。
「ソフィーはフレデリック様が好きなのよね?」
「え!? ……それは」
ソフィーは真っ赤になってうなずいた。
同じ顔なのに、ソフィーは可愛いと思う。
「なんか、フレデリックがムカつくから邪魔しようかな。私の事『呪い』だとか、『暴れ馬』とか言ってたし」
「え! クララお姉様……!?」
ソフィーが慌ててる。
そんなに意地悪はしないけど……。
「……してみたかったなら、クララお姉様も一緒にお願いしませんか?」
ソフィーがますます真っ赤になって言う。
「お願い?」
「……はい。明日の遺跡では、私、クララお姉様の腕に捕まるんじゃなくて、フレデリック様と手をつないでみたいんです……っ!」
ソフィーがますます可愛く見える。
けど——、
「……え!? コンラートと私が手をつなぐって……!?」
私はものすごく嫌だなぁって顔になった。
◇
「……クララにも『おやすみなさい』って言って欲しかったな」
コンラートが恋する乙女のようにため息をつく。
気持ち悪っ!
夢魔が変身してたクララにも『大好き』『愛してる』とか言わせてたし、コンラートはクララの素直な言葉に飢えているんだろうな……。
じゃあ、怒らせないようにすればいいのに。
僕は、マティアスがヘレンの為に用意した髪飾りを見ていた。
ソフィーから手渡しされた時に、手が触れそうでドキドキした。
触れていたらどんな感じだったんだろう……。
「その髪飾りとセットの箱だけど、絶対に下着が入ってるよな」
コンラートが言う。
僕もそんな気がする。
好みの下着を着てもらう為に、他のドレスや髪飾りに紛れさせる高等テクニックだ。
「凍らされたマティアスには、クララやソフィーの前で、箱の中身と狙いをバラすぞって脅す方が、自力で『呪い』を解いて氷から出てきそうだけどな」
うーん……。
「そしたら、僕たちがその手を使えなくなるから、辞めておこう」




