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離婚届を置いて出て行ったら、元夫が毎日訪ねてきます  作者: 唯崎りいち


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 ドラゴンのいた遺跡は夕日に赤く染まっていた。


 私とソフィー、コンラートは、フレデリックの転移魔法で、ソフィーの部屋から遺跡にやってきた。


「ここでマティアス様の声が聞こえたの?」


 私は以前にソフィーが倒れた場所で聞いた。


「はい。でも、今は何も聞こえません……」


 私にも当然何も聞こえない。


 コンラートは耳に手を当てて聞こうとしてるけど、そもそも『声』そのものが聞こえて来たんじゃないんだから耳で聞こうとするのは意味がない。


「ドラゴンを倒した時は、ドラゴンは身体が大きいし、早めに自ら姿を現してくれたから、広い遺跡の中で早く見つけて退治出来たんだ……でも、人間のマティアスを見つけるのは大変かもしれないな。身体はドラゴンの十分の一くらいで、呪われて自ら動けないんだから……」


 フレデリックが冷静に言う。


「動けなくて意識あるのか……嫌だなそれ。……石化されてるとかか?」


 コンラートがマティアス様の状況を想像して眉をひそめた。


「意識があるというより夢を見ている状態だと思います。『助けて』と言う声も、必死に呼びかけていると言うより無意識に漏れ出した感じで、たぶん、マティアス様は夢を見ているだけで、辛いとは感じていないと思います」


 ソフィーが説明する。


「夢……。フレデリック、お前が契約した夢魔が一匹残っているだろう? そいつを使ってこの辺りにマティアスの夢がないのか探せないのか?」


「え……? ああ、そうか……夢魔は性別がなく、今は女性の夢に入る為に男型のインキュバスとして契約してるから、女型のサキュバスに変更すればいいのか。それに、ここで夢を見れば、近くの男はマティアスだけだから、サキュバスは確実にマティアスに移動する!」


 男二人の間で話がついたみたいだけど……。


「なんで、私がコンラートに膝枕しなきゃいけないのよ」


「俺が寝て夢魔の夢をみて、そこから夢魔をマティアスの夢に移動させるからだろう! ソフィーにしてもらうぞ」


 コンラートが言うとフレデリックが睨みつける。


「地面に寝れば枕はいらないでしょう? 夢の中では楽しそうなんだから」


 夢魔は、夢の主に性的な夢を強制的に見せて精気を奪うらしいけど、その夢はとても良いものらしい。


「クララの膝枕の方が俺には良いんだ」


 そう言われたら悪い気はしないけど……。


 私が膝枕をするとコンラートはすぐに寝てしまう。


 前日まで、夜な夜な女の家を渡り歩いて夢魔を退治していたんだ、寝不足だったんだろう。


「クララ……」


 寝言を言ってる。


「コンラート様がは本当にクララお姉様のことが大好きなんですね」


 ソフィーがにこりと笑う。



 あ、可愛い。


 ソフィーが、コンラートがクララを大好きだと言った笑顔が可愛い。


 僕だて、ソフィーが大好きだから、僕にも笑いかけて欲しい……。


 そんな事を言ってる場合じゃなく、僕の契約した夢魔をインキュバスからサキュバスに変えて、マティアスの夢を探さないといけない。


「クララ、ソフィー、 僕は今からコンラートの夢に入る為に消えるけど、気にしないで待ってて」


「ん? 夢にって直接入るものなの? 私も行きたいわ」


 コンラートを膝枕してるクララが言う。


「クララはコンラートを膝枕しててくれ、ちゃんとコンラートが寝ていてくれないとマティアスの夢まで行けないから」


 コンラートの夢でどんな性的なことが行われているのか……。


 寝言でクララの名前を呼んだからって、夢魔に見せられる夢がクララとのものだとも限らない。


 さすがにそれがバレたら復縁はないだろう。


 クララに膝枕されておいて良かったな、コンラート!



 コンラートの夢の中で、僕は夢魔に契約変更を伝える魔法を使う。


 夢魔はすぐにサキュバスになって現れて、コンラートの精気を吸っている。


「クララ……」


 やっぱり、相手はクララだったが、


「コンラート、大好き! 愛してるわ!」


 ここまで素直なのは、果たしてクララなのだろうか?


 いや、ソフィーとは全然違うが……目が離せなくなる。



 精気を吸い終えた夢魔が夢を移動する。


 近くに違う世界が見える。


「……良かった! すげー良かった!!」


 余韻に浸ってる夢の中のコンラートを引っ張って、マティアスの夢に僕たちも移動した。



 知らない男と知ってる顔が抱き合っていた。


 知ってる顔は同じ顔で二人いる。


「やっぱり双子だったのか……?」


「あれは、元々のマティアスの夢にいた人物と、夢魔が良い夢を見せて精気を吸い取る為に変身した方だろう」


 婚約者に一途な男だったらしい。


 俺とコンラートで夢の中の様子を調べた。


 マティアスのいる夢の背景は色々なものが混じっていかにも夢の中の世界のようだった。


 北の街の風景と、遺跡のドラゴンのいた場所の背景が混じりあっている。


 その間に氷で閉ざされた部屋が見える。


 ——氷……!


 マティアスは呪いで凍らされている!



 マティアスの精気を吸い取って夢魔は消えた。


 呪いを解く方がわかれば教えてくれるように契約したが、何も言わずに消えた。



 残されたのは俺とコンラートと、マティアスだが……マティアスはまだヘレンと抱き合ったままだ。


「早く戻って、君にアレを渡したい……」


 マティアスがヘレンに言っているようだ。


 心残りがあるなら、呪いを解く時に強力な味方になる。


 僕とコンラートは、情報を拾い集めて、夢を脱出した。


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