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「ソフィー! 話があるの、部屋の扉を開けて」
ソフィーの部屋の前で、私がいくら呼んでも返事がなかった。
「本当にいるのか……?」
コンラートが疑問を口にする。
「子供の頃から一緒のメイドがちゃんと毎日見ているからいるわよ。メイドにも何も話さないみたいだけど……」
「僕がクララとソフィーを間違えたせいで……」
フレデリックは沈んだ声で言うけど、だいぶ嬉しそう。
「ソフィーがフレデリックを好きとも限らないのよね。頼みたい事があっただけかも」
「え……」
フレデリックだけ喜んでるのはなんか嫌だし。
たぶん、ソフィーはフレデリックの名前を出せば喜んで出てくると思うけど……。
「ソフィー、フレデリック様が来ているのよ」
ガチャ
本当に扉が開いた。
ソフィーが私を見て、後にいたフレデリックを見た。
「……! クララお姉様、ありがとう……!」
ソフィーはそう言って私に抱きついた。
フレデリックはソフィーの様子に、自信を取り戻したみたいで……。
「ソフィー、フレデリックが好きだったの?」
「ち、違います!」
ソフィーに即否定されてフレデリックがショックを受けて、コンラートがフレデリックを揶揄ってる。
「違ったんだ」
「あ……違わないけど……」
ソフィーは下を向いてモジモジしてて……どっち!?
「そうじゃなくて、大事な話があるんです……マティアス様のことで……!」
「……!? マティアス様……」
私たちは、ソフィーの部屋に入れて貰う。
ベッドは綺麗に片付いて、代わりに机の上には難しそうな魔導書が何冊も置かれていて、ソフィーはずっと本を読んでいたようだった。
「風邪はもういいのソフィー?」
半年も前だけど、元々身体の弱いソフィーは風邪が長引くことがあった。
「はい、心配かけてごめんなさい、クララお姉様。私が外に出なかったのは、マティアス様を助ける方法が見つけられなかったからです……」
ソフィーがハッキリと『マティアス様を助ける方法』と言った。
「マティアス様は亡くなって……」
でも、ドラゴンに遺跡に連れ去られて、遺体は見つかっていない——。
「い、生きてるの!? マティアスが!?」
私だけじゃなく、フレデリックもコンラートも驚いていた。
ソフィーがうなずく。
「クララお姉様と遺跡に行った時に『助けて』と言う声が微かに聞こえて来たんです。すぐに風邪で倒れてしまって……言えなくて……」
「そうだったの……? 私には聞こえなかったけど……ソフィーの方が魔力は私より高いし、人との共鳴力は高いと思うけど」
「クララは共感力ないだろうな」
共鳴力だって!
「……マティアス様は、遺跡の奥にきっと閉じ込められているんです。でも、マティアス様以外に遺跡の奥まで安全に行ける人がいないから、危険に晒すわけにはいかなくて。クララお姉様とドラゴンを退治したフレデリック様なら、私を遺跡の奥まで連れて行ってくれると思って、宴の夜にお願いしに行ったら……怒らせてしまって……」
ソフィーがフレデリックの方を見る。
「あの時は、すみませんでした! フレデリック様! 図々しいお願いをしようとして……」
「ち、違う、誤解なんだ……!」
フレデリックがソフィーに弁明しようと必死になってる。
「あれは、君をクララと間違えたからで、君——ソフィーを嫌がってたんじゃないんだ!」
それじゃ私の事は嫌がってたみたいじゃない?
「……フレデリック様は、クララお姉様にプロポーズしていたでしょう……?」
ソフィーが困惑している。
「それがね、ソフィー——」
私はフレデリックとコンラートの盛大な勘違いについて説明した。
◇
「——え? 私とクララお姉様が一つの身体で呪われていたなんて……双子だと思われることもあまりないくらい似てないと思っていたのに……」
それは性格があまりに違うからだろうなぁ。
僕は、クララとソフィーが並んでいる所を見て、改めて思う。
顔はそっくりなのに表情も仕草も違って、双子と言う印象があまりない。
やっぱり『呪われた暴れ馬』と言う方がしっくりくる。
ソフィーの方が全然可愛……!
「やっぱり、クララだな」
コンラートがなんか言ってるけど、おかしな奴のことはほっとこう。
「けれど、ドラゴンが最期に残した言葉はマティアスの事だったのか……」
『——これで、呪いは永遠になる——!』
ドラゴン自身が死んで呪いが解けなくなったと言う事だ。
ソフィーに話すと、
「呪いを解くのは難しくなったとは思います……けど、呪いの種類によっては、私とクララお姉様の魔力を合わせたたら解けると思います……」
ソフィーは魔導書を見て言った。
きっと必死に呪いを解く方法を調べていたんだろう。
でも、遺跡に安全に連れて行ってくれる人がいないからって、マティアスが生きていると言い出せなかったんだ……。
「ソフィー、ごめん、僕が最初にちゃんと君の話を聞いていたら、こんなに悩ませる事もなかったのに……」
「いえ、私がフレデリック様がクララお姉様にプロポーズされたのを聞いて、悲しくて……もう一度、話に行くのを諦めてしまったからで……」
慌てて否定するソフィーの声がだんだん小さくなって、赤くなってる。
それってやっぱり、ソフィーは僕の事を——!
「なら、すぐにマティアスを助けに行くぞ!」
コンラートが急かして、いい感じだった僕とソフィーを邪魔する。
「クララに振られたからって」
「うるさいっ! 振られてない!」
——クララは、コンラートとの離婚届の無効化を断った。
『コンラートとは結婚までの早さが異常だったから。せっかく離婚できたんだからゆっくり考えたいの』
確かに、異常な早さだったから納得だ。
「クララが考え終わったら、離婚届は無かったことにしろよ」
「いや、『せっかく離婚できた』って喜んでるから、そのまま離婚だろ?」




